41話 真琴の家へ
「おめでとうございます、こちら景品の品でございます」
「ありがとうございます!」
凛が受け取ったのは、小さいイルカのストラップだった。
青とピンク色のそのイルカはとても可愛らしく作られている。
「あ、先輩。携帯貸して下さい」
「ん?ああ」
凛は真琴の携帯を借りると、青色の方のイルカのストラップを付けた。
「...こ、これはその、チケット買ってくれたお礼です」
「良いのか?」
「はい。あ、それともピンクの方が良かったですか?」
「いや、これの方が良い」
「ですよね」
「さすがにピンクは恥ずかしいからな...」
「それはそれで見てみたいですけどね」
「勘弁してくれ」
時刻はまだ16時前だ。
水族館はもうたくさん見回ったので、とりあえず出る事にした。
「ふー、わりと歩いたな」
「そうですね...ちょっとあそこで休憩しましょうか」
凛がそういうと、公園のベンチに腰掛ける。
真琴は近くにあった自販機で飲み物を購入した。
「ほい」
「あ、ありがとうございます」
紅茶とアイスコーヒーだ。
「...大人ですね」
「コーヒーの事か?最初は嫌いだったんだけどな...親父が良く飲んでたから...」
「お父さんはどんな方なんですか?」
「そうだな...頑固なところや怒ると怖かったりもしたけど、優しい人だった」
「だった?」
「凛にはまだ言ってなかったっけ、俺の両親はもう亡くなってるんだ」
「...すみません、立ち入ったことを」
「気にしないでくれ、それにもう俺は...完全にでは無いけど、立ち直ってきてるんだ」
「そうですか...あ、だから一人暮らしって」
「ああ、今は叔父さんに世話になってる」
「...」
「その、最近は食事事情どうなってるんですか?」
「クラスメートの家で時々食べさせてもらったり、凛の弁当には助けてもらってるよ」
苦笑しながら話す。
実際、毎日がカップ麺やコンビニ弁当だった真琴には、手作りの料理を食べるという事は夢の様なだったから。
「ああ、それと月に1度は叔父さんの家に行くからそこでも何か食べさせてもらってる」
「え?たったの1度ですか?」
「向こうはもっと来てほしいって言ってくれたんだけど、俺の方から遠慮した。それに叔父さんにも家族がいるからな...」
「...そうですか」
それから家の話などして、30分程経過しただろうか。
「そういえば凛、夕飯はどうする?」
「...そ、その事なんですけども...」
凛が言いにくそうにする。
「ん?」
「わ、私...先輩の家に行って、何か料理作ります」
「え!?」
「だ、だから私が...作ります!」
「一応調理用具は揃ってるけど...さすがに悪くないか?」
「...私がそうしたいから、それでいいんです」
「....」
顔を珍しく真っ赤に染めながら、じっと凛は真琴の顔を見つめる。
「...分かった。そこまで言ってくれなら、俺としても有り難いし助かる」
真琴がそう話すと、凛はぱぁっと笑顔になるのであった。




