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執事がラスボスな件  作者: 肩ぐるま


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第15話 パップス商会の嫁

パップス商会に嫁いだアマンダは、次第に、パップス商会の嫁という二つ名で有名になりつつあった。


家事ドールの料理スキルをジュウがLv100にまで引き上げていた為、同じ材料、同じ方法で作っても、アマンダが作ると格段に美味しくなる。アマンダは、そのスキルを活かして、店の商品に、『アマンダの手作り焼き菓子』を加えた。


この焼き菓子が美味しいと評判になり、バッブスが経営していたバン屋は、アマンダの焼き菓子店と名前を変え、すぐに行列が出来る店になった。

さらにその焼き菓子に貴族までが興味を持ち、アマンダは、ランドリアの街に住む貴族の屋敷に頻繁に呼ばれるようになった。

こうして、ひと月も経たずに、パップスの店の売り上げは数倍に伸びた。

さらに、行商の品目に焼き菓子を加えたことで、行商の売り上げも跳ね上がった。

焼き菓子は、嵩張らず、軽量な為に馬車に大量に積める上に、単価が高いからだ。


焼き菓子が評判になると、アマンダは、パンまで自分が焼くようになった。すると、パップスが焼いていたバンより、遥かに美味しいとこれも評判になり、店の売り上げがまた増えた。

パッブス自身もバン焼きの労働から解放されたことで、仕入れや営業に回る時間が増えた。


その夜、パップスは、その月の売り上げ帳簿を確認して目を剥くほど驚いていた。

「アマンダ」

彼は思わず大声で、愛する妻の名前を呼んだ。

キッチンで仕事をしていたらしいアマンダが、「どうしたの?大きな声を出して」と答えながらパップスの執務室に入って来た。

「こ、この売り上げを見てくれ」とアマンダに帳簿が差し出された。

「帳簿がどうかしたの?」と帳簿を受け取りながら小首を傾げるいつもの仕草に、パップスは、またグッときた。

「今月の売り上げが、先月の6倍だ。これは、みんなキミのお手柄だ」とパップスは叫んだ。

アマンダは、パップスの興奮に呆れながら、

「だって、焼き菓子1枚が、パン1個の値段で売れるのよ。それにバンを10個焼く間に、焼き菓子なら100枚焼けるんだから、それだけでも売り上げは何倍にもなるわ。それに、行商の馬車に積むのも、バンの10倍以上積めるから、行商の利益も数倍に跳ね上がるのは当たり前じゃない」

「それは、お前が作る焼き菓子が美味いと評判だからこそだ。お前は、こんなに美人なのに、その上、こんな特技を持っているなんて、俺はなんて運がいい男なんだ」

「何を言ってるのよ。褒めるなら美人というところを褒めてよ。特技を褒められても、ちっとも嬉しくないわよ」

「そう言うな。お前の作る焼き菓子のお陰で、最近は、俺もすっかり有名になった」

「よかったじゃないの。私も、鼻が高いわよ」

そんなツンデレのアマンダを抱き締めながら、パップスはダンスを踊るようにクルクルと回った。


パップスの行商は、元は馬車1台だったが、アマンダが、パップスに荷馬車を1台プレゼントしたので、今は2台に増えている。

1台目の馬車にはパップスと商会の手伝いの少女が乗り、2台目の馬車には、アマンダが冒険者ギルドで、護衛兼御者として雇ってきたというルキという女冒険者が乗っている。

このルキは、アキハの分身で、なおその上で変身している。

馬車が2台に増えたことと、ルキという腕利きの護衛がいることで、遠くの村への行商が出来るようになり、これによっても売り上げが数倍に伸びている。

アマンダの焼き菓子の味は、街で評判になっていたので、行商に持ち出しても飛ぶように売れた。

しかも、これまでは、行商に出る日は、パンを売る店は朝の数時間しか開けていられなかったが、今はアマンダが店にいるので、終日店を開けていられる。その間、焼き菓子とパンが売れ続けるので、売り上げは増える一方だった。


数カ月後、パップス商会はランドリアの街の商業ギルドの評議員の席を得ていた。

今では、店舗が3つになり、行商の馬車も5台に増えている。

もっとも、規模だけでいえば、とても評議員になれるような規模ではない。

まだまだ駆け出しの零細商人に過ぎないパップスに、そのような重席が与えられたのは、アマンダがつくる焼き菓子が領主の娘に気に入られ、領主御用達までになっているからだった。

そのため、パップス商会は、老舗商会の妬みを買ってしまい、ある時期までは、嫌がらせや妨害が後を絶たなかった。

その嫌がらせや妨害も、この街の領主であるランドリア伯爵家の豪華な馬車が、アマンダの焼き菓子店を訪れるようになってから、ピタリと止まった。

手を回したのはセバスだ。


アマンダとワストンを嫁がせた後、セバスは領主の居城を訪ねている。

セバスの固有スキルである降臨の効果で、領主のランドリア伯爵と伯爵家に仕える者達は、セバスこそがランドリアの真の支配者であることを何の抵抗もなく受け入れた。

建前としては、セバスは先代の伯爵から仕えている執事であると称すことにしている。

こうして、セバスは堂々と領主の居城で、領主以上の権力を振い始め、領主館の人間は、領主自身も含めて誰もそれを不思議に思わない状況が出来上がった。

そしてセバスは、パッブス商会を妨害をした者を、ときには衛兵を使って捕えて奴隷に落とし、ときにはクインキュバスに支配させているスラムの殺し屋に襲わせて殺したりして排除した。

そうした後に、伯爵家の娘の一人を操って、アマンダの焼き菓子のファンにさせ、定期的に伯爵家の馬車で、焼き菓子を買いにアマンダの店に行かせることにした。もちろん、そのときにはセバスも同行している。

こうして、セバスからの見えない庇護を受けたパップス商会は、順風満帆で大きくなりつつあった。

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