2.あの過去の別荘へ①
遅れました…
「お嬢様、おはようございます。」
シャッ、と軽快に音を立てて私の侍女であるメリアがカーテンを開けた。日差しはそれほど強くもなく、光は明るすぎない。朝の5時頃といったところか。
私はほんの少しの間ベッドから離れるのを渋る。が、メリアを待たせる訳にもいかないため結局は素早く起き上がった。「むくり」ではなく「しゅばっ」と。
困らせたくない、という理由を待たせたくない、という理由のお隣に添えておこうではないか。
「おはようございます」
「……。」
(…無視ですか。逆に笑えそうですね。)
ベッドから降りると、寝ている間に温まった素足が絨毯など敷かれていない床に触れて急激に冷まされていく。
…微塵も変化のない毎日が今日も始まる。
(今日も生きてるのですね。)
そう思わずにはいられなかった。両親の前でこんな弱音は吐けない。叱られるだけだろう。…せめて、思考は自由でありたかった。
「お嬢様、今日は何かご予定はございますか?」
メリアの声によって意識が思考に浸っていたところを現実に引き戻されてしまった。容赦無い、メリア。…さて、予定といったらもちろん、
(何も無いです。…けれど、どこかに行かなければいけません。)
何故今から予定を考えるのか?それはもちろん、家の中にいるのが苦痛でしかないからだ。私にとって、この上ない理由だ。…さあ、どこに行こうか。
(…別荘に行こう。…お母様も生きていて、幸せだった幼少期に住んでいた、特別な場所。久し振りに…行きたいですね。)
そう決意してから、行動は早かった。




