ハッピーエンドはバットエンドの中に
その日、僕は見てしまった。
圭介と梓が一緒に、楽しそうに歩いていたのを…
なっなっ、なんでなんで!?
いや、理由は一つだけなんだけどさ!!
え!?梓、圭介のことチャラくて嫌いだって言ってなかった!?
そして、僕のメンタルは崩壊し、頭脳は機能を停止した。
ガラガラガラ
「あ、おはよー」
「うん、おはよう…」
「あっれれー?こうちゃん元気ない???」
今の僕には答える気力も残ってない。多分。
「あ、そうだった。こうちゃん、梓ちゃんのことで話がー」
「あ?」
何を今更。付き合ってるのなんて知ってるさ。
良いよ。何がきても受け止めてやるさ!
もうどうにでもなりやがれ!
やけくそになった僕は圭介の話に耳を傾ける。
「俺、梓ちゃんと結婚することになったから」
………は?
そうだ。夢だ。夢なんだなこれは。
そう自分に言い聞かせて体の機能をオフにする。
「あ!こうちゃん!こうちゃん!!」
キーンコーンカーンコーン…
「ん?あれ、いつの間に放課後に…」
僕が気がついた時にはもう放課後になっていた。
僕はボーッとしながら帰宅する。
(まさか、梓がそんなことに…ね?)
ゆっくりと歩く僕の視界の端に車が映った。
いつの間にか道路まで出てしまっていたらしい。
キキーっと、車がブレーキをかける音が響き渡る。
次の瞬間僕は気絶した。
リーンゴーン…
(ここは…?)
どうやら教会の中にいるようだ。
(僕、死んだのか…)
そう考えて、ふと横に誰かがいることに気づいた。
って…
「梓!?」
「ん。なに、兄貴」
「い、いや、お前死んだの!?」
「…はぁ?なに言ってんのアンタ。顔洗ってきなさいよ」
「い、いや。すまん…」
これは現実らしい。
「梓、なにしてんの俺たち!」
小声で梓に尋ねる。
「はぁ?本当なに言ってんの?結婚式でしょ?」
「は?誰の??」
「…あんた、本当に大丈夫?私たちのに決まっているでしょ?」
…は?
周りを見ると、確かに結婚式だった。
『あなたは稲穂梓を心から愛しー』
神父が誓いの言葉を言う。
しかし、そこでまた僕は意識が薄れていった。
『だめです!もう心肺停止しました!!』
『蘇生処置は!?』
『…もう、手遅れです…』
『っ、…』
『この少年、稲穂光輝の親族に連絡を…』
『はい』
『本日7月15日18時35分20秒に事故によってお亡くなりになったと…』
『わかりました…』