第十話「覚悟②」
楽しんで頂ければ幸いです。
「あれは……反魔法の……なんでこんな所でウルフガンドに囲まれているんだ! ……今はそんな場合じゃないか! 待ってろ!」
ガルドさんが駆け出し、1匹ずつウルフガンドに軽一撃を入れていく。注意を自分に向けるためのようだ。
ちなみにウルフガンドは名前から分かるように、狼型の魔物だ。牙と爪が鋭く、噛み付かれたりなんてしたらまずその部位は残らないだろう。……と図鑑に書いてあった。
「坊主! 嬢ちゃんを連れ出せ! 少なくとも俺が自由に戦えるくらいまで離れろ!」
ガルドさんの言葉で我に返った。彼女の元へ急いで寄り、手を引いて連れ出した。その間、魔物がこっちに来ないよう、ガルドさんが魔物の注意を引き付け、俺達が魔物の視界に入らないように位置どってくれた。
「ガルドさん! もう大丈夫です! 僕らに構わずやって下さい!」
「上出来だ坊主! 帰ったら飯を奢ってやるよ!」
そこからは一方的だった。ガルドさんの剣がどんどん魔物を只の肉と毛皮に変えていく。そして数分が経った後、動く魔物は居なくなった。
「ふぅ、こんなもんだな。そっちも大丈夫か!」
「あぁ、はい。ガルドさんのお陰で毛皮もありま――」
「坊主! 嬢ちゃんの手を引け!」
突然おじさんにそう言われ、彼女の手を引き、振り向くとそこには怒り狂ったウルフガンドが居た。親玉だろうか。彼女は手を引かれたお陰でなんとか噛み付かれるのを逃れたようだ。
「あ、ありが……」
「今はそんな場合じゃ無いだろ! くそ、どうすりゃいいんだ……」
そうこうしているうちにウルフガンドが再び噛み付こうと跳びかかってきた。くそ! くそ! 助けようとしても体が動かない! 怖い!
――坊主、覚悟がない奴は誰も守れない。
――お前は、そんな男になりたいか?
「……っ! なりたい訳が! 無いだろ!」
シルフィードを突き飛ばし、ウルフガンドは俺の腕に噛み付いた。
「……うぐっ……痛ってぇ……」
すると突然ウルフガンドは俺から離れた。何事かと思って腕を見ると、そこに俺の腕は無かった。激痛。そして視界を埋め尽くす紅。俺が意識を手放すのに時間は掛からなかった。
男前!
次回の更新は明日の夜です。




