第二回
翠『ドリムちゃんドリムちゃん』
舞『翠さん、急に低い声を出してどうしたんですか?』
翠『違うよ。翠じゃなくて、ミドリムラジオの精だよ』
舞『えっと、ごめんなさい。ミドリムラジオの精さん。急に出て来てどうしたんですか?』
翠『ミドリムラジオって言うのはね。翠ドリムラジオって意味でね』
舞『それは分かってます』
翠『安易につけられたわけじゃなくて、いくつも案が出た中で分かりやすい方が良いだろうって事で決まったんだよ。
だからダサくなんてないんだよ』
舞『ダサいって言ったのは翠さんでしたよね?
わたしは好きですよミドリムラジオ』
翠『それでは、ミドリムラジオ第二回スタートです』
舞『翠さん、急にはじめないでくださいよ』
~♪♪♪~
翠『改めましてこんばんは。ミドリムラジオ、パーソナリティの綿来翠です』
舞『同じくドリムです。
ところで翠さん、さっきの何だったんですか?』
翠『スタッフが飽きるまで続く小芝居だよ。
もしくは、ラジオの命名者の心の叫びだよ』
舞『わたしの台本には書いていないんですけど……』
翠『私もさっき貰ったからね。大急ぎで書いたんじゃないかな?』
舞『確かに第一回を撮ってから三十分の休憩が挟まっただけですもんね』
翠『駄目だよドリムちゃん。二本撮りだってばれちゃうでしょ?』
舞『あ、ごめんなさい』
翠『ドリムちゃんは可愛いから、問題ないんだけどね。
今が放送一週間前だとか、休憩の時にこの後遊びに行く場所の話をしてたとか、最初の茶番が本当に唐突に出てきたとか。
こんな事を言っても全然大丈夫だよ』
舞『じゃあ、二本撮りの理由がわたしにあるって事も言って良いんですよね?』
翠『ドリムちゃんは学生さんだから仕方ないよね。
他のラジオでも結構あるみたいだし、気にしなくていいんじゃないかな』
舞『じゃあ、裏事情はここまでにしておいて、はやくオープニングを終わらせましょう』
翠『オープニングがそのままエンディングになったような番組もあるし……』
舞『それでは、ミドリムラジオスタートです』
~♪♪♪~
舞『さて、今日は』
翠『今回は、とかじゃなくていいの?』
舞『引っ張らないでください』
翠『ちゃんと台本があるんだよね。コーナーの説明だけの回になっちゃうけど』
舞『そーですね』
翠『ドリムちゃん拗ねないで。でも、拗ねてる顔も可愛いから、やっぱり拗ねて』
舞『拗ねてないです。困っているだけです』
翠『うん。可愛い』
舞『最初のコーナーは「テーマトーク」です』
翠『テーマトークでは、テーマを決めて私とドリムちゃんで自由に話そう、みたいなコーナーです』
舞『結局自由に話すんですね』
翠『ラジオだからね。でも、テーマがあるだけ話しやすいんじゃないかな?
うんうん。なになに? 「慣れてきたら一人で話して貰うかも」だって』
舞『わたしはまだ自信ないですけど、翠さんは慣れてそうですよね』
翠『もちろん。なんてったってドリムちゃんの先輩だからね。
あーもー、何でその事言うの。忘れてって言ったでしょお』
舞『えっと「別番組で、何話したらいいか分からない。テーマがある。テーマって何? で乗り切ったことあるよね」だそうです』
翠『ドリムちゃんも読まないでよー。一人で話すの難しいんだよー』
舞『でも、わたしが呼ばれたラジオって、一人でやっていませんでしたっけ?』
翠『あれは台本があるし、導入があるしで、急に「じゃあ適当にしゃべって」て言われても、話せる時と話せない時があるの。
って、事で「テーマトーク」ってテーマがあるだけで、だいぶ広がるでしょ?
話が逸れてきていたけど、逸れたら逸れたでまた楽し』
舞『言われてみたらそうかもしれませんね。では、次のコーナーは』
翠『「新コーナーを作っちゃおう」』
舞『説明の必要はなさそうですが、わたしたちが新しいコーナーを考えようというコーナーです』
翠『いずれは来そうだなと思ったけど、もう来るんだ。ネタ切れ早くない?』
舞『でも、コーナーではないですが、決めたい事って結構ありますよね』
翠『例えば例えば?』
舞『このラジオ特有の挨拶って言うんでしょうか。ラジオによって定型句みたいなものがありますよね』
翠『確かに何か決まり文句みたいなものがあれば、イベントとかで盛り上がるよね』
舞『後はリスナーさんを何と呼ぶかって言うのも、バラエティに飛んでますよね』
翠『○○ネーム、みたいなやつだよね。決まるまでラジオネームで行くやつ』
舞『コーナーとコーナーに流れる音楽ってなんでしたっけ?』
翠『ジングル?』
舞『それです。ジングル作るのも面白いかもしれません』
翠『ふむふむ。ドリムちゃん勉強してきたんだね』
舞『初めてで緊張していますけど、翠さんとのラジオは楽しみでもありましたから』
翠『へへ』
舞『照れながら笑わないでください。次のコーナーの説明に行きますよ』
翠『はーい』
~♪♪♪~
翠『コーナー説明もあと二つ。三つ目のコーナーは「質問ぶつけちゃおう」……ってこういう感じのコーナー名なんだね。
要するに、私達に質問して答える、みたいな無難なコーナーです』
舞『される質問は翠さんだけだったり、わたしだけだったり、二人にだったり。
例題として「好きな食べ物」って書いているんですけど、試しにやってみましょうか』
翠『質問的には二人にって事だよね。
じゃあ、同時に言って、いかに私達が息ピッタリかを見せつけよう。
って事で、せーの』
舞『グラタン』
翠『出汁グラタン』
翠『うん。息ピッタリ。美味しいよねグラタン。チーズが良いよね。焦げてるチーズが』
舞『翠さん』
翠『何だい、後輩ちゃん』
舞『出汁グラタンって何ですか?』
翠『ホワイトソースに出汁が入っていてだね、後輩ちゃん』
舞『翠さんの好きな食べ物は何ですか?』
翠『出汁巻き卵』
舞『美味しいですよね。出汁巻き卵。わたしも好きですよ』
翠『そうなの。美味しいの。玉子焼きも嫌いじゃないんだけどね、出汁巻き卵の味を知ってからは戻れなくなっちゃったんだ』
舞『好きな食べ物って、一つに決めるのは難しいですよね。
ベタですがオムライスやハンバーグだって、美味しいって思いますし、グラタンよりも焼き魚を食べたいなって思う事もあります』
翠『好きだからって毎日食べても飽きるしね。これは質問が悪かったなー。
私とドリムちゃんの息はピッタリなのになー』
舞『では、最後のコーナー「お悩み相談室」です』
翠『何か、ここまでテンプレのコーナーを詰め込んだ感じだよね。
ドリムちゃんのため? 確かにドリムちゃんは慣れてないから、様子見って感じなんだね』
舞『気を遣って貰ってありがとうございます』
翠『ドリムちゃんに免じて、そう言う事にしておいてあげる。
これも例題があるね。「ミドリムラジオがダサいと言われないためにはどうしたらいいでしょうか」って、ちょっと引きずり過ぎじゃない?』
舞『でも、分からなくもないですよ。ドリムって言う名前も、ダサいって言われる事がありますから』
翠『誰なの? いますぐ、抗議しに行かないと』
舞『んーっと、翠さんは今から「グリン」って名乗れって言われたらいやだと思いませんか?』
翠『ドリムちゃんが決めてくれた名前なら、改名も辞さないよ!』
舞『ここは辞してくれないと困るんですけど……』
翠『じゃあ、辞します』
舞『話を戻しますね。スタッフさんは「グリン」ってどう思いますか?
「案外ありなんじゃないか」って、そうですか? だとしたら話が進まないんですが……』
翠『やっぱりグリンって可愛いよね。なんて言うか、グリム童話みたいな感じで。
今日はスタッフ諸君と意見が合うね。ミドリムラジオはダサいけど』
舞『翠さんに凄い事を教えてあげます』
翠『なになに?』
舞『ミドリムラジオってドリムって名前が入っているんですよ』
翠『凄い! 「ミ」が邪魔』
舞『翠さん、ボケはもういいですか?』
翠『相手してくれてありがとね。で、どうやったらダサいって言われないかだっけ』
舞『わたしは愛着が沸くくらい、使い続けたらいいんじゃないかって思いますね』
翠『そうだね。あとは、堂々としていたら案外普通に見られるものだよ。
だから、アドバイスとしてはダサいって言われても、気にしない事かな』
舞『それを翠さんが言っちゃうんですね』
翠『駄目かな?』
舞『いいえ、大人だと思います』
翠『えっへん』
舞『これで、全てのコーナー説明が終わったんですが、気になる事があるんです』
翠『何か分かり難いコーナーがあったかな?』
舞『いえ、全てのコーナーに言える事なんですけど、リスナーさんに募集って形にはしないんですね』
翠『あー……それは、過去の苦い経験がね。誤解がないように先に言っておくけど、募集はするんだよ。
で、話を戻すんだけど、私がまだ新人で名前も売れていない時にね、偶々ラジオのパーソナリティの仕事が来たんだけど、最初の数回、全くお便りが来なかったんだよね。
ミドリムラジオのスタッフさんはその時からの付き合いの人も多いんだ』
舞『じゃあ、皆さん仲良しなんですね』
翠『仲良しって言うか、悪友って感じだね』
舞『それでも、羨ましいです。
では、そろそろエンディングに移りましょう』
~♪♪♪~
翠『第二回、ドリムちゃんお疲れ様でした』
舞『翠さんもお疲れ様です。わたしが訊くのもおかしな話ですが、どうでしたか?』
翠『私相手だからって、スタッフが手を抜いている気がした三十分だったよ。
「そんな事ない」ってフリップを持っている顔が、笑っているんだから説得力もないし』
舞『わたしも早く、この仲間に入れるようにしたいです』
翠『大丈夫だよドリムちゃん。ドリムちゃんを虐める人は、私がやっつけるから。
誰にいじめられたの? お姉さんに言ってみ?』
舞『虐められてはいないですが、そうですね。たまにテンションをあげすぎる先輩に困ってしまう事があります』
翠『それは酷い奴だ。でも、ドリムちゃんの困り顔は一見の価値ありだから、困らせたくなる気持ちも分かるなあ』
舞『ほら、お姉さん。そろそろ次に行かないといけませんよ』
翠『あらほんと。ミドリムラジオでは皆さんからのお便りをお待ちしています。
メールアドレスはmidorimu@****.###。
midorimu@****.###です。コーナーへのお便りは、件名にコーナー名を明記するようお願いします。
さて、もう番組も終わり間近なんだけど、考えてみたら、もう年明けたね』
舞『何を……あ、えっとそうでしたね。冬休みも終えて、学校が始まっている時期ですね。
前回新年のあいさつを忘れていた事が悔やまれます』
翠『まあ、挨拶は良いとして、ドリムちゃんってまだお年玉をもらう側だよね』
舞『一応、そうですね。働いてお金も貰っているので、お年玉まで貰っていいものかと疑問に思いますが』
翠『だから、ドリムちゃんにお年玉をあげよう』
舞『今言った通り、貰うのは気が引けるので、代わりにまた遊びに行きましょうね』
翠『いくよいくよ。ドリムちゃんが欲しい物、何でも買ってあげる』
舞『この話はまた後でしましょうね。
ミドリムラジオ、お相手はドリムと』
翠『綿来翠でした。また来週』
~♪♪♪~