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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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生きてきた

ジンが話し終わるまで誰も口を挟まなかった。

「、、、まあ、これが俺のざっくりとした過去だ」

しばらく静けさが一帯を支配する。

この抑圧された空間で誰が最初に話しはじめるのだろうか。

誰も話さないがマーガレットは立ち上がりジンに近づいて平手打ちをする。

ジンはしばらく顔をもとの方向に戻せない。彼女を見ることができない。

彼女にぶたれるのは今回が二度目だ。威力は間違いなく一回目の口論の時の方がでかかったはずだ。

しかし、ジンにとっては今回のものが何よりも重く感じられる。

マーガレットは静かに口を開く、

「あの時、、、私にこう言いましたよね。あそこで作られ生まれたテュールは悪なのかと、、、あの時、私に強く当たったのは少しでも自分を正当化したかったからじゃないんですか?」

ジンはゆっくりと顔を戻す。

マーガレットは歯を食いしばって涙を流していた。

「この施設で作られた自分を、殺しのために作られた自分が犯した罪を、少しでも許されたいと思っていたからあのような考えを言ったのではないですか?、、、だとしたら卑怯で最低です、、、それをあなたが虐殺した種族の最後の一人に言うなんて、、、、最低です!!」

マーガレットが叫びながら武器を展開し、ジンの首に剣を振るう。

ジンは持っていたブレイドを床に捨てその一撃を無抵抗に受けようとする。

次の瞬間、二人の間に一瞬にして割って入る者がいた。

マーガレットは剣を止めた相手を見つめ怒りを漏らす。

「ナタリア!どきなさい!!この男は私の復讐相手です!!」

間に割り込んだのは強化スーツを着たナタリアだった。

「、、、初恋の人でもあるっスよね」

マーガレットはその言葉に一瞬怯む、その隙を逃さずにナタリアはマーガレットの盾に強烈な蹴りを叩きこみ距離を取らせる。

「あなたは知っていたのですよね!」

その言葉にナタリアは表情一つ変えずに答える。

「そうっスね、ジンさんの初めての戦いを見た時に動きが早すぎたので気づいたっス。アタシの研究分野はタキオンエネルギーなんスけど、その研究をする過程で身体に結合させて対象の速度を上げるという研究資料があったんスよ。まあその研究結果は身体に取り込んだタキオンを御せるほどの経験が並みの人間はできないって話だったんスけどね。けど、ジンさんは御せるようになっていたっス。そこで一つの結論にたどり着いたんスよ。ジンさんは意識転送もしくはその他の手段で長年生きて莫大な経験を積んでいるって」

ナタリアの話をマーガレットは黙って聞いていた。

話が終わると睨みながらナタリアに質問する。

「あなたがいつ気づいたんなんてどうでもいい、、、なぜ黙っていたのですか!」

なぜ黙っていたのか、マーガレットも分かってはいる。ナタリアに怒っても意味がないことも、ただ今は怒らずにはいられないのである。

「、、、ジンさんの口からいつか言うと本人から聞いていたのと、、、関わった事件にあの件が含まれていたことは分からなかったっス」

ナタリアがジンを一瞬見るが、すぐにマーガレットに目を戻す。

その目を離した一瞬でマーガレットが距離を詰める。

ナタリアの拳とマーガレットの剣が再び正面からぶつかる。

その威力に周囲に散乱していたものは吹き飛ぶ。

「ピース!!手伝ってください!」

マーガレットがピースに呼びかける。

ピースは少し困惑し考えたのち動き始める。

宇宙最高クラスであらゆる性能が詰め込まれているピースの身体、ゲルニアが奪い取った時も中身のパーツを売りさばこうとザードの大斧を使ってまで解体を試みたが傷がつかなかったそうだ。

「この場では近接格闘しかできないけど、仕方ないわねえ」

ジンに接近しようとするピースをマッドが止めに入る。

マッドの言語にピースが合わせる。

二人の会話は別言語のためその場の三人には理解できない。

「あらあら、マッドちゃん?私のことが信用できないのかしら」

「信用はしている。しかし、彼らの絆を戻す方法が見当もつかないから、少し話したいと思ってね。なあに、掴み合いでオレの腕をへし折ればマーガレットもナタリアも怪しまないさ。幸い、傷はすぐに治るからな」

「そう、だったら遠慮なく折らせてもらうわ。けどあなたの力は使わないでね、あれ多分死んじゃうから」

ピースはマッドの両腕をへし折る。しばらくするとその腕は一瞬で再生される。

そのまま、マッドはピースを別方向に押し飛ばしながら、秘密の会話を続ける。

「マッドもそちら側につきましたか」

「ピースがマーガレット側についた方が意外っスけどね」

ジンは立ち尽くしていた。

マーガレットに殺される準備はできていた。

ナタリアに救われるなんて思ってもいなかった。

ただただ立ち尽くしているその時、レッドアームの最後の言葉を思い出し、口を開く。

「やめてくれ!!」

ジンの声に戦闘中の四人は止まり、ジンを見つめる。

「俺は、、、俺の死は受け入れる、、、ただ、今はテュールとオリヴィアを助けたい」

ジンは我儘すぎる主張を押し通すために頭を下げる。

「マーガレット、すべてが済んだらお前の思うように俺を殺してくれて構わない。今はテュールのために手を貸してくれ」

マーガレットは武装を解除する。

彼女が解除するのならとマッドとピースも戦闘態勢をやめる。ナタリアだけは強化スーツを着たままである。

マーガレットはジンを見つめながら答える。

「お断りします、、、ピース行きますよ。裏切者たちとつるんでいられません」

マーガレットはバルトリカに向かって歩き出す。

その背中にはもう怒りはなく悲しみだけが現れていた。

肩は小刻みに震えている。

ピースは一礼するとマーガレットについて行く。

ナタリアが呼び止めようとするとマッドがそれを制止する。

「大丈夫、ピース、ちゃんと、考えてる」

取り残された三人はバルトリカの発進を見届けたあと、マギアロイドに船が残っていないか探す。

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