55話 記者
「夏未ー、こっちだよ!」
「あ、雀ちゃん。ごめんね、遅れちゃった」
「気にしない気にしない、あんたの彼氏活躍してるよー!」
「か、彼氏って!そ、そんな...」
「そんな赤くなんなって、本当可愛いわねー」
「もー!!雀ちゃん!!」
「あっはっは!ごめんごめん」
「むうー」
ここは観客席。
コートのすぐ近くにも席は用意されているのだが、他校の生徒が多かったのでこちらで観戦する事にした。
夏未は先に来ていた五十嵐の隣に腰を下ろす。
その横には中年の男性と若い男の二人組が座っている。
二人ともスーツで、カメラも持っている。
「それにしてもここまで来るとはねー」
「そうだね...キャプテンの人も怪我で出場できないのに、凄いね」
「もちろん烏山達の力でもあると思うけど、あんたの彼氏も上手いよねー」
「ま、真琴君とは付き合ってないよ!」
夏未のその言葉に、横にいた中年男性が反応する。
「君、すまないが春桜高校の生徒かな?」
「え?あ、はい。そうですけど...」
「今試合に出ている子って、東仙寺 真琴君に間違いない?」
「たしかにそうですけど...真琴君のお知り合いですか?」
「知り合いって訳では無いけど...そうか、あの子の試合をまた観れるとは思わなかったな」
男性がそういうと、横にいる若い男性が話に入ってきた。
「先輩、若い子をナンパですか?」
「...そうか、お前はまだうちに入ったばかりで知らないか」
「ん?」
「先程シュートを決めた青年は、中学の頃に騒がれていたんだ。うちでも雑誌に取り上げた事がある」
「へぇー、それじゃ結構有名な子だったんですね」
「しかし、高校生になってからは姿がみえなくなってな。″消えた天才″なんて書かれていた程だ」
「あ、それ知ってますよ!なんでも1試合で50点叩き出した事もあるって」
「その試合は負けたがな...たしか全中の時だったか」
「で、この試合にその張本人が出てると...なんで今になって出てるんですかね?」
「それは俺にも分からないが...君達、何か知っている?」
中年男性が夏未達に質問する。
「えっと...ま、真琴君ってそんな凄い人だったんですか?」
「...中学の時の試合を観た事が何度もあるが、あれほどの実力者はいないだろうな。高校生になった彼を観れると思わなかったが、良い記事が書けそうだ」
「″天才の復活″って見出しだとインパクトありますね!」
「そうだなぁ。これからの彼の活躍が楽しみだ」
「あ、あの」
「ん?」
「真琴君はバスケ部員じゃありません、助っ人です!」
「助っ人?」
「は、はい...私達の高校のキャプテンがけがで出られなくて...その代わりとして出場しているんです」
「そうだったのか...だったら記事には出来ない、か」
残念な事実にショックを隠せないでいる中年男性。
結局理由については不明だが、それはこの試合が終わった後に聞こうと考えていた。




