3話 集まる視線、そして昼ご飯
―時は進み3週間後...
停学があけ、晴れて登校が出来るようになった。
家から徒歩15分程の距離を歩く。
それが学校までの道のりだ。
(やっとクラスに入れる...)
しみじみと思うのであったが、問題はこれからだ。
(俺の学園生活、どうなるんだろうな)
ただでさえ目つきが悪い。
そして喧嘩...その話が広まっていれば、自分から話しかけてくれる人なんていないだろう。
中学生の頃はまだよかった。
バスケ部に所属していて、チームメイトからの信頼も厚かった。
...訳があって、高校では帰宅部希望だが。
そんな事を考えていると、学校に到着だ。
自分のクラスはちゃんと聞いてある。
2年2組だ。
この学校は1学年3クラスまで、1組・2組・3組と分かれている。
ガラリと、クラスの扉を開けた瞬間...真琴を待っていたのは一瞬にして静まり返る教室だった。
(まぁ、誰も俺の事知らないだろうし仕方ないけど...でもなんだこの妙な感じ?)
向けられた視線がどことなく不自然。
恐怖、不安、軽蔑の視線だ。
(もう俺が喧嘩したって事、やっぱりみんな知ってるって事か...仕方ないよな)
「...誰か俺の席を教えてくれないか?」
やっとの思いで出た言葉がそれだ。
挨拶なんてしても、きっと誰も返してくれないだろう。
「.....」
いまだに静まり返る教室内だったが、視線が一カ所に集まる。
(あそこか)
窓際の一番後ろ、それが真琴の席だ。
席に座ると周囲は話を再開する。
少し小声な気がするが...
「よ、よろしくね」
そんな中、隣の席からか細い声が聞こえる。
どうやら挨拶をしてくれている様子だ。
「...ああ、よろしく。」
「わ、私は結城 夏未です」
「俺は東仙寺 真琴。呼び方は何でも良い」
ちらりと声をかけてくれた女子生徒へと目を向けると、すぐ逸らされた。
(...はぁ)
溜め息をつくと、再び教室の扉が開いた。
「はーい、それではホームルームを始めます。っと、その前に...東仙寺君。」
「?」
「少し、挨拶をしてもらおうかな。それと私は戸高 唯4月からこのクラスの担任なのでよろしくね」
真琴は席を立ち、挨拶を始めた。
「東仙寺 真琴です、よろしく」
それはとても極めて簡単な自己紹介だった。
そして、ホームルームが終わり少しすると授業が始まった。
...4時限目まで終了し、待ちに待った昼休みだ。
ただし、真琴は弁当を持っていない。
決して忘れた訳ではない、ただ単純に昼ご飯は食べないようになっていたのだ。
理由は簡単だ。
真琴は訳あって高校一年の半ばから一人暮らしをしている。
そして、自慢ではないが料理なんて出来ない。
...腹が減っていたら購買で買ったりもするが、基本的に食べなくても平気という習慣がついてしまった。
「と、東仙寺君...その、お昼ご飯は?」
そして、その様子を見ていた隣の席の結城 夏未が声をかけてきた。