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怪ホテル

作者: 神名代洸

そのホテルは、巷ではとても有名なホテルでとてもこんな怖い目に遭うなんて思いもしなかった。

私たちが泊まった客室は10階の745号室。

ホテルは15階建てなので割と高い方に泊まることになる。

客室はとても綺麗で、ベットもフワフワだった。友達2人も喜んでいる。ここにして良かったと思った。

4人部屋はなかなか空いておらず、このホテルが唯一空いていたのだから…。

格安ということでも人気だった。

しかし、1人不思議なことを言う子がいた。「ここ…出るかも…。」

「何が出るの?」

「わからない…けど、ちょっと怖い。」

何を言っているのかわからなかった私は首をかしげ聞かなかったことにした。

他の2人はほんとはしゃいじゃってウキウキしてた。今日はここで一泊し、買い物に出かけるのだ。まだ昼過ぎにチェックインしたばかりなので、やる事はない。とりあえずはホテル内の散策だ。1時間ほど見て回るが、売店とかあっても小さなものでとてもお土産に何か買っていけるものはなかった。そこで外に出てみようということになり、観光ガイドブックを手にし、出かけることにした。

街のあちこちは情緒あふれる下町の風情がありあちこちに土産物とかの店も多い。

そこで、私達4人はそれぞれの土産を買いに店に入った。そんなこんなで夕方になり、ホテルに戻って来た私達は早めの夕食を済ませ部屋に戻り買ったものを広げて見せた。

私が買ったのは可愛い動物の耳かきと鈴の音が綺麗な小物。友達はそれぞれが違ったものを広げて見せており、私達はその話題で盛り上がっていた。その時ドスンという音が隣の壁から聞こえてきた。

何かがひっくり返るような音や叫び声のようなものも…。一瞬で楽しい旅行が冷めてしまった。

「ねぇ〜大丈夫かなぁ〜、放っておいて。一応フロントに連絡しておいたら?」

「そうだね。そうしよう。」

友達の1人がフロントに今あったことを連絡するとフロントは困った声でこう言った。

「お客様の両隣はどなたも泊まってはいませんが…。何かの間違いでは?」

「確かに聞こえました。何か争ってるような感じでしたよ。行ってみてきましょうか?」

「いえ、それには及びません。こちらで確認してみます。」

そう言って電話は切れた。

友達からそう聞かされてはいそうですかと納得できないのが1人いた。

「わたし見てくるわ。」

そう言って部屋から出て行った。

「わたしも見てくる。」

そう言ったのはここに来て怖いと言っていた友達だ。

しばらくして2人が帰ってくると2人とも納得できないというような顔をしていた。

「どうだった?」

「部屋がなかった。」

「へ?」

「だから部屋がなかったの。両隣にあったけど少し離れていたから…。だからあんだけ大きな音が出るのがおかしい。」

「じゃあ、私達が聞いたのは何?」

「わかんない。」

「ねえねえ、そんなこと言ってないでお風呂行こうよ。ここの風呂は個別で露天風呂があったんだよね。楽しみだなあ〜。」

気分を変えるにはお風呂はちょうどいいと誰かが言い、着替えを持って浴室へ向かった。

檜風呂のようだ。

お湯は常に流れ落ち、景色と相まっていうことがないくらいいい。4人で入っていたら1人が突然悲鳴をあげた。

「やっぱ隣何か変だよ。敷居というか囲いが高すぎる。まるでこっちには入れないようにしているみたい。」

「ていうか逆じゃない?行かせないようにするためってのが正解な気がする。」

「そうなると行きたくなっちゃうんだよね〜。」

「止めなよ〜。そんな格好で行くのは…。」

「あっ、忘れてた。」

友達は慌てて服を着ると向こう側へ行こうと渡り出した。無事に行き着くと、友達の叫び声が響いてきた。

「きゃー!」

「どうしたの?何かあったの?」

叫んでも友達の声でかき消えてしまう。仕方がないので私も服を着て友達が言った壁の方へと歩いて行った。

そこは血だらけで真っ青になった友達がへたり込んでいた。

「大丈夫?帰れる?」

「あ、ああ、なんとか…。」

「帰ろ?」

順番に部屋に戻って来た2人は今あった事を他の2人に話して聞かせた。

「だから安かったのね。普通ありえないもの。」

「でもどうする?このままこの部屋に泊まる?」

「でも、部屋は空いてないんじゃなかった?」

「あっ、そっか。じゃあ、旅行やめる?」

「えー、せっかく来たのにこんなことでやめるの?なんかやだな〜」

「なら今日はみんなここで夜をあかそう。起きてれば怖くないって。」

「そうだね。そうしよう。」

1人がビデオカメラを回し始めた。

部屋の中をグルグルと写して回った。その時異様なものが写り込んでいたのを彼女は知らない。

テープが切れたので巻き戻して見てみることにした。そこに写っていたのは…長い髪の女性が血だらけで立っていた。壁沿いに。こちらを向いて。

「ヒーッ。」

皆んな悲鳴をあげた。

他には男の人が映っていた。真っ黒な瞳で花瓶らしきものを持っていた。

その生気のない顔は真っ青だった。

友達はもう腰が抜けたのか這いずって逃げようとしている。他の友達も何も持たず逃げようと玄関に向かっていた。

始めに怖いと言っていた友達は必死に念仏を唱えている。

私も怖くて…でも動けなかった。まるで金縛りにあったように…。逃げた友達が廊下で騒いだためフロントの耳に入り係員がやって来た。

意味不明なことを発し続ける友達をよそに部屋に踏み込んできた係員の顔は真っ青だった。部屋が真っ赤に染まっていたのだ。手形が付いていた。

私たち4人と荷物を持って部屋から出た係員はフロントに連絡し、今後について相談している。

私達はもう、旅行どころではなくなっていた。ただ、真実が知りたい。あの部屋の隣で何があったのか…。部屋を封鎖してまで続ける意味はあるのか?まぁ〜ここほど有名なホテルが潰れるなんてこと早々ないとは思うが…。


係員がやってきて、説明を始めた。

この事はこの場限りでお願いしたい旨をまずは伝え、それから話し始めた。何があったのか…。



数年前、1組のカップルがこのホテルで痴情のもつれから殺しあった。女性は花瓶で殴られ、女性は手にしたボールペンを武器に男性に突き立てた。

何度もなんども突き立てたり投げられたりしてお互いがボロボロになって最後は2人とも亡くなったそうだ。

それが、この部屋の隣だった部屋だ。

だが、それ以降不思議な現象に悩まされ続けた客が係員に苦情を言い封鎖することにしたそうだ。だが、そのままにしておくのももったいないと始めたのが逆に安さでうけたのがが今に至るそうだ。ただ私達のように隣に行く客は今まで一人もいなかったそう…。


他に空いている部屋は無いということで、今回の宿泊代は全額ホテル側が持つということでチェックアウトする事にした。


今もこのホテルは存在する。

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