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マンガとかでエルフや獣人の耳が動くの好きです。

この話を読む前に本編の六章までお読みください。

「なあハルカ」

「ん? どしたのよっちゃん」

「ぶっちゃけエルフの耳ってどんな感じ?」


 勇者との旅を始めてしばらく経ったある日、ふと陽太がハルカに気になっていたことを尋ねる。

 この世界に来た当初は獣人に興味津々だったが、他に興味が全くないわけではない。


「あ~、ファンタジー好きなら気になるところよね」

「ま、まあな」

「あたしも逆の立場なら聞いてるし……いいわ、教えたげる」

「なぜ上から……まあいいや。まず、その耳って感覚的にはどうなの? 動かせんの?」

「そうね……動かせるわよ、こんな感じに」

「おお……」


 言いながらハルカが長い耳を上下にピクピクと揺らす。

 陽太が目を輝かせる様は小夜がこの場にいたら卒倒していたであろう。


「ただ、これ耳に意識を向けて動かすイメージをしてるから結構集中が必要でさ、意識してないと勝手に動くのよね」

「もしかして感情とリンクしてたり?」

「そうね、テンションが上がれば耳もピンと上に動くし、落ち込めば垂れ下がるわ」


 ここで、陽太も今まで会ったエルフを思い返すが、あることに気が付く。


「でも、あんまり他の人って顕著に動いてない気がするな」

「そこは多分あたしが元日本人だからよ。前に別のエルフに聞いたことがあるんだけど、普通は無意識に制御してるんだって。耳が勝手に動くって話したら『変な奴だ』って笑われたわ」

「へ~、そういうもんなのか」

「きっと前世の耳が動かない方に無意識が慣れちゃってるんだと思う。転生した頃は気になって仕方なかったし」


 転生したことをあっさり受け入れるのもいいですけど、こういう感覚の違いを追究するのも好きです。


「それと、実はこの耳って魔力が集中しやすいのよ」

「えっ、そうなの?」

「ええ。だから魔力による強化で聴力も高めだし、【感知】を使った時はまず耳が反応するの」

「そうなのか、ただの飾りだと思ってた」

「あたしも気付いた時は驚いたもんよ」

「ってことは耳って弱点とか急所だったりする感じ?」


 耳を斬り落とされたらどうなるのだろうか、などと陽太は考えていたが流石にそのまま口にはしなかった。


「そうね、結構敏感よ。髪がくすぐったかったりはしないけど」

「でも、その割に防具とかないよな」

「それなんだけどね、あたしもそう思って一度【土魔法】で作って着けてみたのよ。そしたらすぐに立ち眩みがして気持ち悪くなっちゃったわ」

「マジでか」

「予想でしかないけど、魔力が集中してるせいで三半規管にでも影響してるんじゃないかしら」


 それを聞いて、不用意にエルフの耳を触るのはやめよう、と考える陽太。

 本編で触る機会がなかったせいか、本気でいつか触ってみたいと考えている主人公である。


「だからか分からないけど、一般的にエルフは気を許した人にしか耳は触らせないらしいわ」

「……そりゃそうか」

「例えば今よっちゃんがあたしの耳を触ろうとしても、指が近付くだけで不安になるくらいね」

「つまり俺は気を許されてないと」

「あ、言い方が悪かったわね。今あたしが安心して触らせられるのは人為様くらいよ、そのくらいじゃないと無理」

「なるほど、心酔レベルか」

「心酔言うな」


 エルフの耳の実態が明らかになったところで、陽太はもう一つの疑問を投げかける。


「あとさ、耳が長いと寝返り無理じゃね?」

「それすっごいわかる。別に横に寝るだけなら問題はないんだけどね。こんな風に後ろに倒せるし」


 と、ハルカは手で耳を後ろに倒す。


「お、倒せるんだそれ」

「そうよ。純人の耳だって押さえればちょっとは動くでしょ?」

「……ホントだ、気にしたことなかった」

「耳だけを動かして倒すことはできないんだけどね。やっぱりこうやって押さえないと」


 机に手を置いた状態で薬指だけ上げようとしてもそんなに上がらないけど無理矢理だともっと上がるとかそんな感じです。


「で、何の話だっけ?」

「寝返りが無理って話」

「そうそれ。上向いちゃってるとどうしても一度頭を浮かせないといけないのよね。夜中に目が覚めたと思ったら頭を浮かせてた、なんてこともあるくらい」

「やっぱそうだよな」

「正直邪魔よ。だから普通は上を向いて寝ないんだって。あたしも邪魔に思って以来気を付けてるわ」

「エルフも大変なんだな……うん、色々聞かせてくれてありがとな」

「あ、待って!」


 話を聞けたことに感謝を告げて立ち去ろうとした陽太だったが、ハルカが腕を掴んで止め……られずに引きずられていく。


「ちょ、ちょっと、そこは振り返って『何?』とか聞きなさいよ」

「なんとなくこうしなきゃいけない気がした」

「なんとなくで人を引きずるんじゃないわよ」

「で、どうしたんだ?」


 渋々陽太が事情を聞こうとするとハルカは表情に影を差してニヤリと微笑む。


「あんた、まさか何も返さない気じゃないでしょうね」

「いやそのつもりだが。話聞いただけだし」

「あたしにもファンタジーを堪能させなさいって言ってるの」

「……はぁ、望みはなんだ」

「カルっちに話を聞きに行きたいんだけど」

「カルーカに? ……あぁ、なるほど」


 陽太がエルフ事情を聞こうとしたように、ハルカは獣人事情を知りたいようだ。


「いいぞ、俺も聞いてみたいことあったし」

「やった♪ それじゃ行くわよ!」

(おお、耳が楽しそうに揺れてる)


 そして二人はカルーカが困るほど質問ラッシュをし、その勢いで今度はドワーフ事情を聞きにルオの元に行くのであった。

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