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ハイパー営業マン恩田、異世界へ。  作者: 来栖もよもよ


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アマンダとサッペンスへ

「それじゃ、留守の間よろしくお願いします」

「はい。みなさんも道中お気をつけて!」


 俺はナターリアにエドヤを頼むと、アマンダ、ダニーにジロー、ウルミとともにレンタル馬車でサッペンスへ向かった。

 アマンダはジェイミーと新たなレシピを学ぶための旅だが、ダニーたちは単にお出かけと美味しいご飯、そしてジェイミーに遊んでもらおうという娯楽目的なのでご機嫌だ。

 ジローは体が大きいのと、単に本人の希望でスカーフと足元にシュシュを身に着けているが、ダニーもウルミも小柄だし、スカーフなど自体が行動の邪魔になる。

 といって首輪なども外れやすいし嫌なようだ。

 しかし旅先で勝手に出歩いて迷子になり、野良だと思ってさらわれても困る。

 考えた俺は、いつもジローのスカーフを購入している雑貨屋で、柔らかい素材の布のヘアゴムを買った。ダニーは黄色、ウルミは青色である。

 人に飼われているペットであると認識させたいので、目立つ明るい色にした。

 ナターリアにお願いして、ゴムには『エドヤ』と刺繍もしておいた。

 泳ぐのに気になるかと思い、一度試してもらったが、特に不快ではなかったらしい。


「こういうの好きじゃないだろうけどさ、野生の子と間違われて連れて行かれて、離れ離れになったら悲しいから、外に出かけるときは着けといてくれるかな?」


 俺が二人に頼むと、しっかり〇ボタンを踏んでくれた。

 まあ基本的にウルミはほとんど眠っているから、カゴのベッドか俺が抱っこ紐で抱えているので問題はないと思う。

 心配なのはジローのように飛んで逃げられないダニーぐらいだ。

 どちらにせよ、三人とも知らない人への警戒心は強いタイプなのでそこまで不安はないが、俺の大事な家族に何かあってからでは遅いのである。


「いやあ、本当にホラールから出るのは何年ぶりかねえ! サッペンスは大きな町だから、レシピを教えてもらった後の自由時間に、色々と見てまわりたいね」


 アマンダも三人に負けず劣らずご機嫌だ。

 やけに大きなトランクを馬車に乗せたなあ、と思っていたが、中身は着替えとメモ用の筆記用具ぐらいでほぼ空っぽらしい。


「だってお土産をたんと買い込まないとね。そう頻繁に出かけられるわけじゃないしさ」


 往復一日程度の距離なら、とも思う人もいるだろうが、アマンダも客商売をなりわいにしているので、何日も店を休むのは売り上げもなくなるというデメリットがあった。

 しかも俺とは違い、地元の仕入れで営業ができるので、遠出をする必要もない。

 モルダラ王国の人は勤勉である。

 貴族などの暮らしは分からないが、一般人はバカンスという長期休暇を取る習慣がないようで、週に一日、もしくは二日の休みで一年中働いている。

 職場のオーナーによっては年末年始の休みとか、夏場に三日ぐらいリフレッシュ休暇のようなものを与えてくれるところもあるようだが、多くはない。有給休暇も当然ない。

 だから里帰りとかそういう休みは取れるが、収入も当然減る。

 家族の不幸とかなにか諸事情でもなければ、まとまった休みなんて取らないねえ、とアマンダは以前言っていた。

 俺は里帰りもなにもこの国の人間ですらないので、今は週に一日二日程度の休みで充分だし、仕入れ名目でサッペンスにも行けるので気分転換もできる。

 フリーになってからは長期休暇なんて考えたこともないから特に困ったことはないが、休むと収入が減るとなると考えるよなあ。自営業なら特に。

 思えば有給休暇というのは本当にいい制度だったものだ。

 エドヤのテイクアウトの店は、数日アマンダが休んでもバイトの子が回せるという状況になったので、今回出てくるつもりになったのだろう。

 三泊四日の旅というのは、アマンダにとっては仕事が絡んでいてもバカンスに近いのかもしれない。


「今回はモリーさんのところに泊めてもらえるっていうし、宿泊代も浮いちまっただろう? 嬉しいやら申し訳ないやらでね。ねえオンダ、本当にお土産も持たずなんて、失礼じゃないかね?」

「ジェイミーとの仕事の件で来るんだから気にするな、って電話でも言ってたじゃないですか。それに、ホラールで売ってるものは大抵こっちにあるでしょうし」

「ま、そりゃそうだよね。ホラールとじゃ町の規模が違うもんね」

 俺は笑った。

「それに、代わりに私から習ったレシピを振る舞って欲しいっていわれたじゃないですか? モリーさんにとっては、新たな味の発見の方が大事だと思いますよ」

「調味料作る人だもんね。よおし、それなら気合いを入れて唸らせてやらないと」

「私もできるだけ教えるつもりですが、ナターリアさんがいないので、お手数ですがレシピの分量などのメモはお願いします」

「まかしとくれ。ナターリアからも効率のいいメモのやり方教わったからね」

「頼もしいですね」

 ふと、なんか静かだなと御者席から後ろを振り返ると、三人とも寝床用に運び込んだクッションやカゴのベッドの中で寝息を立てていた。

 アマンダと話していたので全然気づかなかった。

 うーん、話し相手がいると気がまぎれていいけど、彼らが退屈だったかもしれないな。

 まあお詫びに早めに到着すればこの子たちも嬉しいだろう。

 俺は馬の速度をさり気なく早めるのだった。

 




お久しぶりです。

現在ダブルワークなので今後も週一ペースぐらいになってしまうかもですが、地味に続けて参りますのでどうぞよろしくお願いしまするるる( ̄▽ ̄)

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