打倒!Who!2
目の前の建物に刺さっている宇宙船を見上げて心配してしまう。マーガレットの優しさなのだろう。動悸が激しくなる。
もし死んでいたらどうしようと。
そんなマーガレットの手を握りピースは落ち着かせるために声をかける。
「私の演算では撃墜された訳ではないようね。まだ死んでない可能性が高いわあ、落ち着いていきましょう」
「、、、はい」
建物の中に入り階段を駆け上がり先ほど見上げていた宇宙船の階まで来た。
「警備ロボットが何体かいた程度ですしたね」
「そうねえ、ちょっと確認するから待っててね」
ピースはそう言って壁を見つめて何かを探している様子を見せたかと思うと勢いよく拳を叩きつける。
崩れて露出した部分に手をつけてハッキング処理を行なっている。
(三人だけで随分と派手にやったみたいですね)
ピースを待っている間周りを見渡しながらマーガレットは考える。
(これはマッドの戦った後ですね、こっちは、、、ナタリア?、、、じゃあこれがジンですか、、、)
そんなことを考えている彼女にピースが声をかける。
「済んだわ、彼らは最上階にいるみたい。厳密には二人を残して今エレベーターで数人が下がっている最中みたいよ」
「ここまで敵が少なくて人の気配がない理由は分かりましたか?」
「データ上では生命体は睡眠状態となっているわねえ、ロボットは彼らが壊したものと、、、後は意図的に起動されていないみたいね」
報告を聞きながらエレベータに向かって歩く。
少し足早になりながらボタンの前に立ち上矢印を押す。
「マーガレットちゃん、上ボタンを押しても先に中の子たちと会うことになるわよ」
「、、、忘れてました」
少し心の整理をしようと思います息を吸い込んだ瞬間エレベーターが着く音がする。
扉が開き中からマッドとナタリアとオリヴィアが倒れながら出てくる。
「マッド!体の再生の方はまだっスか」
「そろそろ、、、おわる、はず、あと、片腕、だけ」
「良かったっス」
オリヴィアは倒れたまま動かない。
マーガレットはたまらずオリヴィアに近づく、
「誰っス、、、マーガレット?!、、、それにピース?!」
ピースがニコニコしながら手を振る。
「なんでここが、、、」
「ローランドさんに聞きました。オリヴィアは無事なんですか?」
ナタリアは気を取り直して返答する。
「無事っスよ。脳の改竄でこうなってるんでアルガスが死ぬか改竄を解けば全部元通りになるはずっス、、、ところで何しに来たんスか?」
ナタリアは落ち着いた次は少し攻撃的な口調で話す。
「殴りにきました、、、ジンを」
「、、、そうっスか」
エレベータに乗り込むとナタリアもついてくる。
ピースはオリヴィアを包み込むように抱えている。
「来ないんですか?」
「そうねえ、オリヴィアちゃんも休める体勢で看る人がいないとだめでしょう?それに、警備ロボットが動き始めたみたいよお」
エレベーターの扉が閉まる瞬間に話したので二人は出られない。
「戻らないと!」
「ピースとマッドがあれば大丈夫っス。そんなことよりも早くジンさんの加勢に行かないと、って言ってもアンタは殴りに来たんすよね。後にしてくれないっスか?邪魔なんで」
ナタリアはまたしてもマーガレットに対して冷たく言葉を発する。
マーガレットは考え事をしているのか一切反応しない。
「無視っスか?」
「、、、少し静かにしてください」
「なんて言っ、、、」
ナタリアの言葉を遮りマーガレットは急いで話す。
「さっきロボットたちが動いたタイミング、、、良すぎると思いませんか?」
「いきなりなんスか。自動センサーが反応したんじゃないっスか」
「ピースが調べてくれました。全て意図的に起動されていないと」
そう意図的に起動されていないものが完璧なタイミングで起動し、戦力を分断させた。つまりアルガスの意思で起動したことになる。ここまではどうということはない話だ。問題はアルガスはピースとマーガレットが来る方を把握してロボットの一部を起動していなかったと考えた場合だ。
「アルガスは私がくることを知っていたことになります」
「ローランド先生は裏切らないっス、、、つまり、アルガスは未来予知ができる?」
「ジンと一対一ですか?」
「えっ?」
「最上階でサシで戦っているんですか?」
「、、、そうっス」
未来予知、純粋な一対一の白兵戦に於いてここまで一人勝ちの能力はないだろう。
いくらジンがの動きが速いとはいえ十手先が読まれては勝ちようがない。
ならなぜ決着を素早くつけなかったのか?
悪趣味にも程があるが、アルガスはジンの家族を助けるという発言への嫌悪感が拭いきれなかったようだ。
どうせ殺すならその家族の目の前で殺すとその瞬間に決めたのだろう。
エレベータが開く、ナタリアとマーガレットは言葉を失う。
ジンは腕を切り落とされ心臓を貫かれていた。
「遅かったな、旧友は死んだよ」




