傷心
バルトリカの中で食材を調理せずそのまま口に運び続ける影がある。
「いつまで食べてるの?マーガレットちゃん」
「うるふぁい!別にいいですよね?こんなにたくさんあって、、、わふぁしたちしか居ないんですから」
ピースは困った顔をしながらマーガレットを覗き続ける。
「ゲームしましょ」
「ゲーム?」
マーガレットの手を引いてピースは談話室に連れて行く、肉を咥えながらマーガレットは素直について行く。子を連れる親のような構図である。
談話室では直前までしていたことを感じさせるボードゲームが広がっていた。
「テュールが好きだったわよねこのゲーム」
「私は苦手でしたけどね」
ピースは二人でもできるゲームを取り出して広げる。
説明書を二人で読み他愛のない時間が過ぎて行く。
時折りマーガレットが涙目になるがピースは何も言わない。二人とも説明書を読み終わりゲームの準備をする。正確にはピースはマーガレットが読み終わるのをずっと待っていた。
(前はオリヴィアとテュールの三人で最後まで読んでたわよね)
そんなことを思いながらジャンケンをした後ゲームが始まる。マーガレットはずっと負け続ける。戦闘ならまだしもボードゲームでは最先端の知能を搭載しているピースには勝てないようだ。
一時間くらいたった後にマーガレットは口を開く、
「ここまで負けてましたっけ私、、、?」
「一対一だとこんなものよお」
「これで終わりにします」
マーガレットはムスッとして談話室から出ようとする。ピースは引き留める。
「また逃げ出すのお?」
扉の前でマーガレットはピタッと止まる。
振り返る顔は少し暗く目つきは鋭い、並の人間ならばたじろぐレベルだろう。
「また?、、、私が、、いつ!逃げたんですか!!」
ピースは怒るマーガレットにお構いなしで話す。
「マギアロイドの時も逃げたじゃない。向き合うことをやめて殺すことにしたわよねえ」
「ピース、、、黙らないとスクラップにしますよ。私は逃げてなんか、、、あなたも裏切り者の方を持つんですか」
ピースはため息をつく、敢えてイラつかせているのだろうか。普段のマーガレットならこんな挑発軽く流したはずだが、彼女はつい声を荒げてしまう。
「何が言いたいんですか!」
「そうやって整理できない感情を怒りに任せて外に放出するのは子供っぽいわねえ。マーガレットちゃん」
ピースは真っ直ぐにマーガレットを見つめ直し、彼女の名を呼び問いかける。
「あなた、本当にこのままでいいの?」
「最初に嘘をついて言い訳をしようとしたのは、、、」
「確かに、ジンちゃんの方よね。けどあなたはその部分しか見れないほど、この旅は無意味なものだったのかしら?」
マーガレットは言葉に詰まる。
「よく考えてちょうだい、今すぐに答えは出さなくてもいいわあ、、、けどね、遅いと手遅れになることだってあるのよ」
片付けをしながら話す彼女から目を逸らし部屋から飛び出す。
(何がどうなってるのよ、、、味方だと思ったのに)
その時、バルトリカに通信が入る。
『あっあっあーーー、聞こえてるかい?』
『やめてくださいスタリオン警部、返してください。アル、あなたが通信しなさい。私はスタリオン警部を抑えるので』
『了解です!こちら銀河警察、そちらの船にジンヴォルフを首謀とする脱獄囚、共犯者が乗っていることはこちらも分かっている。今すぐ投降しなさい』
近くに出現した通信機を見てマーガレットは少しイラっとする。
(ピース、こんな時まで私の脳波をスキャンしているの、、、こんな時だからこそか)
その通信機を取り、すぐさま返答する。
「こちら船長のマーガレットです。私ともう一人以外この船には居ません。裏切り者を追いたいなら好きにしてください。この船にはこれ以上接触しないでください」
通信機の向こうでガサガサと騒がしい音がした後、最初に名乗った男が喋り始める。
『裏切り者ってどうゆうことだ?ちょっとお邪魔するぞ。銀河警察特権だ』
『職権濫用ですよ』
『一番偉いのは警部なんで!方針に従います!』
『アル!直属の上司は私だ。それを忘れるな』(あーーん、ジジイにアル君取られちゃうう!!)
前は軍にいたということもあり規則には従うマーガレットは渋々乗船を許可する。




