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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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一足遅く追いかける

マカロに遅れて到着したのはアリア、スタリオン、アルであった。

ゲルロアに事情聴取をしているようだ。

「あいつらを指名手配しろって言ってんだよ」

声を荒げながらゴブリンたちがマリアとアルを囲んでいる。

「まあまあ、落ち着いてください。話を聞いてからです」

アルが諫めるように話すがゴブリンたちは落ち着かない。

「あいつらがオデらのもの盗んでったんだぞ!」

その言葉を遮るようにアリアが質問する。

「そもそもそれはお前たちがマザーKから盗んだものと聞いているが、むしろ今回の件にはナタリア・シュミットが絡んでいる。取り返すという当然の主張を貫いたまでだと思うが」

「あいつらは脱獄犯だろうが、なんで肩を持つんだ」

アリアはため息をついて説明する。

「脱獄犯であることと今回の件は別だ。問題を起こしてもそれに筋が通っていて犯罪じゃないなら刑期は加算はされない。バカでもわかるぞ」

「ローゼン刑事、まずいですよ」

周りのゴブリンたちはイライラが限界まで達したのか武器を手に持ち始めている。

逃げ場が無くなりアルは腰の武器に手を伸ばそうとする。

「おいおい坊主、武器に手が触れたらそこの女の頭を吹き飛ばすぜ」

「へっへっへっへ、オデたちもイライラしてんだよ」

「上から目線でムカつくなあ、こいつら殺しちまってあの盗人どものせいにしたらいいんじゃねえか」

随分とストレスが溜まっているらしくアルとアリアを殺そうと囲み始める。

アリアとアルは背中合わせになる。二人とも緊張しているのか額に汗が流れる。

(事情聴取しただけなのに僕ら死にかけてる?)

アルはゲルロア軍の考えに未だ頭が追い付かない。

「銀河警察を手にかけたとなると流石に評議会も黙ってないですよ」

ゴブリンたちはゲラゲラと笑い声をあげる。

「話聞いてないのか坊主、逃げた盗人のせいにしたらどうとでもなるんだよ」

「それは不可能に近いはずで、、、、」

アリアがあるの言葉を遮る。

「アル、少し静かに」

(勇敢なアル君カッコいい!でもお、さすがに危なすぎるよお。それにこいつら性根腐ってるゴミだからどこまでも捏造とかするだろうしどう切り抜けるべきなの)

アリアもクールに言葉を発したものの内心はこれまでにない程焦っていた。いくら銀河警察が訓練を積んだとしてもこの人数の敵相手では無事では済まないだろうし下手したら死ぬ可能性もある。

周囲のゴブリンたちが今度は距離を詰め始める。絶体絶命の中二人が腰の武器に手を伸ばすより静かだが、重みのある声がその場に響く。

「よお、お前ら何してんだ」

一同が声のする方向を見ると、串焼きをくわえて立っているスタリオンがいた。

「スタリオン刑事!!ちょっとまずい感じになってまして」

「こいつらの逆恨みです」

ゴブリンの中の一体が遅れて登場した白髪交じりの男を鼻で笑う。

「おいおいジイさん、アンタはとっとと介護サービスでも受けるんだな。オデたちにぶっ飛ばされる前から介護が必要そうなジジイが来たところでなんの役にも立たねえんだからな」

外にいたゴブリンたちが大声で笑っていると船の搭乗口が開く、ひと際大きなゴブリンが一体出てくる。

「うるさいぞ貴様ら、、、俺の睡眠を妨げるバカはどこだ」

その瞬間外にいたゴブリンは一斉に静かになる。

「貴様ら笑っていたが、盗人の居場所は掴めたのか」

誰も答えない、その大柄のゴブリンは苛立ちを感じたのか近くにいたゴブリンを殴り飛ばす。

「誰も!!答えないのか!!」

怒号が周囲に響きわたる。

スタリオンは尚も串焼きをくわえたまま大柄なゴブリンに質問する。

「お前がゲルロアか」

大柄なゴブリンは頷く、そうこのゴブリンこそゲルロア軍のトップ、ザード・ゲルロアなのである。

傍若無人の気分屋、機嫌が悪いときは理由もなく部下の命を奪うこの船の暴君と恐れられている。

アルとアリアは先ほどと比にならないほど冷や汗をかいている。

そこら辺のゴブリン兵なら難なく倒すことができるだろう。しかしザードを相手にするとなれば勝ったとしても戦闘後の後遺症は免れないほどの強敵である。二人の力を合わせれば倒せるが、大量のゴブリンに囲まれているこの現状がそれを許さない。

「うちの部下がお前さんとこの部下に絡まれたんだが連れて帰ってもいいかい?」

ザードは男を見下しながら周りの部下に武器を持ってくるように伝える。

三人がかりで引きずり出してきた大きな斧を片手で持ち上げる。

「この俺に勝って生きて抜け出せるなら連れて帰ってもいいぞ」

笑いながら斧をスタリオンに向かって振り下ろす。

スタリオンはニヤッと笑い、

「そうか、なら楽に済みそうだ」

スタリオンは自身の五倍はありそうな斧を片手で受け止める。ザードは体を使って斧をもう一度振るうために持ち上げようとするが斧は動かない、というより動かせない。

スタリオンが掴んだ斧は微動だにしない、力比べでスタリオンが圧勝しているのだ。

「俺はそこそこのジジイだが、別に弱いわけじゃない。引き下がるなら今だぞ」

「貴様、何者だ!」

斧が動かないならとザードはスタリオンの腹に蹴りをめり込ませようとする。

スタリオンは正面からその蹴りを同じような蹴りで相殺する。

「質問しながら攻撃とは卑怯だねえ、とりあえず動けないようにするか」

掴んでいた斧横に振り離し同時に足を払う、相手の重心をずらしたのち、ザードの顎に渾身の拳を叩きこむ。

その巨体は成す術もなく大地に沈む。

「俺はスタリオンだ。一応答えておいたぞ()()

スタリオンと名乗った瞬間に周囲がどよめき始める。

「あのスタリオンか?」

「レッドアームを追い詰めたって噂の」

「ゲルロアさんが敗けたぞ」

「今なら下剋上できるんじゃ」

「やめとけ、殺されるのがオチだぞ」

そんな周囲のどよめきを無視してスタリオンはアルとアリアの二人を連れて船に戻る。

アルは興奮が冷めないのかウキウキで話しかける。

「スタリオン警部すごかったですよ!」

スタリオンは面倒くさそうにあしらいながら船に入る。アリアは気になった事を質問する。

「なぜ串焼きなんて食べてたんですか」

「昨日マザーK寄った時にローランドのオッサンがおすすめだって教えてくれたろ。だから気になって買うことにした」

実は三人はマザーKにすでに行っていたのだ。ナタリアがゲルロア軍との揉め事に関与していることも全てローランドとハーネットから聞かされていた予想通りなのであった。ジン達の具体的な位置情報までは分からないとはぐらかされたそうだが、マカロにいることは教えてくれたそうだ。

「違います。なぜ我々が事情聴取をしているときにサボって買いに行っていたんですかってことを聞いているんです」

「まあまあローゼン刑事、スタリオン警部のおかげで助かったわけですし」

アルが諫めるがアリアは納得がいかないのかムスッとしながら発進準備をしている。

アルはお茶を入れてくると席を離れる。

その隙にスタリオンはアリアに話しかける。

「マザーKでお前も色々と話を聞いただろう。それを踏まえてジンは悪人だと思うか?」

アリアは毅然とした態度で答える。

「彼らの性格や意思を知らない以上、やったことで判断するしかないです。そして彼らはゲヘナプリズンの脱獄をしたことは確実です。捕まえてから事情を聴かなくてはなりません。むしろなぜそこまで彼らの肩を持つのですか」

アリアの疑問は当然だろう。スタリオンは妙にジン達の肩を持っている。ナタリアの刑期が加算されないことを指摘したのはマカロに到着する前の船の中でスタリオンが言い出したことだった。

「肩を持つわけじゃない。ただ後輩に難しいお話をしているだけだ」

「なんですかそれ」

丁度アルが帰ってくる。

「お茶入れてきました」

「あんがとさん」

「ありがとう」

ベテランがいるとはいえやる気はそこまでない。アリアはいつ追いつくのだろうかと悩みながら追跡を続ける。

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