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レペンス学園 (四月)

 ちょっとでも条件をライラと同じにしておかないとと言うことで、私は『ライラ・タルジェ』としてこの学園に入学した。


 公爵令息が『綺麗な名だ。まるで月夜の中の宝石だ』って言うシーンがあるのだ。

 すっごく綺麗な一枚絵でぜひ生で見てみたい。


 真っ白な桜の花びらが雪のように舞う中、私は学園の門をくぐり抜けた。


「ルルナ=レイス、ルルナ=レイス」


 ぶつぶつ呟きながら、きょときょと辺りを見回す。


 ルルナ・レイス。最初はモブの中にまぎれている前作ヒロインそっくりなキャラなんだけれど……。


1、相手が第二王子

2、二人以上好感度をマックスまでした後、振る。

3.攻略キャラの半数が無関心、嫌悪


の三つの条件をクリアした場合、唐突に裏ルートに突入し、金髪縦ロールの断罪イベントがかわいく思える凄惨な光景が待っているのである。


  ヒロインが男の子を攻略している間にルルナは協力者を集め、『ピースオブレペンス』のヒロインともども王族を皆殺しにするのだ。

 全滅エンド・謀反エンド・首ちょんぱエンド・ヒロイン闇落ちエンドとか言われる奴だ。


 前作ヒロイン(とそっくり)の彼女が国王の首を掲げた時の恍惚な笑顔に、一部のファンは「闇落ちカルナちゃん来た!?」と絶叫したという。(ちなみに『カルナ』は前作ヒロインの初期名)


 えー、どこの誰ですか。

 ぬるいゲームって言ったのは。


 ファンデスク『鮮血のレペンス』では、その裏ルートの謎が語られる仕様になっている……のだが、二年生どころか、一年生にも、三年生にもヒロインそっくりの女はいない。


「ルルナ=レイスがいない! あは」


 よし、とりあえずルートの安全性は確認した。


「これで、勝つる!」


 廊下で拳を握りしめた私を生徒達がじろじろと眺めていた。


「何に勝つのかな? 」

「ひっ!」


 そう横合いから急に声をかけてきたのは攻略対象の『ストロー君』……下の名前忘れた。


「あれ? 君、見ない顔だな。 もしかしたら転校生かなんか? 良かったら校舎を案内するよ。 まずは噴水に行く? それともカフェに行く?」


 人のことは言えないが、何しに学校に来ている。



 私はとりあえず、最初に声をかけてきたストロー君と仲良くなることにした。

 記憶の中では一番チャラくて、一番攻略しやすいキャラクターだったはずだ。

 振っても根に持たないタイプで後腐れがない。振った後でも好感度が上げやすい。

 首ちょんぱエンド回避のための調整役だ。別名調整君。


「濃い蜂蜜色の髪をした緑の目の美少女知らない? あ、髪は光の加減で茶色っぽく見えたりするかも」


 もしかしたら、養女になる先を変えているのかもしれない。ルルナの名をわざと出さずに身体的特徴だけ伝える。


「君が『美少女』って言うほどの美少女……ね。一度見たら覚えていないことないはずなんだけれど」


 そういうと彼はおもむろに私の手を取った。


「もちろん僕は君以上に美しい女性なんて知らないよ。僕だけのアメジスト」


 ぞわっ。


「あ、ありがとう」


 ゲームをプレイしているときならまだしも、現実にやられると背中に冷たいものが走る。


 優しく手を取ったまま彼は、


「で、その美しい美少女の特徴をもう少し詳しく」


 美が増えているよ。


「いえ、ちょっとした知り合いの娘でして、貴族の養女になったと小耳に挟み、もしかしてこちらの学園に通っているかと……」


「う~ん。やっぱり心当たり無いや」


 一応最終確認が取れた。


「ドリ……じゃなかったマリー・ライト公爵令嬢様はどなたともお付き合いされていませんの?」


 マリーの父は右・左の大臣のうち、現在は右大臣を務めている。


 一応、左の方が偉く最近は左大臣のことを『宰相』とか言っているが、二家の取り合いで、ころころ変わるのだ。


「宰相閣下のご子息と婚約中だよ」


 貴重な攻略対象を横取りしているんじゃないわよ! ドリル!


「仲は?」


「別に悪いって聞いたことは無い。 まあ、両家は大昔から笑顔で握手を交わしながら、後ろ手で拳を握りしめている仲だから、実際はどうかわからんが。」


 表面上はさほど大きな対立をしていない……と。


 ゲームでは前王が退位するまで『死霊王子死滅法』とか物騒な法案を使って敵対派閥を粛清していた方々とは思えないわ。


 『死霊王子死滅法』は前王の鶴の一声で作られた法で、平たく言うと貴族にも有効な魔女狩り法だ。


 まあ、さすがに五人貴族が殺されたところで現王が前王を幽閉したのだが、記録に残っていない被害者の中にはルルナの一族も含まれていた。


 もう一度言おう。どこが平和でぬるいゲームだ。


「公爵令息のことをもう少しくわしく」


 しまった。気分を害したのか彼は意地悪な笑みを浮かべた。


「……うーん。デートしてくれたら、教えてもいいよ」


 男にはやはり興味は無かったのか、ストロー君からは公爵令息のお話はろくに聞けなかった。



ストローク・グラス・・・男爵子息。暗緑色の髪。別名ストロー君 実家はガラス産業で一儲け。


ルルナ・レイス……前作ヒロインそっくり。一族を滅ぼされた恨みを晴らすため学園に潜入。

 条件が揃わないと本編に絡んでこない裏悪役令嬢。 蜂蜜色の髪にヘーゼルの瞳。


マリー=ライト(右)・・・公爵令嬢。通称ドリル。




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