第十五話「冒険者育成学校」
今回ちょっと長めです。
楽しんで頂ければ幸いです。
「ほら、起きて。朝よ。風人」
「あ、おはよう。シルフィード」
うーん、眠い。今何時だろう。この世界時計が無いんだよなぁ。従って、何時、とかいう概念も無い。さて、起こされてしまったし。朝食食べよう。あっ、シルフィードはどうしよう。俺だけ食べるのはなぁ。
と、考えていると……
「さぁ、朝食を食べましょ? 一緒に食べられるようにお弁当作ってきたの」
そういうことらしい。
食事を終え、皿の返却が終わるとシルフィードが話しかけてきた。
「今日はどうするの?」
「そうだなぁ。まぁ、稼がないとね。冒険者ギルドに行くよ」
「分かったわ。それじゃあ、私準備してくるから部屋で待ってて。すぐ戻ってくるわ」
「了解。俺も準備して待っとくよ」
数十分後、俺達は冒険者ギルドに来ていた。どんな依頼があるかなぁ。と思っているとおじさんを見つけた。誰かと話しているようだ。
「そろそろ冒険者育成学校の入学試験の時期だよな」
「あぁ、もうそんな時期か」
「懐かしいなぁ。お前は落ちこぼれだったか」
「ちょ、暴露すんなよ」
冒険者育成学校……? 何のことだろう。シルフィードに聞いてみよう。
「シルフィード、冒険者育成学校って知ってる?」
「勿論よ。知らない人なんて居ないわよ。東の街にある、冒険者になりたい者が集まり、必要な知識や武術、世渡りの方法なんかを学ぶ場所でしょ?」
なるほど。そんな所があるのか。行ってみたいな……。
「シルフィードも入学したの?」
「いや、してないわ。元々、冒険者になる予定じゃ無かったからね」
「あっ、悪いこと聞いたか……?」
「気にしないで。冒険者になったからこそ風人に出会えたんだから」
「シルフィード……」
「おう、坊主。そういうのはギルドの外でやるもんだぜ」
!?
「おおぉ……ビックリした……。ガルドさん、驚かせないで下さいよ……」
「ありゃ? なんだ坊主。一皮剥けた感じじゃねぇか。……そうか。嬢ちゃんと上手くいったんだな?」
「あ……はい。昨日の夜に。」
「そうか。そいつはめでてぇな。おめでとう。坊主」
「それはそうと、ガルドさん。さっき話してた冒険者育成学校の事なんですけど」
「なんだ。聞いてたのか。そういや坊主。最初は何にも知らなそうだったがあの学校には通って無いのか?」
「はい。通ってないです」
「やっぱりそうか。嬢ちゃんも多分通ってないだろ。丁度いいから揃って入学してこい。あの学校の授業は為になるからな」
そうなのか……ガルドさんがこう言ってるし入学したいな……。シルフィードはどうなんだろ、と思いチラッと見てみる。目が合った。
「フフ、行きましょうよ。冒険者育成学校」
俺が思ってることはバレてるようだ。
「あぁ。行こう。シルフィード」
そうして俺とシルフィードは冒険者育成学校に入学することを決意した。入学金は一人二十万円だそうなので、二日間、依頼を掛け持ちしながらこなし、この日まで貯めていた分と合わせて二人分、四十万円を貯めることが出来た。ガルドさんも手伝ってくれたので思ったより早く終わった。
……そして、出発の日。
「ガルドさん! 本当にありがとうございました!」
シルフィードと二人で礼を言う。
「おう。気にすんな。それより、頑張れよ」
「はい!」
俺の気合いの入った返事を聞くと、おじさんは頷き、去っていった。あの人には本当に感謝してもしきれないな。学校を卒業したら、また会いに行こう。
「風人。馬車が出るわよ。早く乗って」
「あぁ。分かった。」
いい学校生活になると良いな。そんな事を思いながら、俺は馬車に乗ったのだった。
さぁ、ついに物語が動き出しました!
次回の更新は明日の夜です。




