惑星コイル1
旅行の当選通知から三日後に一同は船で出発し、次の日にはターミナルに着いていた。
「ついたーーーーーっス!」
ナタリアとオリヴィアとテュールがはしゃぎながら船を降りる。
海も森も都市もある。この星は観光に特化して開拓されているため遊泳、キャンプ、登山、ショッピングなんでもできる。
マッドとマーガレットもその後ろを歩きながら予定の確認をしている。
ジンは電子眼鏡をかけてメモシステムを起動する。
降りる前に全員の腕時計のリンクは済ませていたので、各々はすでに自由に歩き回っている。
「ジンちゃん、今は旅行中よ」
「ピース、この前の聞いてたのか?」
ピースは肩をすくめながら答える。
「わざとじゃないのよお、あれはマーガレットちゃんが可哀想だったわよ。私も初めて知ったわ今までデートしてるところなんて見たことなかったからどうなっているのか気になっていたのよ」
「けど仕事があるから仕方ないだろ」
ピースはジンの手を握り微笑む。
「初めて会った時ほどの荒々しさは感じなくなったけど、それは考え方や生き方まで変わるようなそこまでの変化ではないと思うの、マーガレットちゃんが求めているものはよくわかるでしょう?だったら応えてあげないとダメよお」
二人だけで会話をしているのを遠目で見ていたマーガレットは愚痴をこぼす。
「ピースとは手を繋ぐんですね。本当の好みはああいう感じなのかしら、、、」
さっきまではしゃいでいたナタリアはギョッとした顔をする。
オリヴィアとテュールは何も分からないのかマーガレットに質問する。
「ジンの好みってなんですの?」
「好きな食べ物のこと?」
ナタリアは慌てて会話に入り込む。
「あはは、あれっスよね?ジンさんの服を見て、ああいう服が好みなのかなって話っスよね」
「兄様の服はいつも通りですわよ?」
「いやいや、改めて休暇中もあの服だからそう感じただけっスよ。ねえ?マーガレット」
ナタリアにフォローをされていることに気づいたのかマーガレットも話を合わせる。
「そ、そうです。分かりづらい言い方でしたね」
「確かに、ジンっていつもあの服着てる気がするよね。僕と買い物行った時も服は全然買わないし」
そんな話をしながら宿泊ホテルに向かう。
観光惑星なだけあってホテルの設備もハイクオリティなものが揃っている。
ジンは部屋に荷物を置いて一息つく。
するとマーガレットも部屋に入ってくる。
「あ?マーガレット、なんでこの部屋に」
「私の部屋ですけど」
「いや、生体認証で開けるから登録されてないと、、、君も開けれたから登録されてるのか」
マーガレットは気まずそうに荷物を持ったまま後ずさる。
「テュールと部屋を交換してきます」
「荷物は運んで疲れるだけだやめとけよ。さっきも言った通り生体認証で部屋に入れるんだ。テュールの部屋はテュールの身体でしか入れない」
諦めたようにため息をついて荷物を置く。
「なんで私たちなんでしょうね」
「付き合ってるのが知られてるんだよ。今回の送り主にな」
「またその話ですか」
「今のは君から始めただろ」
しばらく沈黙が続く、マーガレットが荷物を開けて黙々と広げている。
「悪かった」
ジンは謝罪するが、その言葉にマーガレットの手の動きは力が入る。
「何回目ですか。そうやって謝るの、、、」
ジンは何も言えずに黙ってしまう。
「はっきり言っときますけど、この旅行中にあなたが何をしてももう知りません。私は私で楽しむので」
その言葉に少し胸が痛くなるが、今まで彼女にしてきたことなのだろうとジンは感じた。
特に会話することもなく淡々と夕食の時間まで荷物を整理していると、ドアがノックされる。
マーガレットが出ようとするとジンが肩に手を置き制止した。
「一応、俺が先に出る」
「、、、好きにしてください」
マーガレットは呆れ顔で譲る。
扉を開けるとそこにはピースが立っていた。
「ジンちゃん、そろそろ夕飯の時間よ。コース料理が出るらしいわ」
「そうか、じゃあ十分後に食堂前で」
「もう何言ってるの、待つから早く準備してちょうだい」
二つ返事でジンは部屋に戻り必要なものだけ手に取りマーガレットと外に出る。
「あら、同じ部屋なの?」
ピースの疑問にジンは答える。
「ああ、手違いか何か分からないが同じ部屋になっちまってな」
ジンは軽く話しながらピースの横に立つ。
マーガレットはその様子を後ろから見ながらボソッと呟く。
「、、、私のとなりじゃないんですね」




