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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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終わらしたものたち

ジンが目を覚ますとベッドの上だった。

見覚えのある天井だ。

バルトリカの医務室に横になっている。

肉体は神骸のおかげで回復している。起き上がろうとすると貧血のようにふらつく。

アルガスとの戦いでエネルギーを使い切ったのだ。それが回復していないということはそこまで日にちは経っていないことが分かる。

横のテーブルにある資料のようなものを取ろうと手を伸ばしたときにそれ以上伸びないことに気づく、手首に手錠がつけられている。

(壊しちまうと後々面倒なことになりそうだな)

そんなことを考えていると扉の向こうから騒がしい声が聞こえてくる。

「だから言ったじゃないですか!早く外してあげてくださいアリア」

「馴れ馴れしく名前を呼ぶな!、、、ちょっと!アル君が近くいないとはいえ少しは立場を考えてよマーガレット」

目をやると開いた扉から二人の女性が顔を出す。片方はジンも良く知っているマーガレットだがもう一人は知らない。マーガレットは目が合うやいなやすぐに引っ込んでどこかに行ってしまう。

アリアは呆れた顔をしながらジンに向きなおり冷静に告げる。

「貴様への罪は簡単に言えば帳消しだ。暴行、脱獄、いくつもあるが全て帳消しだ。今回のアルガス・ロードの殺害に関してだが、貴様のところのピースというアンドロイドが全てを記録していた。仲間に感謝することだな」

そう言い手錠を外す。

「入ってきていいぞ」

アリアの声に反応するかのようにナタリアとテュールが勢いよく入ってくる。その後ろからピースが顔を出す。

「ジンさん!再開のハグっス!」

「おかえりだねジン、いやこの場合ただいまでもあるのか?僕の方が先に消えてたけど僕の方が先に生き返ってるから、、、ややこしいなあ、とにかく!僕もハグ!」

二人が抱き着いてくる。それによりジンは体が痛みうめき声をあげる。

「二人とも、ジンちゃんが痛がってるわよお」

ピースの言葉に二人はバッと離れる。

「みんな色々迷惑かけたな。すまなかった」

その言葉を聞いて三人は笑う。

それを見てジンは改めて馬鹿なことを言ったと思った。しばらく周りを見渡してからオリヴィアとマッドを見てないことに気づく、

「オリヴィアはさっきまで居たよ。多分船のどかかにいるんじゃないかな」

「マッドは見てないっスね、まあそのうち戻ってくるっスよ」

二人の答えで納得したのかもうしばらく横になると言い、ジンは再び眠ることにした。

三人は船の中の掃除と次に行く星をしなければならないと話し合い各々動き始めた。

その頃、死闘を繰り広げた建物の影には痩せ細った男が足を引き摺りながら歩いていた。

「あり得ない、、、この私が、、、全ての運命を仕組んだのだぞ、、、まだだ、、、まだ終わらせないぞ、、、イレギュラーはあの被験体だけでいい、、、くそ、、、旧友め、、、」

いまだ捨てられないプライドを胸に歩く男の前にある男が立つ。

「古代語は理解できるか?まあ、できなくても構わないが」

ボロ雑巾のようなアルガスが顔を上げるとそこには髪をなびかせながら金環を宿した翡翠の目を持つ男が立っていた。

「貴様は、、、エタルの小僧、、、」

マッドが近づこうとすると声が響く。

「何してる!動くな!」

この方向に目をやるとスタリオンが立っていた。

しばらくお互いを見つめあったのちスタリオンがあることに気づく、

「お前、、、斉天大聖?、、、ゴクウか!」

古代語でスタリオンが話し始める。

その言葉にマッドが目を丸くする。

スタリオンはすぐにサングラスをずらし、目の色をマッドと同じ翡翠にし金環を輝かせる。

「、、、ヘラクレス?」

二人は腕をぶつけ合い再開を喜びスタリオンは嬉しそうに言葉をかける。

「何百年ぶりだよお前!てかなんだその見た目」

「定期的に姿を変えないと色々と不都合だろ?今はこれだ。にしてもお前共通語をよくそんな流暢に話せるな」

「これでも今は銀河警察に身を置いてるんだ。それくらいは学ばないとな、そもそもお前はだらだらしすぎだ。せっかくの人間の時代なんだもう少し学ぶ努力をしろ」

話が盛り上がっているところでアルガスが悲鳴に近い声で割り込む。

「貴様ら!グダグダと何を話している!力の大半は失ったが、貴様らのような弱小のエタルの小僧など敵では、、、」

哀れみの目を向けながらマッドが話しかける。

「古代語も話せないのに年上ぶるな、、、面倒だな、少しの間だけ力を使うか、、、あー、あっあっ、、、これでどうだ?ちゃんと理解できる言語か?」

「理解できてるみたいだぜ」

二人の言葉にアルガスは吠えるが二人は一切動じない。

「言葉を合わせたところで何になる!貴様らエタル族にはほとほと呆れたぞ!高度な力と文明を持っていながら神として新たにこの世界を良くしようとしない欠陥種族が!」

「なあゴクウ、こいつの体の神骸はどこ行ったんだ?俺が見た感じでは眼にはまだ残っているように見えるが、、、」

「おそらく宇宙に再び散らばったんだろう、先に言っとく、俺は前までと一緒で神骸を追うのは面倒だからしないぞ」

その言葉にスタリオンは驚いたような顔を見せる。

「やっぱこいつまだ眼の中に神骸残ってるよな!モイラの眼を手に入れておきながらいまだに理解できてないのか俺たちが何者か」

二人の会話にアルガスは戸惑う。

「何を言っている?何者なんだ貴様らは」

「なんで旧世界は滅んだと思う?」

突然の質問にアルガスは答えられない。

口を開こうとするとマッドが制止する。

「いや、答えなくていい。別にお前の言葉なんて必要ない。今生きる若いエタルの民はもう知らないと思うが、さっきお前は神の力がありながらとかなんとか言ってたな、、、俺たちは元々その神だ。そのあり方に辟易したから壊すことにした。人に希望を見出したから、可能性を見たからだ。つまりは逆なんだ、神は自身のあり方を間違ってると考え神であることをやめ人に託した。それを人間のお前が神に戻るというのならやめておけ歴史から学べる確かな間違いだ」

「ふざけるな、出鱈目を抜かすな!私は二千年を生きた神だぞ!」

「分かったぞヘラクレス、こいつのモイラの眼はもう機能してない。だから馬鹿みたいに理解が遅いんだ」

マッドがやれやれと肩をすくめると代わりにスタリオンはアルガスに向かって言い放つ、

「あのなあ、お前は神になれなかったろ?それに二千年?はっ、笑わせてくれるぜ。俺たちなんてもう万単位で生きてるんだぜ?」

アルガスはジンに負けただけでなく、下に見ていたエタル族の二人の真実を知り憎しみが増大する。

彼の体にある神骸は機能していないがエネルギー源としてはまだ働くようだ。

残りのエネルギーを全て集約し一撃を繰り出そうとするが、その一撃もスタリオンに片手で受け止められてしまう。

「お前なあ、旧世界を終わらした五柱のうち二柱が目の前にいるんだぞ?勝てないことくらい分かるだろ。それに、、、ちょっと悲しいなあ、ヘラクレスって言えば昔なら誰も挑んでこないほど名を轟かしてたのになあ、、、」

「完全に人の時代ってことさ。良いことだ」

アルガスは脱力して項垂れる。

もう何をするにも力が残っていない。

「私をどうする?殺すか?」

その質問にマッドが答える。

「うん?、、、あー、あの力もある意味人の可能性だからなあ。神にはなれなかったがあの質量の自爆、うまくいっていれば俺を殺すことはできてたからなあ」

「しかし、殺すのは俺たちの主義に反するだろ?」

「まあな、、、あっ、そういえば知ってたか?神骸に接続した人間の肉体って神骸によって修復されるってこと」

スタリオンは呆れた顔をしながら答える。

「、、、お前と違って銀河警察に入ってまで追ってるんだ。そんなことくらい知ってる」

「俺びっくりしてテュールにエタルの血が流れてるのかと思ったぜ、まあ厳密には俺たちと同じ血は流れてるかもしれないけど」

アルガスのことなどどうでもいいように二人は話し始める。我慢の限界なのかしゃがれた声で叫ぶ。

「処罰を決めろ!はや、、、ぐぐぐ」

スタリオンが拘束具を着ける。拘束具から鎮静剤が注入され、アルガスはすぐに眠る。完全に人に戻った証なのだろう。

「まっ、こいつの技術は確かなものがある。銀河警察に突き出して後は評議会が決めるだろ」

スタリオンはアルガスを担ぐ、振り返りながら声をかける。

「そういえばジンのやつ、レッドアームの選司になったらしいな」

その言葉に少し空気がヒリつく、マッドは軽く睨みながら答える。

「あいつはもう俺の仲間だ。それにあいつが選司にならなければ全員が死んでいた。ジンを殺すつもりなら旧友とはいえ容赦しないぞヘラクレス」

しばらく睨み合った後にスタリオンが笑う。

「んな怒るなって、レッドアー、、、いや、ヘパイストスが選んだんだろ?だったら俺も認めざるおえない」

その返答にマッドは緊張を解く。

「懐かしいな、ロキは元気にしてるのか?」

「あいつのことは誰も知らねえよ。ジンと後、テュールの件については評議会の方に行ってスサノオに話しつけとく、話してたら久しぶりに集まりたくなったな『旧世界を終わらせ同窓会』でも開くか?」

その言葉にマッドは少し笑い答える。

「ジンも呼んで五人でするつもりか?」

「ちょっと似てるだろあいつに。馬鹿みたいに悩むところとか」

そう言いながら手を振りスタリオンはその場を離れる。

マッドも名残惜しかったが宇宙船に戻ることにした。

その時の彼の顔は少し晴れやかだった。

人を導く神はいない、そんな世界を作ろうと旧世界を壊したのだ。

今回の件で力を使えば多少は早く解決しただろうがそれでは旧世界を終わらした意味がない。彼らは人の力で解決して欲しかったのだ。

人として人共に歩むことを選んだ今を生きる神々は確かにその責任を果たした。

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