12話 喧嘩の原因
「週に一度ですか...」
「そうよ、何かしら大事な用事があったら話は別だけども基本的にはそれでいきましょう!」
(たしかに俺にとって、かなり有り難い話だけども...)
しかし、やはり遠慮しておきたい事。
あまり他人に迷惑はかけられない。
ちらりと結城の方を見る。
(って、まだ泣いてる!)
涙が止まらない様子だ。
「ゆ、結城さん?」
「ひっく...まさかそんな理由があったなんてぇ...ひっく...」
「何もそこまで泣く必要は...俺はもう大丈夫だから」
「で、でも...」
「あ、真琴君。それともう一つあるんだけど」
「はい?」
「夏未って呼んであげて。これから家に来るんだから、結城さんって呼ぶとみんな反応しちゃうでしょ?あと妹の事も下の名前で呼ぶこと、良い?」
「あ、はい。全然構いませんけど...ん?」
「....」
結城はまだ涙を流しているが、顔が赤い。
耳まで真っ赤だ。
「どうしたんだ?」
「...な、何でもないよ!?」
目を合わせようとすると、速攻で逸らされた。
「夏未はねー、東仙寺君の事凄い良い人ってずーっと言ってたのよ?」
「お母さんっ!?」
「俺が良い人?どうして?喧嘩して停学になった...言ってみれば不良生徒だぞ?」
「でも、東仙寺君は...その...」
「ん?」
言いにくそうにごにょごにょしている姉の代わりに、妹が話し出した。
「お姉ちゃんは、真琴さんが喧嘩したのを目撃してたんですよ?その原因も」
「え、そうなのか?」
「う、うん...」
その瞬間、真琴の顔が赤くなる。
「って、事は...お、お前まさか...」
「...東仙寺君が学校に迷い込んだ猫と遊んでて、それを目に付けた上級生がその猫を蹴って...それに怒って喧嘩になったの見てたの...」
「...あ...あ...」
誰にも見られてないと思ってた。
教師にもその原因は話していない。
正直、真琴にとって誰にも知られたく無かった真実だ。
(うわああああ!!!ま、まじか!!あの上級生の奴らもその事は黙ってて、俺の目つきが気に喰わないからって話しただけで...いやまぁたしかに絡んできたのはそれがあったからだとは思うけど...)
「そ、それと雨が降ってた日にダンボールに入った捨て犬に傘をさしてあげて、自分はびしょ濡れになりながら帰ったとか...」
「え、ちょ...」
「後は見知らぬお婆ちゃんの荷物を持ってあげたりとか...」
「ス、ストップ!ストップだ!」
気付けば真琴は茹蛸のように赤くなっている。
「...っぷ、はは...あははは!!」
ツボに入ったのか、結城母は笑い始めた。
それも涙を流しながら、真琴を指さしながら...
「い、いや~ごめんなさいね...今まで凄いクールっていうか、落ち着いてる真琴君がここまで取り乱すとは思ってなくて...ぷぷ...」
謝っている感じがしない結城母だ。
そう言いながらも必死に笑いをこらえていた。
「あ!もしかして誰かに言ったりしたのか!?」
「い、言ってないよ!凄い言いたい気持ちになる事はあるけど...」
「それだけは勘弁してくれ...」
こうしている内に、時間はあっという間に9時を回っていた。
「ふぅ...それじゃ俺はここらへんで...」
「あら?泊まっていかないの?」
「ぶーっ!」
丁度飲んでいたお茶を吹き出す結城夏未。
「い、いえ...それはさすがに遠慮しておきます」
「そう、残念」
そう言うと、みんなは玄関先まで送ってくれた。
結城は途中までついてきてくれるようだ。
「あ、もうここで大丈夫。道は分かるから」
「う、うん」
「それじゃな、みんなにありがとうって伝えておいてくれ」
そう言うと、真琴は帰ろうとするが...結城に呼ばれた。
「ん?どうした?」
「こ、これからまた一緒にご飯食べたりするんだよね?れ、連絡先教えてもらっても良い...かな?」
「あ、そうだな...っと」
「よし、完了だ」
「こっちも完了しました」
「それじゃ、ありがとうな...また」
「うん、また」
二人は互いに携帯電話を取り出し、連絡先を交換して解散した。




