馬鹿は最強なり
「*÷々|<=×*・×+…」
僕は自分の部屋で一人虚ろになっていた。
まさか、妹に彼氏がいたなんて…
初耳だし、そんな素振りもしていなかったはずなのに…
考えれば考えるほど、どんどん鬱になっていく。
「おーい…おいってばこの馬鹿兄貴!」
横にはいつの間にか梓が座っていた。こちらを睨みながら。
「あんたもさぁ、いじいじしてないで良い加減彼女つくんねーの?本当うざいんだけど」
いつもなら聞き流せるはずの妹の罵倒も今は突き刺さる。
「*×÷|<々々*=×*・?」
「いや、意味わかんねーしキモイし」
だめ、それ以上はもうメンタルが持たない…
「×*÷6=+・」
「あんたさ、とりあえず人語喋ってくんない?ってあれ?おい、どこ行くのさ。おーい…」
これ以上話しても僕の心が削れるだけだ。
そう判断した僕は学校へ行くことにした。
教室に入るとそこはいつもと変わらない風景だった。
騒がしいクラスメート。落書きのある黒板。
しかし、それが全ておかしく見えるのはきっと僕の心が弱っているせいだ。
「やっほー、こうちゃんおっはよー!」
この元気すぎてうるさい奴は菅野 圭介。
「おはよ…」
「どしたの?なんか元気ないじゃん?」
「いや…梓に彼氏ができたって……」
こいつは騒がしいが、信用できる奴だ。
僕は相談などがあるといつもこいつに相談する。
「そっかー。梓ちゃんとうとう取られたかー、いやー勿体無いねぇー」
欠点があるとすれば、いつも適当だということだが…
「ふざけてる場合じゃねぇよ…どうしよう」
「どうしようって、それは梓ちゃんの考えることでしょ?こうちゃんがどうこうする問題じゃないじゃん?」
「それはそうだけど…」
そうなんだけど、よくわかってるんだけど、どうしても納得できない。
「まぁ、それは置いといて」
「置くなよ…俺には死活問題なんだよ」
「大丈夫。こうちゃんも元気になるニュースがあるんだよ」
?何を言ってるんだ。僕が元気になる?梓のことか?
あ!彼氏とはもう別れたとか!!
うん。確かにそれなら元気百倍だよ!!
「実は俺…彼女が出来ましたーーー!!」
……………は?
「は、はぁぁぁ!?お前に!?彼女が!?はぁぁぁ!?」
「イェス!ザッツライト!」
「うっそ!?まじかよ…お前でもできるんだな」
「なにそれ!?馬鹿にしてない??」
「めっちゃしてる」
「んノォォォウ!!酷いよこうちゃん!即答しすぎだよ!」
ぎゃーぎゃー叫ぶ圭介を前に、ふと僕は疑問を感じた…
「なぁ、お前って梓あたりの年齢がストライクゾーンって言ってたことなかったっけ?」
「…フッ」
………これはアウトだな
「おまわりさーん!ここに!ここにロリコンがぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁ!やめて大声で叫ばないでぇぇ!」
いや、これはクラスメート全員が知る権利がある。
妹のいる人は要注意だ。
「こいつは高校生なのに小学生と付き合ってまーす!!」
「そこまで年齢低くないよ!?」
「中学生だそうでーーす!!」
「ち、ちが、違う!」
「じゃあ高一?」
「……フッ」
「確定キターー!」
こいつは親が厳しくて嘘をついてはいけないと(体で)教えられてきたのだ。
「こうちゃん!酷いよ!!」
そう圭介はすがりついてくるがもう遅い。
「圭介、周りを見てごらん?」
「…?」
周りからは氷のごとく冷たい視線が圭介に向かっていた。
「ちょっ!?いや、だから違うってぇ〜!」
圭介が皆に弁明しているのを横目に僕は一時限目の用意をした。
(ま、圭介のおかげで少しは元気、でたかな?)
圭介のおかげでなんとか今日を乗り越えることができそうだった。