44話 助っ人
―学校
「...いきなり何だ!?」
今、教室の一ヵ所に生徒達の視線が集まっている。
...真琴の席だ。
「頼む!!」
「いや、頼むって何がだよ...」
「試合だ!」
「はぁ!?」
「バスケ部の試合に出てくれ!」
真琴に頭を下げているのは一人の生徒...烏山だ。
「...一体何があった?」
「実は...」
烏山が真琴に頭を下げている理由は、バスケの試合に出てほしいから。
しかし、ギリギリとは言えこの高校の部員は5人、試合には出れるはずだった。
それがなぜ真琴に頼んでいるのか?
それは、こういう事である。
「...なるほどな」
「だから頼む!俺達に力を貸してくれないか!?」
「キャプテンが怪我して人数が足りなくなった。しかも最後になるかもしれない大会だから俺に出てほしい...って事でいいのか?」
「そうだ...あの人にはお世話になってるし、それにこんなんじゃ納得できないだろ!!」
「...」
バスケ部キャプテンである郷田 信二は真琴も知っている。
少しだけだが球技大会で手合わせした人物だ。
(あの先輩が大会前に怪我か...)
「なぁ、頼むよ...このまま終わりなんて嫌なんだよ...」
烏山は俯き、涙をこらえているような声が聞こえる。
「.....」
真琴は何も言わず、考える。
「...真琴!」
しかし、結論は出ずに教室から出て行った。
そのまま廊下を少し歩いていると、一人の女子生徒と会った。
「あなたが東仙寺君?」
「そうだけど...誰?」
その女子生徒は、雰囲気からして3年生だろうか。
いきなり話しかけてきたその生徒と真琴は面識が無いはずだ。
「男子バスケ部のマネージャー...宮下 加奈よ」
「マネージャー...」
「烏山から話はいってると思うけど...私からもお願い!どうかバスケ部を救って!」
「救ってって...そんな大袈裟にする事じゃないと思うんだけど...」
「あの球技大会みてた...あなたは強いわ。きっと信二が戻ってくるまで、勝ち進む事ができると思うの」
「.....」
「試合数は多分2回戦程...そしたら日にちが少し空くと思うから、その2回戦だけで良いの!お願い!」
「だけど俺は...あ」
「....」
「し、信二!」
真琴の前からやってきた体格のいい男。
しかし、球技大会の様な覇気は無かった。
その男の右腕には包帯が巻かれている。
「...東仙寺、俺からも頼む。このままじゃ、終われないんだ」
「...」
後輩に頭を下げるという意味が分かるだろうか。
プライドを捨て、年下に本気でお願いをする。
その覚悟が。
「試合はいつだ」
「...今度の土曜日11時から、勝てば次の日もある」
「....」
(日曜日もか...)
「真琴君」
「夏未?」
「...私からも、お願い」
「....」
真琴が心配になり追いかけてきていた夏未を含め、三人が全員真琴を見る。
「...今回だけだ」
「っ!ほ、ほんとか!?」
郷田も宮下もパァと笑顔になる。
「でも条件がある、先輩にだ」
「...な、何だ?」
「バスケ部の顧問に話しておいてほしい事がある。タイムアウトや作戦は全て俺に仕切らせてくれ、って伝えてくれ」
「...うちの顧問はルールも知らないような爺さんだ、いつもは俺がコーチ役をしてる。これの意味が分かるな?」
「...何となくな」
真琴がそう言うと郷田はフッと笑い、言った。
「任せて、良いんだな?」
「...ああ」




