打倒!Who!3
目の前の状況を先に処理したのはナタリアだった。
しかし、激怒し攻撃を仕掛けるわけにもいかず煮えたぎるような気持ちをこらえながら言葉を発する。
「なんで、こんな無意味なことをするんスか?わざわざアタシたちの目の前で、、、」
アルガスはジンを見つめながら二人に見向きもせず答える。
「旧友が発した『家族』というものが非常に不愉快だったのでな、、、それと全てへの仕返しと考えてくれればいい」
「すべて?」
「ああすべてだ、正義を掲げいつまでたっても考え方をアップデートをしないサイント族、老いぼれローランドの考えを受け継いだ欠陥科学者どもとブリキの発明品、ロードの家に生まれておきながらイレギュラーな力を手に入れ私の支配から逃れた娘、その気になればこの世界を導けたにもかかわらず責任から逃げ怠慢を続けたエタル族、人の身で神になり得る可能性を秘めてたにも関わらず情に流された兵器、、、挙げ続ければキリがない。ひとまずはここ百年ほどの目障りな連中に対してと受け取ってくれ」
ナタリアはどうすればいいか考える。戦力の差は一目瞭然だ。未来が見えるならおそらく二対一でも勝てないだろう。
ナタリアが一歩前に出ようとするとマーガレットが彼女の腕をつかむ。
ナタリアが一瞥するとマーガレットは小声でささやく。
「策はあります」
「何があるんスか」
「口頭で伝えるのは危険です。おそらく彼の未来予知は高度な演算能力によるものです。こちらの手を明かさずに不確定要素をもって戦えば未来予知は多少封じれるはずです」
アルガスが拍手を始める。再び奥の席に戻りながら声高らかに部屋に響くようにしゃべる。
「ご明察!すまない、耳がいいものでね。確かに口頭で伝えることは気を付けるべきだが、、、旧友を担いでこの星を出ていくというのはどうかな?」
その提案に二人は少し拍子抜けする。
てっきりアルガスはここで全員を殺すつもりなのだと考えていたからだ。
ナタリアはマーガレットと目が合うがすぐにアルガスの方に視線を戻し質問する。
「オリヴィアはどうなるんスか?」
その質問に少し目を丸くしてからアルガスは答える。
「さあ、君たちには関係のないことだろう。頭をだいぶ弄ったからなのか。最近安定しなくなってきていてな。また、身内に拷問でもさせようかと思っている」
特に笑う訳でもなく本当に興味がないように従わせる方法を話している。
その言葉遣いや口調を聞いてナタリアはゾッとする。
悪寒が体中を巡り足先から冷えていくようだ。
「オリヴィアを拷問するのは初めてじゃなかったんスか、、、、」
「まさか、あいつは私のことを兄だと慕っているが私はアルガス、はるか昔の祖先だ。それは君たちも知っているはずだろう?そもそもロード家に生まれながら私の力で支配出来ないのがおかしいというのに」
「ここにくる途中でピースがこう言っていました。生命体は全て睡眠状態であると、あなたは一族全てを洗脳しているのですか」
「厳密には洗脳ではない。彼らの魂はもう存在しない。彼らの体を私が動かしているだけだ。オリヴィアを私が直接拷問するも殺してしまうかも知れないのと、ロード家は今や宇宙のトップ貴族だ。色々とやるべきことも多いのでな、完璧な私が代わりにこなしているということさ」
「オリヴィアに対して煩わしいと思ったなら殺せばいいっスよね。それとも仕返しなんて面倒なことのために生かしているんスか?」
アルガスはその言葉に心底驚いたように反応する。
「いや、彼女は腐ってもイレギュラーだ。これまでにない事例なら残しておくべきだろう。まあ、腹の中にいた時から近くにあった神骸のせいだと考えているがそれ以上はまだ分からない。なんせ、まだ体を乗っ取れてないからな」
「なるほどだからオリヴィアを連れていけないんですね」
マーガレットはナタリアより一歩前に出る。
「だったら帰れません。ジンの目的はテュールを取り戻すこととオリヴィアを救うことでしたから」




