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レッドアームファミリー/俺たち無法者、なぜか正義の味方やってます  作者:
第一章 知ってる景色と知らない心
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懐かしの場所は記憶と違う2/賞金稼ぎ見習い2

ナタリアは立ち尽くしていた。

しばらくしてから瓦礫を漁って何かを探しているらしい、その顔は我儘な子供のように必死だった。

「ナタリア、やめなさい」

ローランドは優しく告げる。

「ロビンはどこっスか」

ナタリアは黙々と壊れた区画はかき分け続ける。

「話を聞きなさい」

ナタリアはその言葉を無視する。かつて研究していた場所、お互い高めあった仲間、それが見当たらない。誰が見てもすべての設備が、思い出が壊れていることがわかる。

「ナタリア!ローランド先生を無視するのはやめなさい!」

「ロビンは!!どこだあ!!」

マーガレットとオリヴィアは見たことがないナタリアに対して、悪寒が走ると同時に警戒する。

その怒声に呼応するかのようにナタリアが武装スーツを展開したからだ。

「ナタリア、落ち着いてください」

「そうですわ、貴方らしくありませんわ」

ナタリアは二人の言葉を無視してローランドに襲いかかる。

「答えろ!!ローランド!!!」

「死んだんじゃよ」

その一言で、ナタリアの体が停止する。

「F5で待っておるから気が済んだら来るんじゃ」

「お二人も付いてきてください」

ハーネットに声を掛けられて二人は付いていく、一人残されたナタリアは目を瞑り唇を噛みしめていた。

スーツに隠されているもののその背中には悲壮感が漂っている。


見上げれば視界の七割をビルがふさぐ街で二人はいまだ追跡を続けていた。

「ねえジン、ちょっと休もうよ。手当たり次第に探して回るなんて不可能に近いよ」

「俺様も昔はそう考えてたんだがナタリアにこれを作ってもらったのさ」

ジンは街に入ってからずっとかけている眼鏡を指さす、

「何それ、変装用じゃないの」

「違うんだなあこれが、ナタリアに顔認証システム付の眼鏡を作ってもらったってわけよ」

「わざわざ頼んだの?」

「いや変身アイテム使わせろってしつこく言ってたら、これ渡してきて我慢しろって言うんだよ」

「カッコ悪いよ、ジン」

ジンはぶつぶつ文句を言いながらも眼鏡を通して街中を見まわし続ける。

その眼鏡には多くの情報が刹那的に流れる。ナタリアはジンの動体視力を見越してデータの速度調整をしたようだ。

「これすげえな、その星の基本データベースに自動調整してリンクしてくれるから滅茶苦茶使いやすいぞ」

「僕も使いたい」

「後でな、船戻ったら貸してやるから」

この街はパーキングエリアから直に来れるだけあって、非常ににぎわっているようだ。交通の整備はされており、人々も多く行きかっている。犯罪者が隠れているとは思えないほど皆が技術の恩恵を享受しながら平穏に暮らしている。人口的な森、人工的な湖、人がリラックスできる自然が人工的に再現されている。大半の乗り物は自動化されているが手動の車も走っている。人はどこまで行ってもロマンは求めるようだ。

(最近じゃ自動用道路で運転する手動のバイクや車は免許が難しいって聞くけどな)

ジンが考え事をしていると一人の男が目に映る。眼鏡はその男に反応する。

「見つけた」

「えっ」

「ついて来い」

ジンはその場から離れ男の方へ向かう。

「あれが例の男?」

「そうだ」

「見てて、僕が捕まえるから」

「あっ、ちょっと待て」

ジンの制止を無視してテュールが一人で突っ走る。

男は直線で向かってくるテュールに気が付いたようでその場からダッシュで逃げ出す。

「あっ待って!!!」

「あのバカ、、、」

男の後を追いかけるテュールに頭を抱える。

スカートをはいてるとは思えないほど華麗な動きで男を追いかけるが、賞金首になっているだけのことはあり、男の逃げ足は速い。男が通行人が運んでいる荷物を崩して道をふさごうとしたとき、テュールは男よりも通行人の安全を優先してしまった。時間にして四秒、たったそれだけ目を話しただけで男はその場から逃げ切ってしまった。テュールは不味いことをしてしまったと冷や汗をかく。

急いでジンのもとに戻り事の顛末を話そうとした。

ところがジンは、人口の湖を眺めながらアイスクリームを食べている。

「ジン、、、僕、、、」

「なんで俺様の言うことを無視した」

テュールは目をそらして地面を見つめている。

「ただ、喜んでほしくて」

「逃げられて面倒ごとが増えたぞ」

何も言えず立ち尽くしている自分が恥ずかしくなってくる。

新しい場所、感じたことのない現実の人々の生活、その熱気にあてられてなんでもできると感じていたことが今ではひどく愚かに思えてくる。

「何かを学ぶとき、自分でやってみることも大事だ。ただな、教われるなら教わっておくに越したことはない。教わって失敗するのは良いが、教わろうとせずに失敗するのは違う」

「ごめん」

「まあ座れよ。飯でも食おう」

ジンは持ってきた軽食を話しながら広げる。

テュールにとってその優しさは心を締め付けてきた。

「マーガレットがサンドウィッチを作ってくれたらしい。オリヴィアが横で目を光らせていたらしから味は大丈夫だろ」

二人はサンドウィッチを頬ばる。

テュールはいつものような元気はなく、静かに食べている。

「そんな落ち込むなよ。別に怒ってねえし」

ジンに話しかけられ、言葉を喉の奥からひねり出す。

「、、、本当は認めて欲しかったのかもしれない」

テュールの頬に涙が伝う。

ジンはただ黙って彼が言葉を紡ぐのを待つ、

「脱走の時も、鼻血を出して役に立てなかった。僕は初めて仲間を得て、同時に初めて仲間外れにされたくないという感情も得た。料理を作ったとき認めてもらえて嬉しかった。だから今回もジンに褒めてもらいたくて」

ポロポロと涙と共に言葉を紡ぐ姿を見て、ジンは大声で笑う。

テュールが驚いたようにジンを見ると、

「なあんだよ、そんなことか。お前はバカだなあ」

「そんな言い方、、、」

「もう家族みたいなもんだろ。お前のことを弟のように思ってる」

「えっ」

「いろんなこと教えてやりたいし、頼ってくれたって構わねえ」

ジンの言葉にテュールの顔色が少しずつ戻り始める。

「にしても、そんなこと考えてたのかよ。可愛いガキだなあ」

ジンは笑い続ける。

テュールはそれを見て自分はまだまだ知らないことがあると感じる。

仲間や家族の本当の意味は分からないが今ここで生まれた感情はきっと大切なことなんだと心に記憶する。

「まあ、危ないことはするなってだけだ。飯も食い終わったしとっとと行くぞ」

「けど逃げられちゃったよ」

ジンが眼鏡をかけなおす。

「さっき発信器をつけた。問題なく作動してるぜ」

テュールが追いかけている最中にジンは腰に装備していたミリアを組み立てて空気圧で射出する無音の追跡弾を犯人に打ち込んでいた。

周りにいた数人の街の人間は気づいたようだが、発砲音も響かずジンがすぐにアイスクリームを買いに行ったこともあり、ただの遊びだと思って無視していたようだ。

「まあ、ここまで最新デバイスが発達、供給しちまうと周りなんて気にしないのかもな」

「ジン、すごい」

「当たり前だ。俺様はすごいんだ」

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