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第1話 夢の雫☆魔法少女キョーコ誕生

第2話目未定。




「ボクと契約して魔法少女になってペコ!」


「はぁ?」


部屋で夕食のどん兵衛を(すす)っていた私は、急にそんな事を言われたのだった。







皆口キョーコ(20才)は、フリーターである!

その日暮らしの生活を送るダメ人間であり、生活能力はギリギリである!

そんなナレーションが私の頭の中で流れる。


20才か~。20才で魔法少女は無理っしょ~。少女じゃないっすもんね~。

自問自答の末に導き出した答えを、私はそのまま口にした。




「私もう20才なんだけど」


「えっ!? マジっすかペコ!?」




私が20才という事実に、ペコペコ言う謎の小動物は衝撃を受けていた。

……大体、この生物は一体何なんだ?

タヌキか何かが突然変異したのだろうか。

白い体に、つぶらな瞳の小動物だ。ただし、人語を話している。


妖怪か。妖怪だな。妖怪に違いない。

初めてそういう物を見るが、どうでも良かった。

妖怪に興味は無い。売る所も分らないし。

私は頭を抱えて悩んでいる妖怪に言った。


「んじゃあ、用が済んだんなら森に帰ってもらえるカナ。妖怪さん」


「よ、妖怪!? ボクはもっと妖精的な存在ペコ! 夢と希望の産物ペコ!」


ガバっと起き上がりながら不服を漏らす、夢と希望の産物(仮)。

妖怪だろうが妖精だろうが、売れない事には変わりが無い。

という訳で、私はそいつの首根っこを持つと、つかつかと持ち運んで窓を開けた。


私の借りている部屋は2階にある。生き物を投げ捨てるにはちょっと躊躇(ちゅうちょ)する高さだ。

でも妖精なら大丈夫だよね? 頑丈だよね? 面倒くさいし、何とかなるでしょ。

私はそう結論すると、街灯が瞬く夜の町並みを眺めながら言った。


「妖精なら、この高さから投げても大丈夫だよね?」


「ちょ、ちょっと止めるペコ! ここまで愛の無い対応は初めてペコ!」


ジタバタ暴れるそいつを押さえつけながら、私はニッコリ微笑んで言った。


「次は愛してくれる飼い主を見つけてね」


「ボクは誰にも飼われないペコ! ふぬぅ~! マッスルマッスル!」


「あ、こら暴れるな! わたたた!」


突然暴れだした妖精。

私の手から抜け出すと、くるりと1回転して床に降り立った。

そしてそのまま綺麗に土下座にシフトした。


「お願いしますペコ! 1回! 1回でいいから試しに魔法少女になってくださいペコ!」


そんな土下座妖精を前にして、私はう~んと考え込むのだった。







ずるずるずる。

私は伸びたどん兵衛を食べながら、ペコ丸と名乗る土下座の妖精の話を聞いていた。


「今、魔法の国が大変なんだペコ」


「知らないよ死ねばいいじゃん」


「死!? ボク、早くもキョーコを選んだ事を後悔し始めてるペコよ!?」


勝手な事を言うペコ丸に対し、私は無感動な瞳を向けたまま言った。


「こっちだって迷惑だよー。20才だよ? 魔法少女とかマジ無理なんですけどー」


「ぐぬぬ……! 今は空前の人手不足ペコ……! キョーコ以外の適正者を見つけるのはキッツいペコよ……!」


苦渋を滲ませた表情で語るペコ丸。

妖精のくせに、何だか夢とか希望に欠けた顔だ。


「なんで人手不足なのさー、ごくごく」


私はどん兵衛の汁を啜りながら聞いた。


「くっ……! 性の乱れが、若者の魔法少女離れを引き起こしているペコ……!」


なるほど、魔法少女も大変なんだなー。

私は食べ終わったどん兵衛の容器が倒れないように苦心していた。

どうにかいい感じの位置に箸を置くと、暇つぶしにペコ丸に疑問をぶつけてみた。


「私以外にいないの?」


「……キョーコを見つけるのにも、3年かけたペコ」


結構長い事探してんだなー。

苦労を思い出してだろうか、ペコ丸は涙を滲ませていた。


「お願いキョーコ! 頼むから魔法少女になってペコ! 断られたら、ボクは腹を切る覚悟ペコ!」


だらだらと汗を流しながら叫ぶペコ丸。

私は、切腹されたら部屋が汚れるなーと悩んだ。







「このステッキを握って、魔法を唱えればいいのね?」


「ザッツライ! さあ張り切って行くペコ!」


妙に元気なペコ丸を横目に、私は夜の公園に立っていた。

腹を切る覚悟のペコ丸に説得され、魔法少女になる事を承諾したからだ。

ただし、とりあえずお試しの1回という事で。


ぶっちゃけ2回も変身する気は無い。

ぱっぱと終わらせるために、私はペコ丸に変身の魔法を聞いた。


「で? 魔法とやらはどんな風にすればいいの?」


私が聞くと、ペコ丸は何だかくねくねしたポーズを取った。

うわキモイ。何このポーズ。ゲロ吐きそう。


「このポーズを取りながらこう言うペコ! 『愛☆素敵な私に、変・身』」


「マジで? 誰が考えたのキモイ」


「キモイ!? 魔法の国の女王様がディスられてるペコ!?」


女王が考えたのかよ。

マジで頭おかしいんじゃねーの。

早くも私はやる気を無くしかけていた。

もう帰ろうかな。


「あの、ねえ。帰ってもいいかな?」


私が素敵な笑顔を浮かべながら素直な気持ちを伝えると、ペコ丸は愕然とした顔をした。

凄い。凄いマジな顔だ。妖精どころか、動物ですらしないほどの切羽詰まった顔をしている。

そしてペコ丸は、滂沱(ぼうだ)の如く涙を流しながら私を引き止めてきた。




「キョーコ!? キョーコ言ったペコ!? やるって! 1回はやるってぇ~」


エグエグと泣きながら縋り付いてくるペコ丸がウザイ。

しょうが無いので、私はペコ丸を引き離すと、ポーズを取りながら魔法を唱えた。


「え~と、愛? 素敵なワタシに変身」


私が投げやりに呪文を唱えた瞬間、カッと閃光が走った。

かなり棒読みで唱えたけど、魔法は上手く発動したようだ。

何だか光ったりうねったり、謎の現象が私の体を包み込んだ。


変身の時の光で眩んだ目が慣れてきた。

パッと体を見ると、変な衣装にコスプレ状態になっている。

どうやら変身したという事らしい。


「きたーーー!! これで勝てる! 勝てるペコ!!」


魔法少女になった私を見て熱狂するペコ丸。

何に勝つ気なんだ? その辺りの話は全く聞いて無いんだけど。

そう私が疑問に思っていると、視界の隅に蠢く黒い影が見えた。

影はどんどん立体的になり、最後には人型の「何か」になる。


「なにあれ?」


「キョーコ! あれこそボクらが倒すべき敵、ダークサイダーだペコ!!」


腕をぐるぐる回して解説するペコ丸。

妙にはしゃいでいてウザイ。

ペコ丸は変に高いテンションのまま、私に命令してきた。


「ダークサイダーは人々の夢を奪うペコ! キョーコ! みんなの夢を守るペコ!」


「夢なんて失えばいいじゃん」


「キョーーーコーーー!? あんた何言ってるペコ!?」


「大体、20才の私が魔法少女やる時点で夢を壊してんじゃないの?」


「細かい事は気にするなペコ! 立て! 立つんだキョーコ!!」


ペコ丸ウザイ。

だんだんとイライラしてきた私は、全てを終わらせるためにステッキを振りかぶった。

近付いてくる人型の影。その頭頂部に向かって、叫びながら全力でステッキを振り下ろす。




「折れろーーー!!」




ゴキン、と鈍い音がした。

人型の首が180度回転し、バタリと倒れる。

不随意な感じで手足が痙攣したかと思うと、灰のように何も残さず消えていった。


それと同時に折れたステッキの先端も地面に落ちた。

へし折れたステッキを見ていると、やり遂げた気持ちが沸々と湧いて来る。

なんだが清々しい気持ちになった私はペコ丸に満面の笑顔を向けた。


「やった! ブイ!」


「ブイじゃないペコ!? ステッキ! ステッキ折れてるペコ!」


「強度足んないよ、これ」


「もっと魔法的な力で倒すペコよ! ステッキはバールじゃないペコ!」


せっかく勝ったのに、ペコ丸はああでも無いこうでも無いと説教してきた。

注文の多い奴だなぁ。ペコ丸ウザイ。

初めて魔法少女になった私の感想は、ペコ丸ウザイだった。







私が魔法少女に変身してから3日経った。

ペコ丸は3日間、考える時間を与えてくれたのだ。

私がこれからも魔法少女になるかどうかを。


私は夕食のケチャップパスタをパクついている。

コストの割りに結構美味しい。

そんな私の前で、ペコ丸は最初から土下座だった。


「お願いしますペコ……! ボク何でもしますペコ……! だから、なにとぞ……!」


ダラダラと汗をかきながら土下座を続けるペコ丸。

私はそれを無感動に見下ろしながら、パスタをむしゃむしゃと食べていた。

正直、ペコ丸の相手をするより、パスタを食べる事の方が重要だ。

なので私はマイペースにパスタを食べ続けていた。


パスタを食べ終えた私は、フォークをお皿にカランと落とした。

その音にビクッと反応する土下座妖精ペコ丸。


実を言えば、答えはとっくに決めている。

私は土下座するペコ丸を粗大ゴミを見るような目で見つめながら、言った。


「別にいいよー」


「断られたら腹を切る……えっ!? 今、何て言ったペコ!?」


「だから、別に続けてもいいよ」


「マジっすかペコ!?」


予想してなかった幸運に出会ったかのように喜ぶペコ丸。

ペコ丸ウザイ。でもまあ、私は魔法少女を続ける気でいた。


「あれもらったしね。何だっけ? 夢の(しずく)?」


ダークサイダーとか言うやつの首の骨を粉砕した後、ペコ丸は私に宝石をくれた。

何でもダークサイダーを倒すと、彼らに奪われていた夢が結晶化するのだという。

それが、夢の(しずく)。キラキラと光る美しい輝石だった。

私が夢の(しずく)の事を話題に出すと、ペコ丸は妙に喜び出した。


「キョーコ! 遂に愛の心に目覚めてくれたペコね! 夢の雫はみんなの夢! 絶対にダークサイダーから取り返すペコ!」


「質屋に売ったら5万になったよ」


「キョーーーコーーー!? 売った!? 夢の雫を売ったペコ!? あれ皆の夢で出来てるペコよ!?」


「ペコ丸、ウザイ」




そんなこんなで。

様々な紆余曲折を経ながらも、見事ダークサイダーから皆の夢を取り戻す事に成功。

そして私こと皆口キョーコ(20才)は魔法少女になったのでした。おわり。


「キョーーーコーーー!? なんで終わった感じにしてるペコ!? まだ始まったばかりペコ!?」


ペコ丸、ウザイ。







次回予告


キョーコに迫る黒い影。

敵か味方か!? イケメンボーイが爽やかに参上!

一方ペコ丸は、経歴を詐称して猫カフェでバイトを始める。

頑張れペコ丸! 負けるなペコ丸! 光る明日が君を待っている!





ま○か・○ギカが元ネタだと思った?

残念! 作者は1話も見た事無いでしたー。

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