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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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神の形は

テュールが下についてエレベーターの扉が開くとそこには千以上の警備ロボットが転がっていた。

ピースは汗ひとつかかずに佇んでおり、横では服だけボロボロのマッドが座り込んでいる。

「つか、れた、、、テュール!?」

マッドは驚いたような声を上げる。

「おかえりテュールちゃん」

生命反応を見てテュールが生き返ったことは把握していたのだろう。マッドと違い、ピースは驚きもせず答える。

「ただいま、ねえ、汗かかないの?ちょっとズルい」

「かくわよお、けど戦闘中はオフにしてるの、邪魔だし」

ピースの返答が終わるや否やマッドがテュールをナタリアごと抱きしめて持ち上げる。

「やった!やった!テュールが、帰って、きた!」

ピースがマーガレットを担ぎ歩く、オリヴィアは頭を抱えている。

「私の家族は、、、死んでる?、、、ジンはどこ?、、、お兄様は偽物?」

テュールは指を刺しながら質問する。

「あれは?」

「さっきからあの調子なのよお」

「多分、アルガスの記憶改竄が解けたんスよ」

テュールに担がれていたナタリアが答える。

横を向いてナタリアの顔を見ながら嬉しそうにテュールが反応する。

「起きたんだナタリア」

「引き続き担いでおいて欲しいっス、後マッド!揺らされると折れた腕に響いて痛いっス」

「ごめん、ナタリー」

「ロード家にいる全員がアルガスに操られていたらしい、オリヴィアへの拷問も家族を使ってやってたんだって、アルガスは当たり前だけど兄じゃないし」

「なんで知ってんスか?あの時はまだ、、、」

得意そうな顔でテュールは話す。

「一応僕も長い時間賢い兄と一緒にいたから色々と教えてもらったりはしてるんだよ」

「その話はあとにしましょう。ちょっと危ないかもしれないわあ」

ピースが話を遮りマーガレットを担いでいない方の手でエレベーターを指さす。

エレベーターにはオリヴィアがフラフラと近づいている。

「待ってよオリヴィア!何するつもり」

振り返るオリヴィアの顔はやつれている。三日は寝ていないのかと思うほど顔色が悪い。かすれた声で答える。

「ジンを、、、ジンに会いに行かないと、、、私の、、、お兄様」

「何言ってんのさ、ジンの遺体は僕が後で回収しに行くから今は、、、」

「遺体なんて言わないでくださいまし!テュール!」

「二人ともストップっス!」

ナタリアが二人の会話を遮る。

小声でピースに囁く、

「ピース、オリヴィアがあの状態になったのはいつっスか?」

ピースは記録(ログ)を読み直しすぐに答える。

「約十分前ねえ」

「テュールがあいつを殺したのは何分前位っスか?」

テュールは一々計測していないので具体的に答えられずエレベーターが動き始める少し前としか答えられないがそれを聞いたピースが代わりに答える。

「五分前ね、、、ナタリアちゃんまさか」

「殺す前に洗脳を解除してるっス、最後に何かやろうと、、、」

ナタリアが言い終わる前に建物のはるか上の方で大きな音がする。

全員が上を見上げる。

そこには遠近感覚が狂うほど大きく歪に長くなった化け物がいた。

「あれは腐ったヘビかな?それともドラゴン?けど人の顔にダンゴムシみたいないっぱいの足もあるしな、、、なんて呼ぼ」

「そんなこと言ってる場合じゃないっス」

「でかい、怪物、まずい」

「スキャンしたわあ、間違いなくアルガスよお」

「ジンはどこにいますの?」

オリヴィアはそのことだけに執着しているようだ。

見かねたマッドがオリヴィア担いでバルトリカに向かう。

「ピース、先導、お願い」

「分かったわあ」

テュールは担いでいるナタリアと会話しながら移動する。

「一応、仮想ブラックホールで肉体のかけらも残さいと思ったんだけどな」

「その想定は正しいっス、おそらくは吸い込み消滅するキャパを大幅に上回るようにしたんだと思うっス」

「取り込んだ神骸を固有の能力ではなく、、、」

ナタリアが肩に担がれながら顔を縦に振る。揺れているため降っているかどうかはいまいちわからない。

「そうっス、一つ一つを莫大なエネルギー源として解放したんスよ」

「けど、そんなことしたら肉体が、、、だから自身の体を耐えれるように作り変えた?、、、そういう神骸を持ってても不思議じゃないよね」

「持ってたとしたらなんで今まで使わなかったんスかね。自身の肉体のキャパを上げれるなんて使わない手はないと思うっスけど」

テュールはその疑問の答えを知っている。

「多分、嫌だったんだよ。自分の体が異形の化け物になるのが、、、アルガスにとってそうなってしまうのは、神様というよりは悪魔だったんだ」

テュールの言葉の意味を真に理解することは無理だとナタリアは思った。彼女から見ればアルガスはどこまでも手段を選ばない男にしか見えなかったからだ。

「あの体、、、まだ大きくなってるっス」

テュールが走りながらチラッと上を見るとアルガスの体は確かに大きくなっていた。見ている間も大きくなり続けている。

「アイツがどんな攻撃してくるか知らないっスけど、先に言っとくっス、ダイマナイトになっても絶対に防げないしズラせないっス」

「まずいね、アレを止めれる召喚物は二個しか見つけれてないし、二個とも使用したら世界概念にキズがつく」

「ピースも無理っス、マッドも多分無理っスよね」

「オリヴィアは以ての外、マーガレットは気絶してるし、、、あれ?僕たち詰んでる?」

走りながら呑気に話す、それを聞いて黙って聞いていたマッドもピースも笑い出す。

オリヴィアはマッドの腕の中でさらに暴れる。

「なんで、、、なんで皆さん笑っていられますの!私たち、、、私たち死にますのよ!?」

バルトリカについたものの船の横で五人は座り込む。

笑い声でマーガレットの目が覚める。

「何を、、、笑ってるんですか?」

フラフラなもののピースの応急処置と鎮痛剤でだいぶマシにはなっているようだ。

「マーガレット!私たち今から死にますの!急いで出ないと、、、」

テュールはオリヴィアの肩に手を置いて落ち着かせる。

「オリヴィア、、、アルガスはどっちにしろ自滅する。アレはただの自爆による足掻きに過ぎないんだよ。けどどうしようもない、アレはこの星を確実に吹き飛ばす、下手したら横の銀河系も丸ごと吹き飛ばすはずさ。だから、、、」

テュールの手を跳ね除けてオリヴィアは振り返る。

その顔は鼻水を垂らし大泣きしている。

「だから!諦めるのですか?、、、なぜ、、、そんな簡単に、、、私はまだまだ生きたいですわ、、、生きて償いたいですわ、、、」

オリヴィアが座り込んで泣く、その横にナタリアが勢いよくあぐらをかいて座る。

「アタシは満足っス、独りぼっちからローランド先生に拾ってもらえて、一度は絶縁した親友と死んだ後に仲直りできて、、、こんな旅したことなかったっス、、、アタシだってもっとみんなと旅がしたいっスけどね」

ナタリアはニカッと歯を見せながら笑う。

マッドも横に大の字になる。

「人生には、終わり、ある、けど、思い出には、終わり、ない、エタルの民は、多くの、運命を、受け入れた、後悔は、ない」

テュールは船によりかかる。

「みんな辞世の句でも作るつもり?まあ、最後くらいそういうのも悪くないよね、、、僕は一回死んで生き返ってる。もう一回死ぬのなんてどうだっていいさ。相手がいるから「自分」がある。死ぬから「生きる」があるんだ。うーんなんかぽいこと言えたかな?とりあえず楽しかったよ。僕の人生は生まれた時からずっと絶頂期みたいだった。じゃあ、次はピースね」

ピースはいきなり振られてもニコニコと微笑んでいる。

「私は話すまでもないわあ、本来なら起動されないまま終わることだってあり得たのに今という時間を歩んでいるし、何よりも感情を得れたことが嬉しいわ、あなた達と一緒に過ごしているだけで楽しいのだもの」

オリヴィアは耐えきれずに叫ぶ、

「私を!!私を責めてください!貴方がたを騙してここまで連れてきて、全部を台無しにした私を、、、私のせいでジンも、、、貴方がたも、、、」

「そんなことはありませんし、あなたのせいでもありませんよ」

マーガレットはオリヴィアを諭す。

マーガレットはボロボロの体を少しずつ動かしながら船を背もたれにして座る。

「さて、、、まずは、私は一族の仇を討てて満足です。ジンに謝らなかったのは、、、後悔してます。私は今でも彼を愛してますから、、、次にオリヴィア、昔ジンが船であなたを責めた時がありましたよね?あの時のことについて少し前にジンがあなた以外を集めて話をしました。あなたが正気か洗脳されているのか分からないが私たちは騙されていると、、、」

「ジンが?」

「はい、そして彼は続けて言いました。けど、俺はあいつを責めたくないしあいつを傷つけない、と」

オリヴィアは鼻水を啜りながら話を聞く。

「あいつが自分を苦しめながら俺たちは騙すなら、俺たちでその大本に会ってその苦しみから解放してやる。仲間ってのはそういうものだと、、、ちなみに私が完全に惚れたのはこの時です」

マーガレットは茶化すように最後の部分を言うとオリヴィアは目を丸くした。

オリヴィアはその言葉にぷっと吹き出す。

少し気分が軽くなったのか落ち着いて話す。

「ふふ、なんですのそれ、、、ふう、、、それでも私はもっと貴方がたと旅をしたかったですわ。そして貴方がたが本当の家族であって欲しかったですわ」

「その場合は僕は兄?」

「それはあり得ませんわ」

その場にいる皆が笑う。

人生の最後にしてはあまりにも場違いな笑顔だろう。

しかし、彼らは満足いく人生を歩んだのである。

六人が空を見上げて最後の青を見届ける。

空は閃光に染められる。

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