この世界における変身事情
では早速参りましょう、一人目のゲストはこちらです。召喚!
「うぉっ、何じゃ!? ここはどこじゃ!?」
「メトーニ姫か。急にすみませんね」
司会の陽太君、謝らなくても良いので進めちゃってください。
「容赦ねえな。えー、『ドラゴンの元の体と人化状態の体の関係性について』だそうです」
「なるほどのう、それで長である妾が呼ばれたわけか」
いやー、とある作品で――あっ、こっちは逆に人間体から一部竜化するんですけどね、『竜化状態で鱗剥いたら~』って感想を残したら見事にブーメランなことに気付きまして。折角なので番外編で姫様に語らせてしまおうと、そういうわけです。
「阿呆じゃろおぬし。まあ良い、ドラゴンの人化はその者の力量が精度に表れる……のは既に聞いておろう。つまり、ドラゴンとしての体を無理矢理人間に近付けておるわけじゃな。じゃから手足など一部のみの変化も可能じゃ」
「痛そう……」
「マッサージみたいなものじゃよ」
最初からドラゴンと人間の二つの体があるわけではない、ということですかね?
「肉体的な意味ではそうじゃが、姿については少し怪しいのう。妾のこの姿は別に誰かを意識したわけでも、こうなりたいと願ったわけでもないからのう」
「まあ、姿が自由だったらもう少し威厳のある姿の方が相応しいとは思う」
「じゃろ?」
ということは、ドラゴンごとに人化状態の姿が決まっていて、強くなるほどその姿に近付くことが可能、と。
「うむ、大方それで合っておるじゃろう」
ではもう一つ、それぞれの状態で体の一部が離れたらどうなるんでしょうか? ドラゴンでいう鱗、人間でいう……爪とか。
「爪はちょっと怖えよ。髪とかで良いだろ」
「先程話した通り、全く別の体というわけではないのでな。該当する箇所に影響が現れることになるのう。鱗程度であれば、人化すれば少し皮膚が剥けるくらいじゃな」
「逆に、取れた方は? 無理矢理人間の姿にしてるんならドラゴンのものに変わったり……?」
「人化は維持が必要なものではない。妾も気にしたことはなかったが、最後に姿を固定する過程があるのじゃろうな。じゃから、人化時に離れた部位はそのままじゃ。……というか、元に戻ったら惨事が起きるじゃろうが」
確かに、姫様のドラゴンの体は巨大ですからね。ちょっと欠けたら大きい何かが出現する図になりますね。
服はどうなってるんですか?
「確かに。気になる」
「服、服な……正直妾も具体的な仕組みが分からん。いつの前にか消えていつの間にか着ておる」
「ここでそんなご都合主義発動されても……」
「本当じゃよ。最初にこれを渡された時、人化を解く時に破けてしまうと遠慮したくらいじゃ。結局『魔法少女が変身するみたいに、人間になる時だけどこかから現れてくれれば良いのに……』と嘆く姿を見て受け取るだけ受け取ってみたのじゃが、まさかその言葉の通りになるとは思っておらなんだ」
「その人が何かした、といわけではなく?」
「いや、驚いたのちに興奮しておったわ。『マホーショージョ』の意味も訪ねたが其奴が例えただけじゃし、服も普通のもの。謎が含まるばかりなのじゃ……」
……誰も知らない、と。仕方ありませんね。
では、このあたりで二人目のゲストに登場していただきましょう。どうぞ!
「よっ」
「正志さん!」
「久しぶりだな」
「おぬし、随分雰囲気が変わったのう……」
「そりゃ人生色々あるってモンよ。逆に姫さんは五十年経っても相変わらずだな」
「ふん、五十年なんぞ妾にとっては刹那じゃよ」
「聞いたか? これが本物のロリババアだぞ」
「喧しいわ」
本編で再会しないからって盛り上がらないでくださーい。本題いきますよー。
「おう、俺の【千変万化】での変身についてだな。っつっても、姫さんと大差はねぇ。肉体が無理矢理形と材質を変えるってだけだ。怪我や破損はそれっぽいところが連動する」
「『それっぽい』って……」
「何にでもなれるからな、当然そういう実験はしてる。変身前と後で部位がなくなったらそこの怪我が消える、なんて便利なモンじゃなかった。代わりに、直せばそれも連動してくれるんだがな」
変身するものを選べばダメージがあっという間になくなりますね。強い。
他にも欠点があると聞いておりますが。
「……まあ、ここなら喋っても良いか。見たことがあるものに変身できる、ってのは前も話した通りだが、実はこの世界で直接見たことがあるもの限定でな。例えば、元の世界の人とか、車とかには変身できねえ」
「あ、そうだったんですね」
「次に、体の一部だけ変身するのは無理だ。腕を剣や大砲に変えるとかやってみたかったんだけどな。あとは……そうだな、姫さんと違って着てる服までは体の一部に含まれるっぽくて、ポケットの中身とかは落とすし、逆に剣を持ってる人に変身しても剣は現れない」
それ、変身後の服を脱いだらどうなるんです?
「別の姿に変身する、変身解除の際に、影響を受けた部分は離れてると元の姿に戻る。それを利用して潜入したこともあったな。服が変わるのを合図に仲間たちが突入してくる感じ」
「じゃあ、体の方は?」
「ややこしくなるが、そっちは戻らねえ。で、ここでだな。何にでも変身でき、怪我が連動するとなるとここで一つ裏技が生まれちまうんだ」
「……というと?」
そうですね、裸で貴重な素材に変身して一部を採取、水に変身して注ぎ足せば無限ループできそうですね。
「は? いやいやそんなまさか――」
「いや、大体それで合ってる。一応直し方が割と厳密で、例えば水を足すなら変身元の水と一致してないといけないんだが、分かっちまえば難しくねえからな。一時期はあの手この手で誘拐を企む奴が後を絶たなかった」
因みに、それを自分たちのためだけではなく、誰かのためにも決して使わなかったそうです。
「そりゃ当然だろ。楽をしたくないわけじゃねえが、堕落もしたくねえしさせたくねえからな」
「……さ、流石勇者」
本編で色欲に塗れた言動や『自分が面白ければ良い』みたいな発言をしてた人とは思えませんね。
「それは言うな」
では、そろそろお時間ですのでお開きにしたいと思います。
追記事項があったら時空を捻じ曲げてこっそり追加しておくので、質問があればどうぞ。
本日はありがとうございました!
「今更だけど、この地の文は誰なんだよ……」




