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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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レッドアーム

世界は広いみたいだ。

ベンチで見てる目の前の景色ですら宇宙の中の一つの惑星の中の一つの国の中の一つの町の中の一つの風景に過ぎない。

一千年生きても知らない路地裏がある。

一千年生きても知らない人がいる。

一千年生きても守れなかった約束がある。

一千年生きても見れない景色がある。

一千年生きてもできなかったことがある。

夢、恋人、家族、守る、その全てが俺はできなかった。夢は諦めた、恋人からは逃げた、家族は怖くて想うには遅過ぎた、守ることは弱かったからできなかった。

自分の一千年は無駄だったのだろうか、なぜ生まれたのだろうか、俺が生まれない方が死なない命はあったはずだ、いやどっちにしろアルガスが殺していたのか。しかし、ひとつ生まれた生命が多くを殺すのは足し引きの採算がつかない。

そんなことを考えながらぼおっと眺める。

ベンチから見える風景は知らない町だった。

短いが歩んできた人生は一千年よりも濃い時間だった。

「満足は、、、してないな」

独り言のように呟くと後ろから声が掛かる。

「満足してないならどうする」

振り返るとそこにはレッドアームが立っていた。

「本当に、、、あの世なんだな」

ベンチの横にレッドアームが座る。

「見てたぞ色々とな、俺様の口調なんざ真似ずに生きろよバカだなあ」

乾いた声で笑う、周囲に静かに響き渡る。

「あなたみたいに強くなりたかった。そしたら全員救えてたかもしれない」

レッドアームは俺の横で棒アイスを食べている。

話を聞いているのかと思いながら話す。

「結局何者にもなれなかった、俺はただの人殺しで終わる」

彼はつまらなさそうに食べ切ったアイスの棒を眺めている。

「そんな消したいのか?今のお前を作っているのはその過去だ。そして、仲間がついてきたのは今のお前だろ」

「それでも人殺しのまま死ぬよりマシだ。俺にあの過去がなければマーガレットと、、、」

「バカか、あってもなくても付き合えたぜ、お前が逃げただけだ」

その言葉にベンチで項垂れる。

死にたくないなあ、俺は後悔ばかりの人生だった。

少しくらいは、、、それは贅沢な話か。

「お前はいつ俺の真似をやめる」

「えっ?」

「口調を真似て考え方まで参考にして、、、お前はお前だろ?ジン」

ジンと呼ばれたのは初めてだった。やはりこのレッドアームは俺の知っている彼ではないのだろう。

「お前は誰だ」

「俺様か?俺様はレッドアームだ」

「、、、誰だ」

「まあバレるよな、、、レッドアームであることは変わらないんだがな。厳密には神骸としてのレッドアームだ、と言っても旧世界で生きた記憶と一千年レッドアームを名乗って義賊として生きた男の記憶があるからある意味ではお前の知ってるレッドアームでもある」

なぜ話せてるんだ?これは妄想なのか?

「全くおかしな話だよな。旧世界じゃただの鍛治屋で次はコソ泥の農家が腕を盗んで銀河を股にかける海賊だ。お前は知らないだろうがアイツが腕を盗んだ時のアルガスの怒りようといった、とんでもなかったんだぞ」

「なんでアルガスがそんなに怒るんだ?数ある内の一つの神骸だろ?」

レッドアームは笑ってベンチから立ち上がるいつの間にか迎えた夕日を背にして振り返る。

「その理由はお前だよジン、、、ジン・レッドアーム」

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