市場
今日もアンナは大聖堂行きなので、3聖女のベル、サンディ、ノルは時間が空いています。
アンナがトリーと馬車で出かけていくのを、メラノ邸の玄関で3聖女は「いってらっしゃい」と送り出しました。
メラノ侯爵もデント執事をともなって、外出しましたので誰も居ません。
それをみてさっそくマーサ夫人から、買い物に行ってみませんかとのお誘いです。
王城も詳しくは見たことが無かったので、3聖女は大賛成ですぐに行く用意を始めました。
「マーサさんが、市場を案内してくれるって、うれしい」
「元々王城の出身だから、よくしってるって」
「お店なんかもあるから、みてみたいわ」
「おいしそうな物もあるんじゃない」
などと、ようやく楽しい時間になりましたから、3人はウキウキです。
この一月、緊張の連続だったからです。
「でもアンナに悪いわね」
「お仕事だから、しょうが無いんじゃない」
「教官様もいないから、こんなときくらい楽しまなくちゃ」
もう完全にお遊びモードです。大先輩のマーサ夫人が付いていますので、安心して色々なものがみれるのでほんとにようやくこの時間を満喫できそうです。
「でも何を着ていく?」
ちょっと聖女服では、いろいろと差し障りがありそうです。
3聖女は、お客さんとは言え、色々と知られてきているためあからさまにわかってしまっては、色々とまずいと思ったのです。という事でお出かけに当たってマーサ夫人に相談です。
「マーサさん何を着て行けば良いんでしょうか、聖女服だと流石にまずいのでは」
マーサ夫人は「そうですね、そう思います。でも元々は競技会に出るくらいの話しでしたしね」
「それ以外の服は持ってません」
マーサ夫人はちょっと考えて、
「ではメイドの制服を少し借りましょう。合うものがあるでしょうし、これなら普段着とかわりません。これでちょっとした買い物などにもでていますから、まさかあの聖女様であるとはきづかれないでしょう」
マーサ夫人が3人の新入りメイドに色々教える為に一緒に市場や商店を廻るという体裁にしたのです。
なにかそのメイド衣装の選定にも、3聖女はこれはどう?とか似合いそう?とかだめよそれじゃ!!とか
着てみて廻ってみてとか、歩いてみてとか、初めて着る衣装は楽しいものです。
(メイド服を着るのも楽しい時間ですね)マーサ夫人はそれをニコニコしながら見ていました。
(たのしんでるみたいですね、あのお年ですからね、ふふふ… 怖いマーサをまだ知らないのです)
さて、衣装についてはこれでうまくいきそうですが、見学できるなら当然次は買い物をしてみたいのが
女の子の楽しみです。でも問題発生
「買い物もしてみたいのだけど」
「ほとんどお金持ってないし」
「見るだけじゃね、ちょっと何か食べてもみたいし」
王城の市場には、いろいろな食べる出店なども出ているからです。
でも、競技会に来ていると言う訳なので、食べること寝ることは確保されているのですが、買い物までするというお金は持っていないのです。
バイトも出来ないし、というか女子は簡単に働くことができません。危険でもあります。
下手をするとさらわれる怖れすらあるのです。ですからメラノ家のメイドの制服を着せる意味も後ろにはメラノ侯爵家と怖いデント執事が控えておるぞと言う安全を保障する為のものであるのです。
もし間違って迷子になっても、その衣装を着ておればそんなに大変な事にはならないからです。
3聖女が買い物をどうすると言う話しをしていますとマーサ夫人がそれを聞き、ニコニコしながら
寄ってきました。
「どうかしましたか?」
「衣装については、貸していただきありがとうございます。次は買い物などしてみたいなと思ったのですがお金を持っていない事に気がついて、どうするかなと話していたんです」
「おやおや、それで?」
「見るだけかな?と言う話しをしていたんです」
「それは残念ですね、流石にお金はお貸しすることはできませんしね」
これも、マーサ夫人の教育の一環なのです。お金の貸し借りは、争いと破滅の第一歩という事は長年の経験からわかっているのです。
でもそれでは面白くないわねという顔のマーサ夫人ですが、あることに気がつきました。
「そうそう皆さんは、ちょっとしたお金持ちですよ」
「えーーーどこに?」
「何にも持ってませんけど?」
「聖女は清貧がモットーですから、教会もお金にはとんと縁がないんです」
なんて言ってます。
「ほらほら思い出してください。大公様と宰相様のご招待ですよ」
「なにかありましたっけ」
「みなさん一人一人に引き出物が送られてきました。それを使うのです」
「それを売っちゃうんですか、でも売る場所もしりませんし」とサンディは困った顔で言います。
「だめだめ、もしあったとしてもそれをしたら、買いたたかれるだけですよ」
「それに、このような特別のものが市場にでると差し障りがあります」
「見るものが見れば、それがどこから出たのかはわかりますから、噂になってしまうんです」
「貴族というものは体面が一番ですから、すぐにうっぱらってしまっては、変な噂が出てしまいます」
マーサ夫人にそう言われると3聖女もマズいことがわかってきました。
「そしてそれを皆さんが売りに持っていったりしたら、それこそメイドさんがどっかから盗んだみたいなことになっちゃうんです」
そのマーサ夫人の説明に無実を説明するのって大変だと言うことが3聖女にもわかってきました。
「どうすればいいんですか?」3聖女はもうマーサ夫人に頼りっきりです。
それを見てマーサ夫人はにっこりと
「だ、か、ら、私たちがあるんです」(またでましたこの言葉)
「どうするんです?」
「このものをメラノ家で引き取ります。そうすればちょっとしたお金なら用立てできます」
「それなら、ものはここにありますし、安全ですから」
「なにか、マーサさんに手を煩わせて悪いなーて」
「気になさらないように、これは商売ですから安く買いたたきますから損にはなりません」
とにっこりして話すのです。
その話し方に、3聖女もまた笑ってしまいました。
3聖女はこれでまたまたマーサ夫人に借りができてしまいました。
夫人の狙いの一つに知らず知らずはめ込まれていきます。
そのことで、メラノ家のバックアップがどれほど大きなものかも彼女達に知らしめたのです。
(3聖女の皆さんもだんだんと私を頼ってきましたね)と思うマーサ夫人の心を読む事は、3聖女にはまだまだ修行が足りておらず出来ておりません。まだまだマーサ夫人が一枚も二枚も上手なのです。
でもこれもマーサ夫人の奥底に、悪意というものが無いからそうなるのです。聖女達をなめてはいけません。その深いところに黒いものがあれば、一瞬のうちに読み取る能力をもっているのが聖女です。
さて、みんな準備ができましたのでマーサ夫人に連れられて4人で、王城のもっとも華やかでにぎわいのある商店と市場などが集まっている場所にむかって、メラノ邸を出発しました。
先頭を歩くのはマーサ夫人で、その後ろを3人の見習いメイドがついて行くという姿ですが、だんだんと賑わいの場所にちかづいてくると、3聖女はあちらをキョロキョロ、こちらをキョロキョロと、見るもの聞くものが華やかで珍しいので、もうお上りさん状態です。
マーサ夫人もその姿をみて、(聖女様とはいえまだまだ子どもさんですね)そう思いながら、歩いて進んで行きます。
だんだんと人通りも増えてきて、屋台などもでており、おいしそうな匂いも漂ってきました。




