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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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また来世で

「そろそろ時間だな」

アルマは手を休めて何かを察したように上を見ながら口にする。

「僕は力を使いこなせるようになった?」

「さあな」

「えっ、この時間は何だったのさ!」

アルマはため息をつきながら返答する。

「あのなあ、俺そのものをお前に教えるのは不可能なんだよ」

その言葉を聞いてテュールはますます困惑する。

アルマは心底面倒そうな顔をしてテュールのデコに小さな粒のような石を弾く、軽い音ともにテュールが頭を抑える。

「察しが悪いな。俺はお前に全てを注ぎ込んで消えるんだ。お前は俺の力に耐えれる精神と体を学べばいい。つまりは器として完成すれば後はなるようになる、はずだ」

「はずって、うまく行かなかったらどうすればいいの」

「その時はその時だ。そもそも、アンカーを介して復活してお前の肉体を蘇生するなんてのは奇跡に等しいんだぞ。けど絶対にできる。だから奇跡の後に起こることなんてのはその時考えろ」

アルマはテュールの腕を掴む。

その腕は力強く何よりも頼もしく感じた。

「つまんないこと考えんな。これから頼りになるのはお前自身だ」

何もかも見透かしたようにアルマが説教する。

「それ、最後の言葉」

「、、、時間がないんだ、真面目にやるぞ」

「ちょっと待ってよ。最後ならもっとちゃんと話してよ」

テュールはアルマの腕を振り払う。

普段ならアルマも怒っていただろう、しかし死を目前にして少し穏やかになっているのかやれやれと椅子を召喚して座る。

「何が知りたい」

「君の全てだよ。最後なんだろ」

「それはこれから全部お前に託すだろ」

「そうじゃない、君が僕を選んだ理由を知りたい」

「言ったろ、復活するための道筋はこれしかなかった。思い描いた筋書きとは違うが仕方ないって話だ」

「本当に、それだけ?」

テュールがアルマをまっすぐと見つめる。

こうなったら話さないわけにはいかないだろう。

「お前って本当に変なところで頑固だよな、、、なあ、不出来な弟を持つと兄はどうなると思う?」

「恥ずかしいとか?もしかして僕のこと恥ずかしいの?、、、女の子の服着たりするから?」

アルマは何度目か分からないため息をつく。

「そんな個人的な趣味趣向で恥ずかしいと思うかよ。てか別に恥ずかしとは思ってねえよ。心配なんだよ俺は」

アルマはテュールを弟のように思っていたことを明かす。

「僕の肉体の主導権を奪わなかったのは」

「弟が懸命に生きてんだ。兄である俺が邪魔しちゃ駄目だろ。それにお前にはジンとかいう兄のような男もいたしな」

「もしかして、嫉妬してる?」

「バカ言ってんな。お前を一番近くで見てお前を一番成長させてやれたのは俺だ」

その心の内を聞くとテュールは複雑な気持ちになる。

「だから言いたくなかったんだよ」

「えっ」

「喋んなくても分かる、俺は兄だからな。こんなこと話しちまうと俺の消滅を受け入れなくなるだろ」

テュールは手を体の前で動かしながら焦ったように声を出す。

「いや別に、、、そんなことは」

話しながら自分の頬を伝う涙に気づく。

「家族との別れは初めての経験か?俺は置いてっちまうほうだからそっちの気持ちは分からないが、、、弟が泣いてるのを見るのは寂しいな」

アルマは顔を背ける。背中を伸ばしながら上を見上げて話す。

「なあに気にすんな。俺は元々神骸に生まれた人格だ。出自が不明ならどうなるか分からない来世ってやつにも期待していいだろ?」

そんな慰めでは、テュールの涙は止まらない。

「、、、アルマ、本当は自分の分のリソースを使い切ったって嘘なんだろ。一緒に復活できるんでしょ?」

「テュール」

その声色は少し厳しかった。

「俺たちが二人で生き返ればまた中途半端な状態になっちまう。それだとあのクソ野郎に勝てる確率が零になる」

「でも」

「最後だテュール、もう行け。まだ俺以外の家族は間に合う」

テュールの腕を無理やり掴みアンカーを起動させる。

テュールは瞬時に消え、一人真っ白い世界でアルマは椅子に座りなおす。

「ふぅ、長かったなあ、本当に頑固なやつだ」

もう少し彼と一緒に居たかった、それがアルマの本音だ。生きていたい、傷つきたくない、そんな気持ちじゃなかった。アルマにとっても初めての家族、少しでも長く側にいて、少しでも長く笑い合いたかった。しかし、時間は残酷にもその針を刻む。

足の先から徐々に崩れ始める。

「勝てよ、自慢の弟」

一人呟く男の声はもう誰も聞いていない。

世界の狭間で男は塵になる。

全てが消え去った後、一粒の涙が落ちる。

完全に消滅した瞬間、テュールは暗闇で一つの縄を掴みながら意識が覚める。

「、、、これがアンカー?」

頭の中はこれまでに無いほどスッキリとしている。

アルマの力を受け止めることができたのだろうか。

それを知るものは二人しかいない。

「アルマ、、、」

しばらく項垂れていたが最後の言葉を思い出す。これ以上家族を失いたく無いのなら立ち上がらなくてはならない。テュールは前を向き決意する。

出会ってからの時間にしたらほんのわずかだったかも知れないが男は兄としての全てをやり遂げたのだろう。

「僕は行くよ」

縄を掴む手に力を入れる。

縄に引っ張られ先に見える現実に引き摺り出される。

「来世で会おうね、兄ちゃん」

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