61話 救出動画と事の顛末
【救出作戦】盗賊、一之瀬真也スレ3012【奴は大変なものを(ry】
142: 名無しの視聴者 : ID:8akdiebE2
ああ、ここであの動画に繋がるのか……
カティちゃんのこの泣き顔は見るの二度目でもくるものがあるな……
167: 名無しの視聴者 : ID:kanxntjwe
カティちゃんはいい子だなぁ(´;ω;`)ブワッ
200: 名無しの視聴者 : ID:kanxbrAJY
真也さん、これで救出失敗とか許されないぞ
217: 名無しの視聴者 : ID:keWQmadrT
本当に許されないのは三澄だがな
225: 名無しの視聴者 : ID:ka9Eksndt
ホント余計なことしてくれたよなアイツ
248: 名無しの視聴者 : ID:kanejrZna
しかもその尻拭いをするのは真也さんだし
256: 名無しの視聴者 : ID:lanroxbgt
お、作戦会議か。なんかわくわくしてきた
四人で協力するからここから先の動画は全員のを一つにまとめてるのか
285: 名無しの視聴者 : ID:kandnriZ1
あの盗賊、色々と手を回してるな
このやり口は完全にギナール大先生じゃないか
301: 名無しの視聴者 : ID:alqQPYhrt
敢えて領主の館で救出するだと!?
警備も厳重だろうし、難度高いんじゃねーの!?
大人しく道中の宿で救出した方がいいだろ……
334: 名無しの視聴者 : ID:ks34akrtu
何かやらかすんだろ
宿でも天馬騎士団がしっかり警備するだろうし、リーサを奪還してもかなり上手く出し抜かないとすぐに高機動力の追手が来ることは分かりきってる
その点、領主の屋敷なら小細工しやすいんじゃない?
367: 名無しの視聴者 : ID:kajdntBeE
領主の屋敷、あっさり潜入出来たな
そしてあのロリコン商人捕まってるwwww ザマァwwww
388: 名無しの視聴者 : ID:aDkro31Rf
うわっ……乗鞍が領主に悪魔の囁きを……
405: 名無しの視聴者 : ID:NMBHsktoe
仲間割れさせてその隙にリーサちゃん掻っ攫う気かwwwww
コイツら鬼だwwwww
435: 名無しの視聴者 : ID:Maksbriay
黒いな〜
でも肝心の男爵がチキンじゃねーか!
おいおい、さっきまでの偉そうな態度はどこいったんだよヘタレが!
469: 名無しの視聴者 : ID:UHKelsUar
モンスター操れるとか〈FANGコア〉めっちゃ重要アイテムじゃん、有用過ぎる
今はNPCが大多数を持ってるみたいだけど、後々絶対プレイヤーで取り合いになるな
実質的な所有者は一番多く持ってる一人だけみたいだし
503: 名無しの視聴者 : ID:lwjrnaUaw
そして何食わぬ顔でシャロットさんに接触する真也さんw
領主が大量のモンスターを使って悪事をたくらんでるとか、それ、お前が流した噂だろうがwww たくらんでるのもお前だしwwwww
537: 名無しの視聴者 : ID:lanfiw6F3
仲悪いなー、マディソンとシャロット
まあ、貴族としての生き方が正反対だからしかたないのか
573: 名無しの視聴者 : ID:lanandkry
なんか乗鞍さんが陰で動いてるよ……シャロットさんが男爵を潰そうとしてるって陰謀論を流してる……口の軽そうなメイド達に、又聞きのフリして……
というか男爵人望無さ過ぎてワロスw メイドが陰謀論を聞いて嬉しそうにしてるぞw
これは又聞き又聞きで広まり過ぎて元が辿れないパターンか?
600: 名無しの視聴者 : ID:tbkgidbcg
こういう噂流す奴、俺の職場にいる……元が辿れないと抗議のしようがないからストレスがヤバイ
なんか殺意が湧いてきた、乗鞍ぶん殴りたい
621: 名無しの視聴者 : ID:ipgnhkylu
乗鞍さんはお前とは関係ないだろ!?
八つ当たりかよwww
646: 名無しの視聴者 : ID:AlfPKIuj
シャロットさんが弱音を話してくれるとか……真也さん、順調に懐に入っていってるなあ……
671: 名無しの視聴者 : ID:kansndfti
シャロットさーん! 騙されちゃ駄目だ! ソイツは極悪人だ!! 頼むから信頼しないでくれ(泣)
逃げて! 今すぐ逃げて!!
689: 名無しの視聴者 : ID:awesdrlri
始まったかwww
モンスターの襲撃www 確実に真也さんの手引wwww
これは……戦闘音!? とかwww 白々しすぎて大草原不可避wwwwww
709: 名無しの視聴者 : ID:assewQKZG
衛兵ー!? 何やってんの!? 男爵の指示か!?
と思ったら中身は海堂でやんのwww
この作戦鬼畜過ぎだろwwwww
727: 名無しの視聴者 : ID:eifjybhlU
シャロットさんが真也さんのクサイ台詞に動揺した!?
お前マジやめろよシャロットさんまで毒牙にかけるつもりか!?
746: 名無しの視聴者 : ID:wpgktnyig
シャロットさんじゅうよんさいチョロイ
764: 名無しの視聴者 : ID:qosjfntes
じゅうよんさいだからね、仕方ないね
784: 名無しの視聴者 : ID:ZxssEsdWv
そりゃ確かに仕方ねーなwww
796: 名無しの視聴者 : ID:kKlnfnybp
お硬い性格でなおかつ恋愛結婚なんて殆どしないであろう貴族の子女、色恋の経験は少ないのかもな……
悪い男に騙されやすそう……なんか、悲しくなってきた……
808: 名無しの視聴者 : ID:kjdrWox6y
まあ、真也さんは事前に好感度稼いでたし、騙されても仕方ないという見方も……いや、やっぱチョロイわwww
821: 名無しの視聴者 : ID:eotjtbYTR
シャロットさん、力を貸してくれって頼んでるけど……ソイツが黒幕だよ!?
全ての元凶目の前にいますから!?
842: 名無しの視聴者 : ID:kaengbxvd
男爵がシャロットさんの陰謀説を信じるような情報をわざと衛兵に持ち帰らせてるwww
もうこれは収集つかねーぞwwww
868: 名無しの視聴者 : ID:ertyuihft
あーあーあー、お互いが相手の陰謀を確信しちゃってるよ……
894: 名無しの視聴者 : ID:todnxSdIO
そして真也さんに心からのお礼を言うシャロットさん……
ソイツが黒幕なのに……黒幕なのに……うぇうぇwwwなんか変な笑いが止まらないんだがwwwww
910: 名無しの視聴者 : ID:OkjerTYuw
なんか恩返ししてくれるってよwww
ありがてえwww 超ありがてえwwww
922: 名無しの視聴者 : ID:3aqiezH46
なんてヒデェ話だwwww
935: 名無しの視聴者 : ID:TYudrbHja
そしてこの黒い笑みである
真也さんまじパネェっすwwww
941: 名無しの視聴者 : ID:aserbdudg
囚われの少女を助けに行くヒーローの顔にはとても見えなくて草生えるwwwww
959: 名無しの視聴者 : ID:WosjdbryT
と思ったら、しっかりとキメるところはキメるんだな
誰だこのイケメンは?
966: 名無しの視聴者 : ID:awqIUYGrn
リーサちゃんは真也さんを巻き込みたくないんだな……
でも真也さんは、そんな厄介事込みでリーサちゃんを盗み出すってか? これは惚れるな
このスケコマシ、ぶん殴っていいですか?(真顔)
971: 名無しの視聴者 : ID:HGT3eK71Q
カティちゃんとの感動の再会か……おい、誰だ俺の近くで玉ねぎ切ってる奴?
978: 名無しの視聴者 : ID:kodjrkyub
イイハナシダナー
マディソン男爵は犠牲となったのだ……
まあ、ゲス領主なんてどうでもいいか
989: 名無しの視聴者 : ID:mnzbxvcku
あー……なるほど、追手はそうやって撹乱するのか……
やっぱり〈FANGコア〉の使い勝手最強だな
救出作戦を実行した日の翌日、早朝から真也達四人はホテルの貸会議室に集まり、皆で動画を編集し投稿していた。
掲示板の様子は、コメントやネットの書き込みを見ない方がいい瑠璃羽に気を使い、皆と解散した後、朝食を食べに食堂へ向かう途中で確認した。
「そういや、宝箱の動画はどうなったんだ?」
「ああ、あれはついさっき上げた。公開要請とかいう警告メールが来たから、そのメールの内容を公開して、仕方なくこの動画を公開したんだ、という体裁でな」
隣を歩いていた秀介の質問に、何という事はないといった表情で返す真也。
「それを上げたら色々とバレるだろ。アップして大丈夫なのか?」
「そのまま上げたらな。もちろん加工してある。俺が三澄達を尾行していたと分かる部分はカットして、ただ単に宝箱を置きに行っただけに見えるようにした。まあ、殆ど〈気配〉を使って張り付いてたから、傍から見れば俺が誰かをつけているとは分からない」
「……それで運営は納得するのか?」
「するしかないさ。公開義務がある動画は、ゲームの流れを把握する上で不可欠なシーン。俺が宝箱を置いて、三澄が取った。それ以外の事実は必要ないだろう?」
「えー……いや、三澄をハメる為に宝箱を置いた、って事実も流れを把握する為には必要なんじゃないか?」
「そんなつもりじゃあなかった」
「……は?」
「そう俺が主張したらどうする? 運営にそれを否定する手段は無い、何しろ俺の考えていることでしかないんだからな。俺は三澄の、他のプレイヤーに貢献するプレイをしろ、という言葉に感銘を受け、プレイヤーの誰かが有効活用するように宝箱を置いた。その際、計らずも、三澄達が近くにいて、たまたま、画面に写り込んでにしまった。そんなどうでもいい偶然の事柄を動画からカットして――いったい何が悪い?」
「うわっ……何という詭弁……」
「だがそれで運営は黙った。最終的にものを言うのは運営の判断だからな。何も問題はない」
「ははは……それはそれで面白いとか考えたんかねえ……」
「かもな」
乾いた笑いを上げる秀介に適当な相槌を返し、真也は再び掲示板の様子を確認する。
【一之瀬陰謀説vs】盗賊、一之瀬真也スレ3023【一之瀬三澄内通説】
234: 名無しの視聴者 : ID:akd8W4eo7
やっぱり二人は内通してたのか
三澄は真也さんから宝箱の位置を教えて貰って、偶然を装って取りに行ったんだな
243: 名無しの視聴者 : ID:akdnzifbr
は? どう考えても一之瀬の陰謀だろ!!
宝箱は三澄の通る場所に意図的に置いたしかねーよ!!
256: 名無しの視聴者 : ID:kan39aKuE
そんな様子は動画には写ってないぞ
271: 名無しの視聴者 : ID: akdnzifbr
そんなもんカットしたに決まってんだろ!!
〈気配〉とかいう便利スキルもあるんだ、不可能じゃない!!
288: 名無しの視聴者 : ID:tknzAkrUH
でもそれ、可能性の話でしかないよな?
しかも、運営が三澄の映り込むシーンをカットすることを許すとは考えづらい
299: 名無しの視聴者 : ID:kanZsD2qP
でも一之瀬真也なら、あのサイコパス野郎ならやりそう
314: 名無しの視聴者 : ID:akdnskWOk
それを言ったら三澄の奴も大概クズじゃん
アイツが真也さんと内通してたって不思議じゃないだろ
「不毛なレスバトルが続いてるな……」
「どんなに議論しても結果は出ない。どちらが正しいかなど有耶無耶のまま、真相は闇の中。そして黒い疑惑は俺と三澄、両方に向けられる。だが、もともとヒールプレイヤーの俺と、正しさを振りかざしていた三澄、どちらにより悪く見えるんだろうなあ?」
「はは……ヒドイ話だ。お前は殆ど無傷じゃん」
「まあな」
三澄との対立の顛末について話しながら食堂へ向かう真也と秀介だったが、その道中、話題の人物が待ち受けていたことに気付く。
「やってくれたな」
冷静を装った三澄が怒りの感情を押し殺したように声を掛けてくる。
「だが、これで勝ったと思うなよ。まだゲームは始まったばかり。せいぜい吠えづらをかかないよう気を付けることだ」
恨みがましく睨みつけ、負け惜しみとしか言いようのない言葉を絞り出した三澄に、真也は満面の笑みで言い返す。
「ご忠告をどうもありがとうございます。やはり説得力がありますね、――現在吠えづらをかいている人からのお言葉は」
そう言い捨てた真也は、三澄には目もくれず歩き出す。
「っ!? 頭に乗るなよ!! この卑怯者がっ!!」
背中に浴びせられる罵声に肩をすくめながらも、真也達は食堂へと向かうのだった。
ゲームにログインした真也達は宿を出て、〈穀倉都市グラネル〉の外へと向かっていた。
乗鞍が馬車を御し、真也達がそれを護衛するように周りを囲う。
荷台にはもちろん、毛皮の山に隠れたリーサが潜んでいる。
昨日の騒動は夜のうちに天馬騎士団によって鎮圧されたらしく、街に混乱はない。
本来なら今頃、この街やその周辺を天馬騎士達がリーサを必死に捜索している筈である。
だが、それらしき様子は確認できず、天馬騎士はごく稀に目にする程度しか巡回していない。
彼女らの様子はまるで、この街にもうリーサはいないと考えているようであった。
「少し、よろしいですか?」
真也達が街を出た辺りで、目の前に一騎の天馬騎士が降り立った。
「シャロットさんじゃあないですか」
「真也さん、昨夜は本当にありがとうござい――」
「いえ、もうお礼の言葉は十分にいただきましたよ。余り畏まられてしまうと、少し寂しいですかね……」
「そ、それはすいません」
シャロットのお礼を遮り、真也は話の主導権を握る。
「しかし、近衛騎士団は噂通りの精鋭ですね。あれだけの騒動を少数で完璧に収めてしまうとは」
「はい、近衛ですので地方の騎士団とは練度が違いますよ――と言いたいところですが、残念ながら今回は私達の負けかも知れません」
「ん? それはどういうことで?」
「反抗勢力の大半に逃げられてしまいました。川の船着き場から船が全て消えていたので、水路を使って逃走されてしまったようです」
それは真也の仕組んだフェイクである。
昨夜、屋敷から逃げ出した後、〈FANGフォックス〉を処分して回収した〈FANGコア〉を、船着き場にいた船を牽く水棲モンスターに使ったのだ。
川を上流へと上る船は、全て水棲モンスターに牽かせる様式のものである。
そのため、大量の船団が〈FANGコア〉を使われた水棲モンスターに率いられ、夜のうちに川を遡上して行ったのだ。
複雑に枝別れする川の支流で散り散りとなり、まるで反抗勢力が逃げ散ったかのように。
「追わなくてもいいのですか?」
「一応部下に追わせてはいます。ですが、この川は広域に渡って広がるこの国の主要水路です。そこを散り散りに逃げられてしまっては、我々だけでは追い切れません。ふふっ、大失態ですね」
そうは言いつつも、どこか嬉しそうに笑うシャロット。
それはまるで、リーサを探さなくていい言い訳を見つけて安心しているようでもあった。
「おや? お悩みは解決したんですか?」
「分かってしまいましたか? そうなんです、今回は大失態でしたが、ある意味これで良かったのかも知れませんね」
真也の問いに、優しげに笑って返すシャロット。
「それでは、私にはまだ裏切り者の男爵を王都へ連行する仕事があるので、この辺で失礼します。昨夜のご恩はいずれ必ずお返しします」
そう言い残して去っていったシャロットを見送る真也達。
「なんだかんだでいい結末だったな」
「当たり前だろう? 俺が責任を持つとか言ったんだ」
「ははは、そうだったな」
真也は秀介と軽口を叩きながら、再び進み出した馬車について歩く。
一行の目的地は、再びの〈港湾都市イートゥス〉。
そこで一時的にリーサの身を隠し、少しほとぼりを冷ます為だ。
ただ、イートゥスはプレイヤーのスタート地点。
第二期プレイヤー達もじきにそこへ姿を現すだろう。
その中には当然、盗賊も多数いる筈だ。
新たな波乱の予感を感じずにはいられない。
だが、どう対応すべきかは今までとそう変わらないだろう。
擦り寄って来るなら見極め、敵対するようなら叩き潰す。
そんなことを考えながら、真也はいつも通りの余裕の笑みを浮かべ、イートゥスへの旅路を楽しむのであった。
第二章 ― 完 ―




