第三話 報奨金と仕事
1時間後、馬車は王都に着いた。石造りの城壁に覆われている城はとても大きかった。
馬車の上から見ると、城は三段構造になっている。
王都に入ってすぐの第一防壁から第二防壁の間が平民街というそうだ。人口の半分以上がここに住んで
いるそうだ。次に第二防壁と第三防壁の間が貴族街だそうだ。主に文官や武官が過ごしているらしい。
そして第三防壁より後ろが城域だそうだ。
謁見する際、狙撃砲を指輪に変換してしまおうかと考えたが、王女の願いでそのままにしている。
謁見の間に進む。壁際にずらりと座る貴族らしき者達。その後ろに控えているのは騎士のようだ。
「この度はよく我が娘を助けてくれた。感謝する」
「有り難うございます」
「アリスからそなたのある程度の事情は聞いておる。よって、この者に報奨金10000Gを贈る」
10000G・・・アリスの話から推測すると、10000B=100S=1Gの通貨レートで、
一食当り100Bで主食一つとおかず2品、ドリンクが一杯付くって話だから・・・食事だけに使用
したら9年分。日本円換算でレートを100B=700円だとして・・・七百万円。まあ、妥当だな。
金貨の詰まった布袋を受け取る。うーん。重い。
謁見が終了した後、俺はアリスに頼んで弓兵隊の練習場に来ていた。王様に頼まれて武装確認を
するためだ。練習場には鎧を着せられた土人形が横に五体並んでいる。
「これがお主の武器か。見たこともないのう」
隣でセーフティーを掛けた狙撃砲を触る王様。
「俺は異世界人ですからね、何もかもが違いますよ。では、行きます」
狙撃砲を構えて案山子に照準を合わせ、頭に一発。
ガン!!
発射された弾丸は鉄兜を貫通し、後ろにある城壁を破壊した。
案山子の頭と城壁は跡形もなくなった。
「・・・・・・・・・」
武器のお披露目の数日後、俺は王様と密談をしていた。
「すまんの」
「謝る必要はないです。こればかりはどうにもなりませんよ」
あの後、王様は俺を独立近衛騎士として雇ってくれる予定だったが、あの場に居合わせた貴族が、
「どこぞの馬の骨ともわからん奴を入れるのか!?」
と猛抗議。会議場に不穏な雰囲気が漂い始めたため、いざこざを防ぐために王様は俺を雇うのをやめた。
仕方なしの行動である。そして今後の俺の身の振り方を決めるため、密談を行なっていたのだった。
「さて、お主にはこの城を出てもらう事になった。それで、お主に頼みがある」
「・・・報酬をくれればやることはやるぞ」
「お主に世界を巡ってもらい、各地の情報を入手してほしいのだ。それと、各地の犯罪の証拠集めなど」
旅・・・か。良いな、それ。
「残念ながらこの儂には公的に自由に動かせる金が無い。財政が逼迫しておるのでな・・・無茶苦茶な願いかも知れんが、引き受けてくれんかの」
しばし黙考する。
「最初の仕事は?」
「王都を出て東の方にリディーという都市がある。ワイテール・ド・リディー伯爵がそこを統治しておるのだが、非合法の奴隷を買っているとの密告があっての。証拠がほしい。大貴族のために手がでん」
「ここじゃ奴隷は合法なのか?」
「うむ。ただしいくつかの誓約に縛られている。非合法はそれらの誓約がないため、何をしても良いのだ」
「つまり、俺がリディー伯爵領に潜入し、そこで情報を入手しろ。って事か」
「うむ。報酬は出来高制。各地のギルドを通じて送る。それで良いか?」
「情報はどういうふうに送ればいい?」
「鷹便があるからこの住所に送ってくれ。ここを経由して儂の手元に行くようになっておる」
「わかった」