追跡2
3話目です
「そろそろ機嫌直せねぇか」
「別に怒っていませんわ。だから話しかけないでくださいまし」
追跡を追っ払ったところとまでは上手くいっていた二人は、途中のガス欠によって徒歩を余儀なくされた。
「ガス欠は俺様のせいじゃないってんだよ。だから言っただろ、ガキのお守りは勘弁だってな」
ムスッとしたままオリヴィアは無視する。
彼らは宇宙船のパーキングエリアに向かって歩いているが、町から離れた場所にあるせいで周りは荒野となっている。さっき会ったばかりの二人は特に話すこともない。目標地点までもう少しではあるが、後三十分はかかる。どちらかが口を開かない限り、会話は発生しないという何とも気まずい時間を過ごしているのだ。あまりの気まずさにジンが仕事の内容をさらに詳しく聞こうとすると、オリヴィアが口を開いた。
「人を殺さないのですね」
「あ?あぁまあな」
ジンは突然の質問に少し面食らう、
「何故なのですか?」
「お前には尋問されてるみたいな気がしてめんどくさいなぁ。グッドバー食うか?」
ポケットから袋を取り出す。溶けて形を保っていない。
「そんなおぞましいもの食べませんわ。それと、はぐらかさないでくださる?」
グッドバーをポケットの中に戻して、ジンはため息をつく、
「人に聞く前に自分のことも話したらどうだ?俺様はお前がオリヴィアってことしか知らないし、それに仕事のことも戦闘面のこともほぼ何も知らない。それなのに俺様は話さないといけねぇのかい?」
オリヴィアが再び不満そうな顔をする。
「なら、話しませんわ」
「なんだよそれ」
十秒ほどの沈黙ののち、オリヴィアが再び口を開く、
「確かに貴方の言う通り、私のことは全く話せていませんでしたわね。私はオリヴィア、今はそれしか名乗れませんわ。信じなくてもいいですけれど、多少の超能力が使えますわ。」
「はぁ超能力?そんじゃあ、絡んできたならず者の腕引きちぎったりしたのか?」
「そんなパワーはありませんわ。意識しなければできませんが、周囲の状況を正確に把握したり、私自身の身体を強化したりが主な能力になります。私が持てるものであれば浮かせることはできますわ。」
「へぇ」
ジンは嘘だろうと思いながら話を聞いていた。
「嘘だと思っていらっしゃいますわね。そういったことも感じ取れますのよ。いいですわ、貴方は私のことをあまりご存じないようなので、逆に私が知っている内容を貴方に伝えましょうか?例えば本当の一人称は俺様じゃないとか」
ジンは目を見開いて驚いている。そのことは誰にも言わないどころかそもそも俺様以外でこの星に来てから名乗ったことがないからだ。
「分かったいったんストップだ。その証明の仕方は気味が悪い。このグッドバーを空中に浮かせられたら信じてやるよ」
ジンは簡単な提案をしたが、オリヴィアの顔が一瞬こわばる、
「どうした?やらないのか?」
「い、いえ、できますわ」
その直後、ジンの手に乗っていたグッドバーが空中に浮く。
「マジかよ、、、マジもののエスパーってやつじゃねぇか!エスパーオリヴィアって呼ぶか?それとも、、、」
「オリヴィアでお願いしますわ。そんな呼び方をされるくらいなら嬢ちゃんの方がまだましですし、次は貴方の番ですわよ」
ジンは仕方ないと思いながら話しはじめる。
「名前はもう知ってるから話さなくていいだろ。能力は人より多少早く動けることと、銃の腕がいいってことくらいだ。賞金稼ぎをやっているが、人はできる限り殺さない。過去との決別という意味も込めてな。これ以上は話す気はない」
「ありがとうございますわ」
「案外あっさりと引き下がるな。もうちょっと俺様についてつついてくるかと思ったぜ。ハゲタカみたいによ」
「嘘をついていないことが分かれば十分ですわ。それとその下品な例えはやめてくださいまし、それだと貴方は腐肉ということになりますわよ」
そんなことを話しながら歩いているとパーキングエリアが見えてくる。
「ところで、どうして仕事の目的地がこの星ではないとわかったのですか?」
「あぁ、それは簡単だ。車でナビ設定してる時に文句言わなかったからだ」
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