2話 始業式、生徒指導室にて
―ここは″春桜高校″の2年2組である。
今、この場はある一人の生徒の話題で持ち切りだった。
「ねぇねぇ、他のクラスの子から聞いたんだけど...さっき3年生が喧嘩してたんだって!」
「そういえば何か先生達もバタバタしてて騒がしそうだったわね」
「しかもその喧嘩してた相手が、今日からうちに来るハズだった転校生って話だよ!」
「転校生?」
「そうそう!本当かどうかは私もよく分からないんだけども、その他クラスの友達が職員室で話してたの聞こえたんだってさ!」
「それじゃ、その転校生とやらは間違い無く″不良″ね」
「そうだね...普通初日に喧嘩なんかしないもんね」
生徒達が話している最中に、教室のドアが開いた。
「はい、みんな体育館に向かうわよー」
「おっ!ゆいちゃん先生が担任!?」
「そうよ、これからもよろしくね」
その言葉と共に、生徒達は大はしゃぎする。
この″ゆいちゃん先生″と呼ばれる人物は、校内でも人気の高い教師だ。
親しみやすい性格であり、何と言っても優しい。
まだまだ年齢は若い方だが生徒の事を思う良き教師だ。
「って、ゆいちゃんって呼ばない!」
しかしながら、まだまだ迫力は足りない様子。
「そういえば先生、今日転校生が来るって噂聞いたんですけど本当なんですか?」
「予定だと今日からここのクラスだったんだけどね...ちょっと色々あって」
「....」
ゆいちゃん先生の言葉に、このクラスの生徒は察したみたいだ。
″間違いない、喧嘩したのは転校生の事だ″と。
そして同時に一つの疑問が頭を過る。
「えっ!そいつがこのクラスに来るの!?」
「あ...そ、それはまだ内緒です。ほ、ほら体育館に移動しますよ!」
こうして、少し抜けている先生の指示で体育館に移動していく。
始業式だ。
他の学年でも、生徒達によってこの話題が多く話されている。
そんな中、数人の傷を負っている生徒が体育教師等によって″生徒指導室″にて囲まれていた。
三年生が4人と...噂の転校生である東仙寺 真琴だ。
「お前達...始業式の日に何をしているん?それにお前は今日からうちの生徒だろ!」
「....」
「原因は大体分かった。だが、停学は逃れられんぞ!分かったか!!」
「...はい」
真琴は小さく呟く。
これに関しては自分に非が無くても仕方ないと諦めているからだ。
「三年生は無期停学、東仙寺は停学3週間だ!」
無慈悲にも、そう宣告されるのであった。