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ハイパー営業マン恩田、異世界へ。  作者: 来栖もよもよ


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アマンダの店、新規オープン!

 オンダハウスの完成よりも前に、アマンダのエドヤテイクアウトの移転も急いで進めねばならない。

 俺の生活はさらに忙しくなった。

 幸いにもリヤカーは間に合いそうなので、店の移転のチラシを製作するついでに、


【お近くの家にはプラス二百ガルで配達も可能です! 予約オーケー】


 と追記したものにした。

 少し落ち着いたらエドヤの配達も始めようと思っている。

 アマンダのテイクアウトの配達のアルバイトについては、アマンダの従兄ジェフからの口利きですぐに見つかった。

 彼女の店『アンデン』に来ている常連さんの息子、チャーリーである。

 彼はまだ十九歳のソバカスの愛らしい小柄な青年だ。

 はきはきした喋り方が少年のように初々しい。

 チャーリーは二年近く前に王都ローランスにあるワインの卸業者に就職したのだが、オーナーが店を広げようとして詐欺に引っかかったらしく、店がつぶれてしまったそうだ。

 それで先月いったん家に戻って来たとのことで、アンデンに来たチャーリーの父親が、


「息子が戻ってくれたのは嬉しい気持ちもあるけど、仕事がなくなったのはあいつもショックだろうしな。ホラールでは卸業者はいないし、こっちで仕事見つけるのは大変だから、また王都に戻っちまうだろうよ」


 と愚痴をこぼしていた。

 それを聞いたジェフが、


「だったら暫くの間でもいいから、アマンダの店の配達手伝ってくれないか?」


 と誘ったらしい。

 アマンダとも顔馴染みらしいし、父子家庭の彼は生活の足しにと学生の頃は牛乳配達もしていたので、近所の古い人たちの家はかなり把握している。

 チャーリーも自分のせいではなくとも無職になって、収入がないのも不安だったようだ。


「王都で仕事を探すまでの間でよかったら」


 と喜んで引き受けてくれたそうだ。

 彼の働いてくれている間に新しい子を探す時間も出来るのでお互いにラッキーだ。

 ただリヤカーには馴染みがなかったので、俺の前カゴのリヤカーで乗り方を教えることにした。

 え、これに乗るんですか? と目を丸くしていたが、流石に若い子は順応性が高い。

 またがった最初こそフラフラしていたが、一度コツを掴んだら難なく乗りこなした。しばらく乗っていたらもっと安定して行くだろう。


「これすごい便利ですね! 僕もお金貯めて買いたいです!」


 とご機嫌な笑顔になった。

 注文の数が多い時には前カゴのじゃ乗らないだろうから、後ろカゴがついた三輪仕様のもう一つのも乗せてみたが、こちらは馬車と同じ感覚で使えるそうで問題はなさそうだ。

 アーネストの顧客が増えるのは彼のこれからを考えてもいいことである。


 アマンダのところでバイトをしていた女性も引き続き勤めてくれるそうで、ジルと同じで家から新しい店へ通う方が近くなるらしい。

 アマンダは残念ながら二十分以上歩くことになる。


「私もリヤカー、買った方がいいかねえ」


 アマンダが呟いた。

 若い時、馬車も上手く操れなかったのがトラウマらしく、乗り物関係に苦手意識が強いらしい。

 だが俺もジルも快適そうに乗っているし、気になってはいたらしい。

 俺は最初に作ってもらった後ろに荷台のついたリヤカーを出した。


「こっちの方なら大丈夫だと思いますよ。試しに乗ってみますか? 商品を運ぶためのものなので、少し後ろの荷台が大きいんですけど」


 俺が勧めると、それじゃちょっとだけ、とサドルにまたがり、恐る恐るペダルを踏んだ。


「……あれ、オンダ、前に進むよこれ。転ばないよ」

「まあ前に進むための乗り物ですしね。二輪よりは扱いやすいと思います」


 十分ぐらい嬉しそうに近くを一周して来ると、私も買うよ! と言い出した。

 俺は今は人気で予約待ちなので、しばらく待つと思いますと伝えるととても残念そうな顔をしたので、金額を伝え、注文だけしておいて、出来るまで私のを使っていればいいと提案した。

 俺は前カゴリヤカーさえあれば、カゴにジロー、リュックにダニー、抱っこ紐でウルミを運ぶことは出来る。そこそこの荷物も運べる。まあ少々面倒だが、長くても数カ月ぐらいなら無問題だ。

 そのころにはもうオンダハウスも出来上がってるかもしれないし。


「そんな、私は二、三十分程度は今までも歩いてたから大丈夫だってば。出来上がるまで──」


 遠慮するアマンダに俺は首を振る。


「楽できるところは楽するんです。それに往復一時間弱もかけるのは時間の無駄ですよ。余った時間は別のことに使えるじゃないですか」


 アマンダは笑顔になった。


「そうまで言われて断ったら失礼に当たるね。ありがたく貸してもらうよ。あんたもジルも、優し過ぎて困っちまうね」


 そういうと、早速アーネストのところに注文をしに行ったらしい。

 オンダの紹介でと伝えたら、一カ月ぐらいで仕上げてくれると言われたそうだ。

 アーネストが過労死しないことだけを祈ろう。

 ただ彼の話はベースの車輪やサドルなど型が出来ているので、試行錯誤していた最初の頃ほどは大変ではないと言っていた。仕事が途切れないのは嬉しいってことだし、頑張って働いてもらおう。



 ヒラリーにも前倒しでバイトとしてうちの子たちの面倒を見てもらうことにしたし、彼らもなついているので俺の自由度は増した。

 ナターリアに店を任せっきりなのは申しわけないが、彼女も母親から話は聞いていると言い、


「私にエドヤのことは任せて、アマンダさんの方を手伝って上げてくださいね」


 と頼もしく胸を叩いていた。

 本当に俺の周りの女性は働き者ばかりである。


 アマンダの店は今まで同様シンプルな外観にし、持ち帰りの袋や木製のスプーンやフォークなどは今までの業者を使えるそうで、大分手間が減りそうだ。

 事前にチャーリーに頼んで近くの家のポストにチラシも投函してもらった。

 オープン記念で三日間のあいだ、弁当を買ってくださる先着五十名のお客様には、アマンダお手製のスコーンを一つプレゼントだ。

 アマンダのスコーンはバターが効いててサクサクで、とっても美味しいのである。

 みんながバタバタしている中、うちの子たちだけは通常運転。

 のほほんとヒラリーと楽しく過ごしているようだ。

 まだヒラリーには彼らの特別な部分については話していないが、きっと新居が出来てしばらくしたら分かってしまうだろうから、折を見て説明しておかないと。

 もう彼女に対しては信頼関係が出来ているので、ずっと内緒にしておくのはかえって心苦しい。ヒラリー自身も寂しいだろうし。

 そんなことを時折考えつつも、アマンダの店の移転が完了し、厨房付きのテラスハウスでは一番乗りで【レストランエドヤ テイクアウト ホラール店】が新たにオープンした。





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