20話 真琴の怒り
「へい!真琴!」
今日は2時限とも体育の授業だ。
球技大会が近い事もあり、その練習に当てられている。
「っし、ナイスパァス!!」
上手くパスが通り、烏山がシュートを決める。
さすがバスケ部のエースだ。
「いやー、それにしても本当に上手いのな」
「そうか?」
「ああ、中学の時ってどこまでいったんだ?」
「...まぁそこそこだよ」
適当にはぐらかす。
実は都大会のベスト3に入っており、その大会のMVPにも選ばれている程優秀だ。
しかし自慢はしない。
というか言いたくないらしい。
(だって恥ずかしいし)
その実力は周りと比べても頭が1つ抜けている。
そのせいか衝突もあった、主に上級生と。
中学三年生になると周りは同級生や後輩のみになって落ち着いたが、真琴にとっては嫌な思い出だ。
「なぁ、本当にバスケ部入らないか?練習だってバイトある日とかは出なくても良いし」
「烏山、俺は入らないよ。それに今一生懸命練習している奴らを差し置いてなんて、俺には出来ない」
「...それと真琴」
「何だ?」
「いつになったら俺の事を大地って呼んでくれるんだ?」
「...そのうちな」
そうこうしているうちに1限目の体育が終わり休憩時間になった。
真琴は一旦教室に戻り、水分を取る。
「東仙寺君」
「...」
最近また聞き覚えのある声になったそれは、話しかけてくる。
しかも現在教室にいるのは真琴とこの生徒だけだ。
「な、なんだ月野」
もちろん月野 鏡花だ。
「あの後輩にお弁当を作らせるのを止めさせなさい」
「...一応聞くぞ、なんでだ?」
「あんな大人しそうな子があなたみたいな不良にわざわざお弁当を作ってくるなんておかしいわ」
(それは俺も同感だ、しかし思ったよりかは大人しくないぞ)
失礼な事を思いつつも、少しだけ苛立ちを覚える。
なぜこんな事を言われなければいけないのか?
そんな疑問が頭を過る。
「俺が無理矢理作らしてる、と言いたいのか?」
「そうよ」
「...あいつは俺が一人暮らしで駄目な食生活を送ってるからってやってくれる。無理矢理なんかじゃない」
「一人暮らし...いえ、でもあなたにも見直す義務があるわ。例えばご両親がいる場所に帰るとか」
その瞬間、真琴の中の何かが切れた。
「.....んだよ」
「え?」
「俺の両親は少し前に死んだ!!だからもういない!!俺は叔父に引き取られ、面倒を見てもらってた...でも、あの家庭を見ていると両親と暮らしてた事を思い出して嫌になった、それで俺は一人暮らしを無理言ってお願いしたんだ!!何も知らないお前に、そんな事言う資格なんか無えんだよ!!」
その大きな声に、廊下や体育館にいた生徒達も気付く。
何事かと思った生徒達は集まってきていた。
「...」
真琴自身も驚いている。
ここまで大きな声で、強く言うつもりなんて無かったからだ。
ふと我に返り、教室に他のクラスメート達がいる事に気付いた。
「...悪かった」
それだけ月野に言うと、教室から真琴は出て行った。




