先輩、後輩
「本当に証拠は何も無いのか?」
「ああ、あいつしかいなかったが何一つ証拠はない」
二人の男がマジックミラー越しに一人の男を見ている。
「こんな面倒ごとどうする?」
「この前左遷された奴に任せればいいだろ」
「犯罪者を捕まえずに、落ちこぼれと組ませるのか?」
「おいやめとけ、証拠がない以上犯罪者じゃないんだからな」
二人の男は取調室の扉を開けて外に出るように言う。
「ソジュンくん、君は潔白だったようだ。すまなかったね、今後組む相手は後で挨拶に来る。それまでゆっくりしてくれ」
ソジュンと呼ばれた男は取調室から出ようとすると先程とは別のもう一人の男に進行を一瞬阻まれる。
「今回はうまくやったつもりか知らないが、次はないぞ」
ソジュンは両手を上げて肩をすくめる。
「やめてくださいよ。俺は何もしてないんですから」
進行を阻んでいた男は不満そうな顔をしながら道を開ける。
ソジュンと呼ばれた男は言われた通りしばらくソファに座って相方を待っている。
ここは対特異事象、通称トクジの本部である。
ここにいる現場捜査員は全てフリーの契約者である。
そのため、任務の状況次第ではトカゲの尻尾切りと言った冷酷な判断も下しやすい。
ソジュンが自動販売機で買ってきたアイスクリームを食べていると声がかかる。
「あなたが問題児のソジュンですね!」
ソジュンが目を向けるとそこには背が低く髪を団子に二つ結んだ女性が立っていた。
「あなたのお目付役を頼まれましたハク・メイリンです。メイリンと呼んでください」
「メイリン、、、先輩?は何年目なんですか。俺はまだ半年とかの新人ですけど」
「私はもともと別の惑星で警察をやっていましたがこちらの方が多くの役に立てるのでこちらに来たエリートです」
「フリーじゃないってことですか?」
「正社員です!」
メイリンはドヤ顔で答える。
ソジュンはその言葉に疑問を持つ、
(現場捜査員なのにフリーの契約じゃない?)
「とにかく!さっそく調査しにいきますよ」
メイリンはソジュンを引っ張り立ち上がらせるとすぐに歩き始める。
「調査ってどこに行くんですか」
「惑星コイルです。気になることがありますので」
そう言って足早に立ち去って行く。
あっけに取られたソジュンは一人呟く。
「アイスクリーム食ってんだけど」




