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遊部でアソブ!

作者: 鳶

  

     

 『高校生』はこの世で最も『自由』な存在だ


     

 故に、日々を惰性で過ごすことは贅沢だ

     

 生産的な毎日は自ら自由を放棄している

    

 自由になりたいって?


 そんなこというのは万死に値する

 

 しようと思えばその有り余るエネルギーをもってして

     

 何でもこなせてしまいそうな活力の権化

   

 そして、誰とも違う特別であろうとを野心を抱く

     

 それが、高校生という存在なのだから………


       ★   ★   ★   ★   ★

 

 空にはさんさんと燃える盛る太陽。

 教室の窓際、差し込む太陽の光が

 肌を刺すように痛い。

 せわしなく聞こえる蝉の鳴き声は

 暑さを何倍にも感じさせる。

 

 県某所。県立青桜高校。

 全校生徒数は1000人程度。

 この地域では多少名の知れた進学校で

 レベルも低くは無い。

 落ち着いた校風で

 歴史もそこそこあるらしい。

 良く言えば穏やか、悪く言えば何もない

 至って普通の学校。

 そこへ俺、佐野拓馬は青桜高校に入学した。

 


 『高校生はこの世で最も自由な存在だ。』

 これは持論だ。

 

 

「…それなのに、俺は青春を全く!

 1㎜も!謳歌できてねぇ!」

 佐野拓馬は机に突っ伏しながら

 目の前の友人にそう嘆いた。

 

 暑さのせいもあるのだろう

 無性に腹が立ってくる。

 「それはそれでは大事だろうど…

  本業は勉学だしねぇ…。」

 目の前で突っ伏する拓馬に呆れ顔で

 やれやれ…と首を横に振る。


 この友人、名前は雨宮祐介

 たまたま席が隣になって

 話しをするようになったら

 なかなかに気が合う奴で

 今のような関係に至る

 

 俺の一番の友人でもある、親友って奴だ。


 「…んなもん言われなくても分かってる!

  そうじゃなくて!」

 拓馬は机に顔をそのままに言い返し、再び嘆く。

 

 高校に入学してはや3ヶ月

 あと一週間もすれば夏休みだ。

 「くそぅ…結局俺はこうなっちまうのかぁ!」

 

 まだ、桜の花も散りきらない時

 あぁ、高校生活!

 と期待に胸を膨らませていた4月

 

 新しい制服や校舎に心が踊り

 部活動なんてのもいいな、

 アルバイトして稼いだ金で

 友達と旅行なんて行ったり、

 彼女なんかできたりしたら

 一緒に登下校したりなんて…

 などといった幻想にうつつを抜かしていた。

 

 だがそんなテンションが

 三年間持つヤツなんているわけがない。

 新鮮が日常に、日常は退屈に、

 そして退屈な日々が惰性へと変わった。

 

 「俺の入学当初の予定とは真逆にいるよ…はは。」

 拓馬は自嘲気味にそう言って笑って見せた。

 

 「この雨宮祐介がいるじゃないか

  っと元気に行こうぜ?」

 「黙れ、このホモ野郎。俺は女子がいいんだよ。」

 拓馬は、不機嫌そうに顔を上げた。

 額には大粒の汗が吹き出ている。

 

 「そんなぁ、僕はこんなに

  お前を思っているんだよ?」

 真顔でそんな事を言い放ち

 タオルで拓馬の顔を拭う。

 

 「あと、僕はホモじゃない。

  バイだ。バイセクシャルだから。」

 「そんなのどっちでも同じだろ?

  襲われそうでコワイナー。」

 「僕は無理矢理なんてしないさ。

  後、同じじゃないから。

  そもそもホモって言うのは……だから

  僕の場合はやっぱり『バイ』なんだよね。

  だってバイは………。」

 ムムム…なにやら語り始めた。

 

 「こんなことばっりしてるから

  女も寄ってこないんだよな。」

 窓から時折吹き込む風が妙に涼しく感じられた。

 

     ★    ★    ★    ★    ★

 

 終業式の前日、祐介が拓馬に唐突に

 「どうせ休み中暇なんだろ?だったらさ……」

 「ナンパか?だったら暇じゃないぞ。

  バイトで予定が一杯なのさ。」

 拓馬は祐介が何を言うのか

 わかった風に言葉を遮った。

 「いやいや、違うよ。最後まで聞いてよ。」

 祐介は不満気に言った。

 

 「スマン、スマン、ふざけ過ぎた。で?」

 何かを察して拓馬が謝ると、続きを促した。

 「ホント、気をつけてよね。」 

 「分かったから。ごめんって。」

 

 まだ機嫌が直らない祐介にもう一度詫びる。

 「ん、分かればいいさ。

  でさ…僕と部活でもやんない?」

 ん?ブカツ?何かの聞き間違いか?

 「ごめん、今なん……」

 「僕と部活をやろうよ!」

 

 次に何を言うか知っていたかのような即答

 「今更、部活に?タイミング遅いだろ。

  ちなみに何部だ?」

 この返答も予測していたのだろう。

 返しは早かった。

 「創った、部長は僕さ。」

 

 「………」

 (ハ?ナニイッテンダヨコイツ?

 ツクッタ?ブチョウ?ハ?) 

 「だから創ったんだってば。遊部。」

 祐介はいつものようなふざけた口調ではない。

 

 コイツ、マジかよ…。なんだアソブって。

 「遊ぶ部活ってことか?その遊部ってのは」

 拓馬は予想が外れる事を願って聞いてみた。

 「そうだよ!一緒にやろう、部活を!」

 祐介は弾けるような笑顔を拓馬に向ける。

 

 「………」

 (やめろ!その顔を向けるな!眩しすぎる!)

 「やっぱり嫌だった?

 どうしても無理なら仕方がないけど…」

 急に申し訳なさそうになる祐介。

 

 「………」

 (だから、上目遣いでみるな!

 くそぅ、卑怯な手を使う…)

 「そうだよね、予定あるみたいだし…

  やっぱ迷惑だったよね。変なこといってごめん。」

 残念そうにその場を立ち去ろうする祐介。

 

 「あぁ!分かったよ!入るから、

 その…遊部ってのに!」

 根負けしてついに拓馬はそう言った。

 「本当に?!やった!本当に嬉しいよ!」

 途端、急に元気を取り戻した

 祐介は本当に嬉しそう振り返った。

 (やっぱり演技だったか…)

 

 「でも、いいのか?

 創部には最低5人必要だろ?後の3人は?」

 「心配無用、僕のホモダチに

  名前だけ貸してもらってあるから。」

 無駄に顔の広い祐介だけに、

 容易であっただろうと察しはつく。

 (んー?友達っていったよな?

 うん、聞き間違いだよな。)

 「本格的には夏休みからだからまた連絡するよ。

  僕は正式な創部の手続きがあるから。」 

 祐介は拓馬にそう言い残して教室を出て行った。

 「部活……ね。退屈しのぎくらいにはなるかな。」


     ★    ★    ★    ★    ★


 夏休み初日。太陽も少しは休めよな。ホント

 拓馬と祐介は学校の正門の前で

 待ち合わせをしていた。

 もちろん、例の部活の件でだ。

 

 「やぁ、拓馬!よく来てくれたね。嬉しいよ。」

 「まあな、にしても、暑すぎだろ。

 冷たいもんが欲しい。プール入りてぇ。」

 ポケットの中の携帯電話を取り出し

 現在の気温を見てみる。

 すると34℃と表示されていた。

 (ウソだろ?まだ、午前11:00だぜ?

 まだ上がるよな。チクショウ、暑い…)

 

 「じゃあ、行こっか」

 祐介が歩き出す。

 拓馬も横に並ぶように歩く。

 「ってか、どこに行くんだ?」

 「ん、部室だよ。

 部活なんだからそれくらいあるさ。」

 「なる程、そう言われてみればそうか…」


 なんと、部室はC棟1階の

 一番奥の部屋らしい。

 C棟といえば今ではほとんど

 使うことのない偏狭の地。

 これはもう青桜高校の秘境とえるだろう。

 

 「凄いところを部室に選んだな」

 皮肉たっぷりに言ってやると

 「そうだろ?他の部もいないし

 部室だけじゃなくてC棟自体がもう部室だよ」

 と、祐介は自慢げ返す。

 

 言ってるうちに部

 室についたらしく祐介はポケットから

 その部屋の鍵を取り出した

 「いざ」

 カチャッと鍵の開く音がして

 祐介はドア開ける。

 すると目の前に広がっていたものは…

 

 「なんだよこれ…部屋あってんだろうな、祐介。」

 「もちろんさ、でも、こんなに酷いとはね…」

 流石の祐介もこの光景には

 いつもの軽口が叩けないようだ。


 ドアを開けた拓馬たちの目の前には

 恐らく過去に使ったのであろう

 様々教科の資料が散乱。

 机や椅子などの劣化した不要備品。

 おまけに一年や二年の放置では有り得ない埃。

 ここには確実にヤツが…

 『G』がいるにちがいない。

 

 蛍光灯は当然つかなかった。

 窓にはいくつものヒビと

 補修用ではられたガムテープ。

 カーテンも機能的な能力は

 もう望めない布切れだった。

 どこを見ても散らかりひどい始末だった。

 掃除するための道具さえ

 掃除される対象と化していた。

 「「………」」

 

 「「………」」

 

 「「………」」

 

 しばらくの間の沈黙が続きいた。

 暑さのせいか時間の進みさえも、遅くかんじた。

 

 その沈黙を拓馬が破った。

 「…か、風通しがいいしっ!

  …か、開放感があっていいな!」

 「…そ、そうだな、ははは。」

 

 「「………」」

 しかし、再び沈黙が訪れる。

 

 

 数分間の沈黙は二人には何時間にも感じられた。

 

 

 「「…まずは、部室のそうじからだな。」」

 ふたりは顔を見合わせ失笑した。

 「マジかよハモったな。

  まぁ、とっととやろうぜ、

  部長さんよぉ。」

 拓馬に部室と呼ばれ、満更でも無い顔をしていた。

 「遊部、最初活動は部室清掃だよ。

 さぁ、やろうか」

 「でも、アソブのクセに遊ばねぇのかよ?

  これも一応部活動何だろ?」

 拓馬は軽く祐介を挑発する。

 

 「『遊部』だから。

  そうだね…じゃあ遊部流でいこうか?」

 「ハイハイ、遊部ね。

  言っとくが、やるからにゃ負けねーぞ。」

 「望むところだよ。

  僕こそ負ける気はさらさらないさ!」


 二人は夏の暑さなどすでに忘れてしまっている。

 

 「いいかい?ルールの確認をするよ?」

 祐介が念を押す。

 「大丈夫だ。分かってるさ。

  ルールはざっとこんなモンだろ?

  ①ゴミは交互に運び出すこと。

  ②前の相手の運んだ物の質量の

   同等かそれ以上の物を持ち出す。

  ③複数の物を同時運び出すのは可。

  ④自分以外の運ぶ手段は使用不可。

  ⑤どちらが運べなくなった時点で終了。

  ⑥同じく運べる物がなくなっても終了。

  ⑦運搬、収拾の際の妨害は禁止。」

 

 拓馬がルールを確認し、祐介がうなずく。

 「うん、いいね。でも待って。

  一つだけルールの追加を。」

 「なんだよ、これ以上まだあるのかよ?」

 とっととやろうぜ、拓馬はそう言っている。

 「やってるうちにまた何か追加が

  必要な可能性はあるね。

  でも、最後のルールは凄くかんたんさ。

  そしてそれは遊部には絶対のルールさ!」

 

 祐介が得意げな顔で、拓馬をみる。

 「だから、何だよ。勿体ぶるなよ。」

 「いいかい?最後のルール、

  ルール⑧!楽しんでやろう!楽しまなきゃ負け!」

 祐介は右手の人差し指を

 高々と天井向けて突き上げ、

 楽しそうに笑う。

 「なる程…オッケイだ。任せろ、問題なしだ。」

 ふふっ。拓馬もつられて笑う。

 

 「よし、じゃあ僕が先攻だからね?」

 「はぁ?聞いてねぇしっ!ざけん……」

 拓馬の抗議は完全に無視。

 「ヨーイ、スターット!!!」

 

 祐介は早くも床に落ちている

 プリントなどの小物類をかき集めている。


 「…ったく、毎度毎度勝手な奴だな。

  でもまぁ、悪くないよなこういうのもさ。」

 そんな事を呟くと、

 「そうともさ。」

 祐介がそう返してきた。

 (今のが聞こえたのか?地獄耳かよ。)

 祐介はこっちをみてニッと笑っている。

 

 そして、集めたゴミをまとめて

 外へ運びだしに行った。 

 最初だからなのか

 あまり量は無かったように見える。 

 (俺も最初は少なめにしておこう。)


 しかし、ふと思った。

 (ちょっと待て…アイツ運んだ物重さとか

 どうやって計るつもりだ?)

 

 すると、棟の入り口の方から

 祐介が物凄い慌てようで

 「しまった!

  どうやって重さ計るか考えてなかったぁ!」

 と、叫びながら走ってくるのが見えた。

 「やっぱりかバカ野郎!

  俺も今さっき気付いたわ!」

 走ってくる、祐介に向かって叫び返した

 

 拓馬は、楽しそうに笑った。

 「今年の夏は退屈しなくて済むかもな。」

何分若輩者なので、文章は拙いですがどうぞ宜しくお願いします。

って言うか、ほとんど遊部(あそぶ)で活動してないなぁ…。

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