第九話 遺跡探検
「さて、次の任務が決まった」
宿場から戻り、宿で睡眠をとった俺達は国王からの手紙を受け取った。
『お主のおかげでこちらはてんてこ舞いしておるが、やっと片が付いた。最近図書館庫にて新たな隠し部屋が発見されて、司書や神官たちが検閲をしていると、一冊の奇妙な本を発見した。
その本は我々の知る文語体系では書かれておらず、内容の解読が困難になっている。だが、以前君が見せてくれた『英語』と呼ばれた文字で書かれた資料に文字が似ている。
同封した資料にその本の複製が入っているので解読してほしい』
「これがその本か……!?」
俺はその本を読んで驚愕した。その本は確かに英語で書かれていたが、二文字ずつで区切られていて文としての意味はない。ということは……
「プレイフェア暗号か……しかも見たところ数万文字もある。ん?こいつは平文のままだな」
『One book is described here.It waits for what decodes this character to appear I praying.(ここに一冊の本を記す。願わくば、この文字を解読するものが現れるのを待つ。)』
『Truth is not told....(真実は伝えられぬ……)』
『Go to ruins. Then, I will tell a character.(遺跡に向かえ。そこで文字を語ろう)』
「なるほど……なあ、ニルティ、この世界に聖域はいくつある?」
「えーと、確か5つよ。霊峰インテグラル山脈もそのうちの一つ」
「遺跡はあるか?」
「ええ、確か発掘調査が終わって一般開放されているはずだわ」
「そこに行くぞ!!」
「ここが最深部か……かなり広いな」
遺跡に到着した俺たちは遺跡の案内マップに従って最深部に向かった。神殿のように荘厳で、鮮やかな壁画が描かれている。
「ん?これは……」
俺は描かれている一つの壁画の前で止まった。鎧を着た兵隊が横一列に並んでいる絵だ。
「密集陣形か……」
「パンフレットによれば、ここの壁画はかつてこの世界で繁栄していた種族の戦闘体系を表しているようね」
左に行くほど装備や衣装に変化が見られる。しばらく進んで俺は足を止めた。
「こいつは……」
その壁画は詰襟の服を着て手に剣を持った兵隊が戦う様子を表していた。
「この壁画で終わりみたいね……」
俺は少し考えていた。この世界ではかつて今とは異なる別の種族が生息していたようだ。しかし、この歴史の進み方には少々疑問が残る。
たった少し、五つの遺跡を残すのみで、そのほかに証拠が一切残っていないというのは通常はありえない。
思考が出来る生き物は必ず痕跡を残すものだと俺は考えている。それに、もし完全に証拠を消し去ったとして、剣を用いた戦闘をする種族がこの程度の技術で消えるはずがない。
技術と軍事は密接に結びついているのだ。必ずここの遺跡には証拠が残っているはずだ。いや、残しているはずだ。
「ここで行き止まりなんだな?」
「ええ、マップにはそう書いてあるわ」
「ならばそのマップに追加の情報を書き加えなくてはな!!『風の精霊よ、無貫の壁を我の前に!!』」
俺は『貫通しない』という概念を精霊に伝達することで防壁魔法を改竄し、オリジナルの精霊魔法を発動した。
そのまま行き止まりの壁に向かって狙撃砲を防壁越しに発砲した。
書き溜めが少なくなってきた……