56話 仲間
「仁井、走れ!」
「はい!」
そして、舞台は試合に戻る。
「先輩!」
「おう!」
二校は、激しい攻め合いとなっている。
春桜高校は真琴と烏山を中心に、そして東条高校は越智田中心に得点を重ねていた。
「はぁはぁ...」
「烏山、大丈夫か?」
「...ああ、やっぱり向こうのキャプテンも強いな」
「だろうな」
疲れてはいるものの、その表情には笑みがあった。
楽しいのだ。
だがこのままだと最後まで烏山の体力が持たない。
(...それにほぼ一人で越智田に付いてる。オフェンスだけならまだしも、烏山に負担が行き過ぎてるな)
「烏山、少し休憩だ」
「...休憩?」
しかし、交代など出来ない。
「ああ、得点は俺がやる」
「真琴はまだ大丈夫なのか?」
「あと5分くらいでハーフタイムに入るし何とかなるだろ」
「そうか...分かった」
それからの試合は、真琴を中心に得点を重ねていく。
「畑ヶ田!」
メンバーからパスを受け取った畑ヶ田は、前を見る。
そこには真琴がいた。
二人の視線が絡み合う。
(...来るっ!)
ドリブルで真琴を抜き去ろうとするも、それに付いていく。
「っち!」
「抜かせない!」
そのレベルの高い攻防に、観客達は見入る。
(こいつ、さっきよりも早くなってやがる!)
畑ヶ田は全速力で真琴を抜こうとしている。
真琴もそれに付いていたが、急に畑ヶ田が止まった。
(何っ!?)
そして畑ヶ田はそのままシュート。
―スパッ
ボールはそのまま綺麗な弾道を描き、ネットに入っていった。
この日初めての畑ヶ田の得点だ。
「しゃぁ!!」
「...はぁはぁ、やるな...」
「お前には負けない!」
珍しくも闘志をむき出しにする畑ヶ田。
今までこんな事は無かった。
そうさせたのは間違いなく、真琴だ。
こうして2クォーター目が終わり、ハーフタイムに突入した。
ボードには28:33と表示されている。
「...悪い、やられた」
「はぁはぁ、いや、あれは仕方ないだろ...」
むしろここまで畑ヶ田に得点を許していないのは凄い事だ。
「ってか、先輩達...ふぅ...す、すごい体力っすよ...」
仁井が呆れ顔で言う。
他のメンバーも相当疲れている様子だ。
(まずいな...最後まで持つのか?)
そんな疑問が真琴の脳裏を過る。
その時、郷田が立ち上がった。
「先輩?」
「万が一の時は俺が出る」
「.....」
その言葉に、一同が無言になる。
「お前らが頑張ってくれたおかげで俺はまだここにいられるんだ。例え怪我が悪化したとしても...」
「駄目だ」
「っ!」
「あんたを試合に出さない為に俺がいる」
「....東仙寺」
「だから、あんたは安心してこの試合を観ててくれ」
真琴の言葉に郷田は目を見開く。
...部員でも何でもない、ただの助っ人だ。
しかも、最初は乗り気では無かったはず。
「それにだ」
「?」
真琴は続けた。
「...あんたが一緒に戦ってきた仲間を信じろ」
「!!」
郷田が周りを見ると、部員全員が頷いていた。
俺達に任せろと言わんばかりに。




