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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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懐かしの場所は記憶と違う3

F5にある一室にて、マーガレットとオリヴィアがハーネットの入れたお茶とローランドが棚から持って来たお菓子を前にして、座っている。

ナタリアの尋常じゃない取り乱しを見て、お茶を飲むのも躊躇われている。

「騙されたと思って飲んでください」

ハーネットの言葉に恐る恐るお茶を飲む二人、

「うまいものを食べることができれば、ある程度は気を休めることもできよう」

マーガレットは状況を把握したくソワソワしている。

それをローランドは感じ取ったのか優しく告げる。

「気になることは多かろう。ナタリアがこちらに来たら話すとしようかの」

その直後、部屋の扉が開かれる。

「来たっスよ、先生」

ハーネットはナタリアに近づくと静かに抱擁し頭を撫でる。

「そうゆうの要らないっス、ささっと教えて欲しいっスよ」

冷たく言い放ち、席につく。

「ピースも机の上に展開しなさい。深く関係のある話じゃからの」

そこからローランドは何があったのか事の顛末を話しはじめた。

始まりはある組織との契約をロビンが断ったことから恨みを買ったとのことだ。

一見するとただの逆恨みに聞こえるが、最初契約は結ばれていたという事実があったためにこの話は複雑なったとローランドは語る。

「契約を途中で切るなんてあいつらしくないっスよ」

「最後まで聞きなさいナタリア」

ナタリアは暗い表情のまま話の続きを聞く、

「そもそもは人を助けるサポートAIを作っておったんじゃが、あやつが用意したボディは戦闘を想定した作りにもなっておった。契約相手はそれに気づくとサポートAIに自立型戦闘意思をつけるよう契約の変更を突きつけて来た」

「それでロビンさんは契約を断ったというわけですね」

「しかし、そこで終わらなかったのですわね」

ローランドは深く頷き続きを話す。

「ロビンが開発していたものは、やつの完成間近の研究を利用することも考えておった。ナタリア、F区画の研究分野は知っておるの」

「人工意識と感情制御研究」

ナタリアは即座に答える。

「そうじゃ、あの区画の研究は完成に近づいていた。完成すれば後はどう応用するかだけになる。ロビンはその完成したアルゴリズムは既存のAIに後付けできると考えておったのじゃ」

「一体なんですの」

研究内容を理解できていないオリヴィアが質問する。

ナタリアは話が止まることに苛立ちを隠せないがオリヴィアに罪はない。ハーネットは簡単に説明する。

「人と変わらぬ感情を持ったロボットを作るという話ですよ」

「完成はしなかったんスか」

「しなかった訳ではなくできなかったのじゃよ」

ロビンが完成まで後一歩というところで悲劇は起こった。契約を切ったことを恨んだ組織に襲撃されてしまったのだ。

「一体どこの連中なんですか」

怒った顔で質問したのはマーガレットだ。ジンに色々言われたがやはり正義感は強い部分は変わらないようだ。

「ゲルロア軍じゃ」

「あまりいい噂を聞かないゴブリン部隊ですわよね」

ゲルロア軍、その凶暴性は広く知られている。軍の多くがゴブリンで構成されている。ゴブリンという種族が凶暴なのではなく、ゴブリンの中でもはみ出し者で構成された軍とは名ばかりの実質的な無法者集団となる。しかし、一度軍として登録してしまうと悪行も咎めるのは難しくなる。向こうが契約違反をした、向こうが先に仕掛けた、だから制圧するしかなかったといえば評議会もそれ以上は追及しないというのが現状である。

「ロビンが殺されるとき何してたんスか。ここのセキュリティはそこまで穴だらけじゃないはずっスよね」

「内通者がいたんじゃよ」

「そいつに合わせて欲しいっス」

「どうするつもり」

「ハーネット先生、そんなの決まってるっス、お礼参りっスよ」

ローランドとハーネットが顔を合わせる。ローランドはナタリアに向き直り口を開く。

「最後まで話を聞かんか。ロビンは完成間近の研究と開発途中のサポートAIを死ぬ直前に逃がしておる」

その言葉を聞き、三人はハッとした顔をしてピースを見る。

「そうじゃ、それこそがそのピースじゃ」

「研究はピースの中に入ってるって事っスか」

『ロビンから預かっているデータはあります。しかし、パスワードが必要です』

「なんで黙ってたんですかピース」

「そうですわよ」

二人の発言にナタリアが冷淡に言葉を発する。

「機械だからっスよ。人の脳波から人格を模倣しようが、感情は分からない。自己意識を持たないから秘密をプログラムされたら馬鹿正直にそれを守る。星を出る直前のデータも削除されたとかっスよどうせ。自分で考えるってことをしないんですよ根本的に。演算はしますけど、自分の理解できないことに対して何故と考えないポンコツロボットっスよ」

「ちょっと、そんな言い方はないのではありませんこと」

「そうですよ、今は機械かもしれませんが、感情を持たせることができるんでしょう。そのロビンさんの研究を使えば」

「その研究が!そいつの中に入ってるのに開けられないから困ってんスよ!!」

ナタリアが声を荒げる。

直後に冷静になったのか彼女はごめんと小さな声で謝り、部屋を飛び出していく。

「ナタリア、、、」

ハーネットが二人の前に来て話しはじめる。

「彼女はどこまで自身の過去について話しましたか」

二人は顔を見合わせてから、彼女が名前と能力以外全く話さなかったことを改めて気づく。

「その様子だとあまり話さなかったようですね。彼女は嫌がるでしょうが少し話しましょうかね」

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