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ロティアのパーフェクトリラックス教室?

この話を読む前に本編の二章までお読みください。

また内容も適当なので実際の効果は保証しません。

(数年経って見返すと無知すぎて恥ずかしくなってきました)

あくまで番外編の一つとしてお楽しみください。

「なんだこのサブタイトル」

「なんで、しょうか……?」

「ロティアが『バーカバーカ』って連呼すんの? 普通に言いそう」

「……」


 小夜は否定できず思わず苦笑い……というか冒頭からそこに突っ込まないでください二人共。

 そういえば最近音ゲーでのネタアレンジ多くないですか? 面白いからもっとやってほしいですよね、例えばひな……おっと失礼。




 ある日、陽太と小夜はロティアに呼ばれてその家まで来ていた。

 用件は聞いてないが断る理由もないので普通に訪ねる。


「いらっしゃい、ヨータ、サヤ」


 二人を招き入れたロティアがリビングに通す。


「今日は何の用だ?」

「最近、魔法を使わないリラックス用の本を手に入れたの」


 と言って一冊の本を陽太たちに見せるが、表紙は単色で何も書かれていない。厚さ的にページは少ないだろう。


「いくつかの過程と少しの実例しか載ってないからこの薄さなんだけど……ってそれはどうでもいいわね。私が実体験してもいいんだけど、他の人の様子も見てみたいから協力してほしいの。いいかしら?」

「ああ、いいぞ」


 小夜も頷く。陽太は過去の経験から良からぬことを企んでそうだと思っていたが、リラックスさせてくれるというならと快諾する。


「ありがと。じゃあヴラーデも呼んでくるわね」


 しかし、そう言って部屋から出ていったロティアが悪い笑みを浮かべていたことに二人は気付かなかった。




≪その一:まず体を落ち着かせましょう≫


「それじゃあ三人はまず床に仰向けになって目を閉じて」


 ヴラーデを呼ぶついでに持ってきた枕を渡し、本に目を向けながら指示を出す。

 まず陽太が寝転がり、ヴラーデと小夜が半ば無意識にその両隣に行く。

 因みにヨルトスは監視と補佐。多少体も動かす予定なので万が一がないか見張る予定だ。ついでに今回はロティアから何をするのかを聞いており黙認している。


「お腹を意識して深呼吸」

「お腹?」

「吸う時にお腹を膨らまして、吐く時は逆に凹むイメージ……らしいわ」


 ヴラーデの問いにロティアが本を見ながら答える。

 陽太は『この世界に腹式呼吸の概念ってなかったっけ?』と軽く疑問に思ったがすぐに捨てた。


「私の合図に合わせてね。あと眠くなったら寝ちゃっていいわ。リラックスできてる証拠だし、気持ちよく眠れるはずよ」


 三人がそれぞれ了承の意を返すのを見て続ける。


「これからは返事はしなくていいから、素直に指示に従ってね。それじゃあ行くわよ。吸ってー……吐いてー……」


 三人揃って深呼吸。さりげなくロティアは三人が吸い終わったり吐き終わったりするのを確認してから指示を出す。


(……まだ書いてあることがあったわ)

「吸ってー……吸う時は綺麗な空気が入るイメージ。吐いてー……吐く時は嫌なものが出ていくイメージ。吸ってー……」


 うっかり忘れていたことを悟らせないように指示を加える。


「……はい。これからは普通に呼吸していいわよ。どうかしら? なんとなく体や心が落ち着いてたりするんじゃない?」


 小さく頷く三人の表情は安らか。早速効果があったらしい。


「これからもっとリラックスできるから、ちゃんと指示に従っててね」




≪その二:体と心の力を抜いてよりリラックスさせましょう≫


「それじゃあ次は体の力を抜いていきましょう。まず……右手、手首より先。指先から手の中にある力が抜けていくのをイメージして」


 三人は指示通りイメージする。魔力とは違う何かが抜けていくイメージ。


「やりやすいようにカウントもするわね。ゼロになったら力がすーっと抜けるイメージ。行くわよ、三、二、一、ゼロ。右手の力が抜けて重くなり、動かしたくなくなる」

(右手がだるい……)

(確かに重い。けど……)

(全くつらくない……)


 陽太、ヴラーデ、小夜が同じ感想を浮かべる。重くなったはずの右手はむしろ気持ちいい脱力感を三人に与えていた。


「次は右腕の肘から先。同じように腕の中の力が手を素通りして抜けていくイメージ。……またカウントを入れるわね。三、二、一、ゼロ。右腕の肘から先が同じように重くなり、動かしたくなくなる」


 三人の脱力感が少し強くなる。

 ロティアは同様に右腕の肩から肘の力を抜けさせる。


「もう右腕全体が重い。動かしたくない。一緒に頭の力も抜けて、少しぼーっとしてくる」

(確かに、ちょっと……)

(ぼーっとするような……)

(少し眠い……)


 ロティアの目には相変わらず安らかな表情を浮かべる三人。

 その後も同じように左腕、右足、左手、胴体の力を抜けさせる。


「体の力が抜けてもうどこも動かしたくない。大分楽になったでしょ?」


 もう頷きは帰ってこない。頷くことで気持ちいい脱力感を失いたくないというのもあるが……


「頭の力も抜けきって余計なことを考えたくないんじゃないかしら? リラックスできてるようね。でもまだまだ行くから、私の声はちゃんと聞いててね」

(心地良い……)

(うん……)

(眠い……)


 三人には頷こうとするための思考ができなかった。意識が薄くなってきているようで、特に小夜は眠ってしまいそうだ。でもこれからもっとリラックスをしようとほぼ無意識にロティアの声を聞こうとしている。




≪その三:一つのことに集中させることで意識を薄くさせましょう≫


(寝る前に羊を数えるのはそういうことなのかしら)


 この部分を呼んだロティアは最初にそう思った。羊を数えるのに集中することで意識が薄くなり、やがて眠くなるのではないかと。

 今までロティアは実例集から適当に選んで指示を出していたが、今回は実例が多い。事前に読んでロティアがその中から選んだのは音。


「今からメトロノームを鳴らすから、その音に集中してね」


 と言ってメトロノームを鳴らし始める。テンポは毎分六十くらいのゆっくりなもの。


「そして一緒に心の中で数を数えましょう。一、二、三……分からなくなっても適当なところから再開してね」


 更に実例からもう一つ加える。


(本当にちゃんと効果あるのかしら……)


 何のアクションもしない三人に少し不安を覚えるが、


(十五、十六、十七、十八……)

(十三、……、十四、十五……)

(十四、あれ? えーと、十三……)


 三人はちゃんと数を数えようとしている。陽太は正しく、ヴラーデは時々数え損ねるが気付くほどの思考力が残っていない。小夜も時々どこまで数えたか分からなくなっているが慌てずに少し戻って再開する。


「こうやって数えてるとだんだん意識が遠くなっていく。もう聞こえるのは私の声とメトロノームの音だけ」


 その言葉通り、三人は眠気に襲われたように意識が遠くなっていく。陽太も気付かぬうちに数え損ね始め、ヴラーデと小夜は何度も数を行ったり来たりしている。




≪その四:何度も意識を沈めたり浮かばせて深くしましょう≫


「もう数えるのも面倒でしょうからやめちゃいましょう」


 と言うと三人は数えるのをやめる。それが自分の意思なのかロティアの指示なのか判断はもうできない。


「もうメトロノームの音と意識が遠くなってく心地良さは体と心で覚えたから、例え意識がはっきりしていてもメトロノームの音を聞くだけで自然と目が閉じて意識が遠くなり心地良くなるわ」


 その言葉を聞いても三人はもう何も思わない、考えることができない。

 この言葉の最中にヨルトスがメトロノームを持って離れていったことに気付くこともできない。


「じゃあ一度目を覚ましましょう。数を数えて三で意識がはっきりして目が覚めるわ。行くわよ、一、二、三、目を開けて。おはよう、気分はどうかしら?」

「……なんというか、良かったわ」

「そうだな、まだしばらく脱力感に浸ってたい」

「ふわーっとして、気持ち、良かった、です」


 三人が体を動かさずに答える。どうやら思考力が一定以下になるとその間に聞いた言葉は覚えてないらしく、ロティアが少し不安になる。


「そう、良かったわ。でも、まだ終わりじゃないの。ほら」


 いつの間にか戻ってきたヨルトスからメトロノームを受け取り鳴らし始めると、三人は目を閉じ再び安らかな表情を浮かべる。


「意識が遠くなる。心地良いからそれを受け入れる。深く入っていく。メトロノームの音を受け入れる。私の言葉を受け入れる」


 再びヨルトスがメトロノームを持って足音を立てずに離れていく。


「また目を覚ましましょう。一、二、三、目を開けて。どうかしら?」

「……急にぼーっとしてくるんだけど、なんかそれが良いわね」

「不思議な、感覚、ですが、面白い、です」

「ああ、そうだな……」


 三人は先程と同じように返すが、


(リラックスはできたが、なんか違うような……というかどこかで見たような……? ま、いいか、心地良いのは確かだし)


 陽太はふと疑問を感じたが、悪いことはないと切り捨てた。




≪その五:体に簡単な暗示を入れましょう≫


 起こしては意識を沈めさせるのを繰り返し、もうかなり深くまで沈んだことだろう。


「今あなたたちは私の言葉を無意識的に受け入れられる状態。無意識的に受け入れれば体も、心もその通りになる。そう、意識がはっきりしていても、ね」


 三人からの返答はない。


「これからあなたたちの目を覚ますわ。でも私の言葉を無意識的に受け入れられる状態のままだから、自分の思考より私の言葉を優先してしまうの。……一、二、三、目を開けて。おはよう、これから面白いことをするわよ」

「面白いこと?」

「何かしら?」

「……?」


 三人はどこか期待を膨らませながら聞き返す。


「例えば、目を閉じて」


 自然と三人の目が閉じる。もしかしたら指示に従うという自分の意思だったかもしれないし、無意識的にだったかもしれないが、もう関係ない。


「するともうその目は開かなくなる」

「なっ! あれ!?」

「嘘でしょ……?」

「え? え?」


 眉を上げてみたり力を込めたりして必死に目を開けようとしているが三人の目が開くことはない。


(これって……)

(催眠術……!)


 小夜と陽太は元の世界の知識から答えを導き出す。


(あのジュースみたいな……)


 同時にヴラーデはいつか飲まされたジュースのことを思い出す。詳しくは本編十三話で……って前も言ったような。


(まずは成功、と)


 ロティアとしてはさっさと次に進みたいところだったが、ちゃんと一つずつ行わないと失敗する旨の記述があったため焦る心を抑えている。

 そして三人に反論される前に再びメトロノームを鳴らすと、必死だった三人の表情が落ち着いていく。


「再び意識が遠くなり、何も考えられなくなる。……次は右腕。右の手首を糸で引っ張るかのように、ゆっくりと右腕が上がっていく」


 三人の右腕が言葉通りゆっくり上がっていく。肩から手首までは伸び、手首から先は力が入らずだらんと垂れ下がったまま。その様子は正に操り人形のようだった。

 しかし三人の反応はない。そのための思考力がないのだから。

 同様に左手も上げさせると、三人はキョンシーのようなポーズで止まる。


「上がった両腕が肩から固まっていく。どんどん固く、動かなくなっていく。まるで石みたい」


 当然見た目は何の変化もない。三人も反応しないのでどこか虚しさを覚えるが気にしてはいけない。


「また目を覚ますわ。目はもう開くけど、今度は両腕が固まったまま。指一本すら動かせない。更に抵抗すればするほど固くなっていくわよ。……一、二、三」

「ん? あれ!?」

「動かない……!」

「なんで……?」


 目を開いた三人は必死な表情。腕を動かそうとしているのだろうが、全く動けない。


「なあロティア」

「何?」


 しばらくして抵抗を諦めたのか陽太がロティアに話しかける。


「これって催眠術だよな?」

「……騙してたのは謝るわ。でも面白いでしょ?」

「……まあな」


 いつかのジュースと違って本気で抵抗すれば破れるからなのか、自然と指示を受け入れていて面白いと感じている自分がいるように三人は感じていた。


「さて、これからカウントダウンして、ゼロになったら腕は元通り。力が抜けて床に落ちるわ。そして一緒に意識も落ちていくの。……行くわよ、三、二、一、ゼロ。腕の力が抜けて落ちる。意識も落ちる。それが心地良い」


 三人の腕が音を立てて床に落ちる。互いにぶつからないようヨルトスがさりげなく微調整している。

 三人は再び安らかな表情を浮かべた。




≪その六:好きな暗示を入れましょう≫


(やっとここまで来たわね)


 実例の中には動物になりきったり、好き嫌いが変わったり、幻覚を見せたりなどと色々あったが、ロティアがやりたかったことは一つ。


「隣の人と手を繋いで。ヴラーデとヨータ、ヨータとサヤでね」


 若干手を探す動きがあったがすぐに三人で手を繋ぐ。


「ヨータだけに言うわ。ヴラーデとサヤ、より大事だと思う方の手を上げて」


 鼓動が早くなるのを感じながら指示を出す。

 現在陽太の心はどちらに傾いているのか、それを知りたかっただけ。この本を手に入れた時に最初に考えたのがそれだった。


(さあ、どっち……?)


 しかし、なかなか陽太は手を上げない。


(……え? まさか、心の底では大事には――)


 ロティアが残念そうな表情を浮かべた瞬間、陽太の両手が上がる。


(あれ? これってつまり……)


 どちらも大事。どっちにするか迷った挙句に両方だと決めたのだ。

 思考力はないはずなので無意識ですら迷ってしまったということ。比較できないくらい、二人共大事だということ。


「……はあ、仕方ないわね。手を降ろしていいわ」




≪その七:最後はちゃんと解除しましょう≫


「え? しないわよ? 勿体ないじゃない」


 あれ、ロティアさん?


「どうせ効果は長く続かないしいいじゃない」


 確かにそうですけど、何をするつもりですか?


「せっかくだし作者の没案を拾ってあげるわ。最後の指示よ。カウントダウンして、ゼロになったらヴラーデとサヤはヨータから離れたくなくなる。くっついている時は安心感、離れている時は不安感が湧いてきてしまうの」


 ロティアさん、なんでそれを知ってるんでしょうか?

 確かにそういう暗示をかけたけど離れ離れになってしまい不安から泣いてしまうっていう話を考えましたけど、陽太君が転移すれば解決だからって没になったんですよそれ。


「行くわよ、三、二、一、ゼロ。続いて数を数えて、十になったら最後の指示を除いた暗示が解けて目が覚める。意識ははっきりし、体も自由に動く。メトロノームの音を聞いても意識はもう遠くならないし、私の言葉に従うこともなくなる」


 無視しないでくださいちょっと。


「でもヴラーデとサヤはヨータから離れたくないまま。……行くわよ、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十! 目を開けて、おはよう」


 ……もういいです。


「適当に体を伸ばしたりしてね」

「いや、そうしたいんだが……手を放してくれないか二人共」

「えっ?」

「あっごっごめん!」


 小夜とヴラーデが顔を赤くして手を放すと、陽太が体を伸ばす。

 二人は呆然とそれを見つめていると、何故か不安になってくる。


「ん~……はーっ……どうした? そんな見つめられると、恥ずかしいんだが」

「……ごめんっ無理っ!」

「うぉっ!?」


 二人が陽太の腕に抱き付く。


「ちょ、ヴラーデ? 小夜?」

「う、うるさいわね! よく分かんないけどこうしてたいの!」

「……小夜も?」

「このままで、いさせて、ください……」


 三人とも顔が真っ赤で、ロティアがニヤニヤとそれを見ている。


「ロティア、何を指示した?」

「お察しの通りよ。他の暗示は解いたから安心しなさい」

「安心できるかそれ?」


 ロティアが陽太のジト目から目を逸らす。


「さ、お昼ご飯食べましょ。ヴラーデ、準備してちょうだい」

「えっ?」

(うわあ性格悪ぅ……)


 くっつくよう指示したのに離れさせようとするロティアに陽太がそう思う。

 ヴラーデは不安そうな表情で陽太と台所を交互に見た後、意を決したように手を放し、台所に向かうが……


 チラッ。


「……」

「……」


 チラチラッ。


「……」

「……側にいた方が良いか?」

「……ごめん、お願い」


 陽太をチラ見するヴラーデの表情に不安が混じっていき、耐えかねた陽太が提案すると素直に折れた。

 結局台所ではヴラーデの側に小夜に抱き付かれたままの陽太がずっといて、昼食を食べ終わる頃にようやく離れられるようになった。




 その後、ロティアにも催眠術をかけようとしたが抵抗されて失敗し、別の手段で報復したのだが……それはまた別の話。

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