53話 お返し
そこからの試合は静かだった。
...そして、畑ヶ田は点を得る事が出来ずにいる。
「っち、先輩!」
「おう!」
マークが厳しく、ゴール下にいる越智田へとパスを送る。
パスを受け取り、すぐにシュートを入れようとする。
「させるか!」
しかし、越智田のマークは烏山だ。
春桜高校の実力者の一人がシュートブロックに入る。
「っ何!?」
「まだ甘いな!」
フェイクを入れられ、シュートを決められた。
静かな試合といえど、レベルの高いやりとりをしているのだ。
「「「ナイスだ越智田!!もっとだ越智田!!」」」
畑ヶ田に点は取られないものの、キャプテンである越智田を中心に他のメンバーに得点されている。
東条高校は部員のレベルが高い。
(落ち着いてる...烏山だけじゃ少し厳しいか?)
そんな事を考えていると、声をかけられる。
先程から越智田にやられっぱなしの烏山だ。
「悪い...」
「いや、向こうのキャプテンも強いな」
「ああ」
「もう一人付かせるか?」
「いや、俺がなんとかする!このままじゃ終われないんだ」
「...分かった」
真琴はその思いを尊重した。
仮にも烏山はエースだ。
やられっぱなしになるような人物ではないだろう。
(しかし...)
真琴はすでにディフェンスの位置についている敵を観察する。
「もっとディフェンス広がれ!インサイドは俺がいれば十分だ!!」
少しずつ波に乗ってきている東条高校。
このまま越智田に点を取られていると、まずいだろう。
(だから、これだ!!)
真琴はディフェンスが外側に広がったと同時に、中に切り込んでいった烏山を見逃さない。
片手で持っていたボールをぶん投げた。
「っ!」
そのボールは今までのパスよりも早く、そして正確に烏山の元へ。
越智田も反応するが一歩遅い。
「もらったあ!!」
パスを受け取ると同時にレイアップ。
ほぼノーマーク状態での得点となった。
「今だ!」
しかし、越智田はすぐさまボールを拾い前へ投げる。
その方向には畑ヶ田がいる。
ロングパスだ。
(まずい!!)
ここで得点を返されると、また流れが変わってしまう。
(くそっ、追い付かない!)
あと少し、あと少しでボールが畑ヶ田に届く。
「うおぉぉぉぉ!!!!」
「!?」
しかしそのボールは畑ヶ田の元へといかなかった。
ギリギリのところで奪い取った人物がいたのだ。
「...仁井!!」
「はぁはぁ...先輩!」
もう一度真琴の元へとボールがくる。
残り時間を見る。
...残り3秒
(いけるっ!)
真琴がシュートモーションへと入る。
3Pライン上だ。
「連続得点なぞさせるか!!」
真琴の前には越智田が飛んでいる。
この男はパスをした後でも、真琴を見失うような事はしなかった。
...だが
「お返しだ!!」
「フェイクだと!?」
越智田が着地したと同時に、真琴はほんの少しだけ横に移動してシュートを打った。
ボールが空を舞う中ブザーが鳴る。
スパッ
審判のアクションと共に、得点ボードが12:13から12:16に変わった。
強豪校である東条高校に3点リードをしたまま1クォーター目が終了した。




