はじまり
「ざまぁ諒!メロンパンはもらったっ!」
「ざけんな!待ちやがれ李子!!メロンパンは俺のもんだっ!女が出しゃばんじゃねぇ!」
都内の蓼科学園高校という、ごくある普通の高校校舎。
昼食ぬ時間、ほぼ恒例となったある男女2人の怒鳴り合いが響いた。
「おい諒!廊下は走んじゃねーぞ!李子も女なんだからちょっと落ち着いたらどーだ」
「李子ー、待ってよー…」
桃瀬 李子。蓼科高校1年3組。
とても元気で、とにかくやんちゃ。
小学校からバスケを続けていて、かつ女からモテる。
だけど、気さく過ぎる性格からか、男の浮いた話は聞かなかった。
それに対抗していたのが佐伯 諒。同じく3組で、李子とは幼稚園からの幼馴染。
野球が大好きな、いわゆる野球少年で、甲子園に出るのが夢らしい。
2人をなだめたうちの一人、高木 皆人は、李子と諒と幼馴染。
2人と違ってとても落ち着いた人で、もう一人の、浅野 舞花は、3人とは幼馴染ではない。
彼女は、小2の時に転校して来て、それから3人と一緒にいるようになった。吹奏楽部でフルートを演奏し、李子とは正反対の、落ち着いておしとやかな女子である。
「なんだと!?女だからってナメんな!」
その時、皆人と舞花が2人の中に割って入った。
「なっ!止めんな皆人っ!」
「離せ舞花っ!」
すると舞花はメロンパンを4つ買った。
「みんなで食べればいーじゃない。どーしていつも2人はケンカしちゃうの」
舞花の発言に2人は言葉を失い、おとなしく屋上へ向かった。
いつも決まって4人の昼食は屋上でとる。
仲の悪そうな諒と李子だが、やはり幼馴染というだけあって、昼食は騒ぎながらも楽しいものとなっていた。
「あ、明日雨と雷注意報出てる」
舞花がスマホの気象予報片手にメロンパンを食べながら言った。
「マジで!?わーい、李子の嫌いな雷楽しみだなー!」
諒は李子をみながらニヤニヤして言った。
「黙れボケナス!そのツンツン頭に落雷すればいい」
李子は持っていたジュースの紙パックを諒に全力で投げた。
「おいバスケ部、コントロール悪すぎだぞ!しかも地味に痛ぇ」
諒は李子に言った。
「バーカ、狙ったんだよっ!」
李子はいたずらな笑みを見せた。
夏はじめにも関わらず、屋上には爽やかな風が吹き渡っていた。
舞花は、自分だけ幼馴染じゃないという寂しさの半面、諒と一緒にいられることが嬉しかった。
もちろん李子とは大親友だし、皆人も信頼してるし、みんな別け隔てなく大好きだ。
だけど、それ以上に諒に、恋していた。
それは皆人の李子に対する気持ちと同じだった。
だけど同時に2人は、諒は李子に恋していることも勘づいていた。
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