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第十二話「格好」

 楽しんで頂ければ幸いです。

 ――ゆさゆさ、ゆさゆさ。

 

 体が揺すられてる。起こされてるんだろう。まぁ、充分に寝て目も覚めかけてるし起きるとしようかな。

 

 「おはようございます」

 

 「おっ、おはよう……昨日は……ありがとね……まだ、言ってなかったから」

 

 「気にしないで下さいと言ったじゃないですか。片腕なんて無くても大丈夫ですってば」

 

 そう言って、元気が無さそうな彼女の両頬を両手で摘んでやった。ほれほれ……ほれほれ!

 

 …………ん? 両手?

 

 無くなった筈の片腕を見る。……えっ

 

 「う、腕がああああ! 生えてるうううううううう!?」

 

 「きゃあっ、何よいきなり。宿屋に泊まれば回復するのは当たり前でしょ」

 

 え、えぇ……なんだよそれ……その機能はいくらゲームみたいな世界が舞台の物語でも無いもんだろ……? ん? あっ……

 

 スキル【テンプレ殺し】

 

 お前かあああああああああ!

 

 忘れた頃にやって来やがって! 昨日の夜の俺の大半の台詞を返せええええええ! ちくしょおおおおおお!

 

 ……

 

 …………

 

 「落ち着いた?」

 

 「あぁ、はい。取り乱してすみません」

 

 あんなの取り乱すに決まってるじゃないか……。

 

 「じゃあ、冒険者ギルドに行きましょ。今日も仕事するでしょ?」

 

 「はい。じゃあ、行きましょうか」

 

 ギルドの扉の前まで来ると、突然彼女が服を引っ張って来た。

 

 「ねぇ、あの……怒らないでね?」

 

 何の事か全く分からないが、彼女はそう言って扉の向こうへ消えた。考えても分からないので取り敢えず俺も入ることにする。

 

 キィ、パタン

 

 ……すると

 

 「来やがったぞオイ!」

 

 「ヒューッ! 男の鑑ィ!」

 

 ……なんだこれは。彼女に目配せして説明を求めてみる。あっ! 目を逸らしやがった! 一枚噛んでるな……。

 

 「おう、坊主。昨日は格好良かったじゃねぇか」

 

 おじさんだ。

 

 「ガルドさん。一体何ですかこれ?」

 

 「いや、昨日の坊主があんまり格好良かったもんでな。ついつい口が滑っちまった」

 

 「何も隠すことじゃ無ぇじゃねぇか! ガハハ!」

 

 違う冒険者が笑いながら話しかけて来た。隠すことじゃ無いって……いや恥ずかしくない? 改めて思い出してみる。

 

 庇う→噛まれる→気絶→起きたら魔物討伐済

 

 えっ、やだ……俺格好悪過ぎ……?

 

 「そんなに格好良いことしてないじゃないですか……。庇って気絶して、そしたら後はガルドさんがやってくれて……。俺必要無かったですよ……」

 

 すると彼女がこちらに来て

 

 「そんなこと言わないで。わ、私はとっても……凄く……嬉しかったんだから」

 

 顔を赤くしながらそう言う。何この可愛い生き物!?

 

 「ヒューッ! おアツいねぇ! 何だったか、「一緒に居てくれませんか」だったかな? ガハハハ! 格好良いぞー!」

 

 「誰がそれを……!?」 

 

 ――クイッ

 

 冒険者が指を指すその先に居たのは……

 

 「ご、ごめん、ね?」

 

 彼女だった。

 

 裏切ったなあああああああ!

 うーん、良いサブタイトルが思いつかなかったです。

 次回の更新は明日の夜です。

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