表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナの旅  作者: mega
53/62

参列者達へ

昨日の夜に風がでていた関係もあり、葬儀の日は少し曇った空模様でした。

雨が降ると言うわけではありませんが、重々しい雲が空を覆っているのです。

アンナはその空を見上げて、(まだいるみたいね)と難しい顔です。

アンナは儀仗の役目を行う事となっていましたが、思いついた事があり、3聖女とトリーを呼び寄せ何事か話しています。

東のみんなも、王城にいるわけですから聖女として大聖女様に弔意を表す意味からも当然参加するわけです。

儀仗の役目の待機所には、あのベアトリス聖女、キラ聖女の姿もあったので、アンナは二人とも密談です。


またも、光輪を持つ7人の聖女が集まることになりました。

また何かおこるのでしょうか?


待機所にはクロノ司祭もいましたので、アンナは一つの布に包まれた、棒状のものをみせます。

そしてそのたたんでいた布をはずすと、一つの儀仗の棒があらわれました。

その棒は、先につける装飾が普通の物とかわっているのです。

「これは、儀仗用の棒みたいですね、ですが少し変わっていますね、これは何でしょうか?」

ふしぎそうにそれを見ているクロノ司祭に

「これをもってわたしはマルゴット様の前に立ちたいのです」と応えたのです。

「しかし、これはわたしではなんとも、でも聞いてみましょう。アンナ様の言われることですから」

そのアンナの要望をゲルト大司教に取り次いでもらえる事となりました。

アンナはこの杖を元の布につつみ、それを携えてクロノ司祭の後に続きます。

葬儀は献花の式になっておりますので、控え室には追悼の言葉を終えたゲルト大司教が戻っていました。そこにはあの夜に倒れた執事であったリサ聖女の姿もあるのです。


そこへやってきたのが、クロノ司祭とあのアンナ聖女なのです。(何か持っている)ゲルト大司教は、もう一昨日以来のことから、また何かと感じたのです。

部屋に入ると大司教の前に進み出てアンナはその棒の布を外し、右手でもちそれを立てたのです。


「これは、まさか」


その次に出た言葉は、リサ聖女からでした。

「これは、マルゴット様がもっておられた、杖です。以前ちょっとだけ見た記憶があります。マルゴット様の近くで保管されていたものです」

ゲルト大司教は、「なぜこれがここに、そしてアンナ聖女、なぜあなたがこれを持っているのですか?」驚いたような声で問うのです。

「これは、マルゴット様が私に託されたものです」

アンナはその問いに臆することも無く、しっかりとした声で答えました。

リサ聖女は、「大聖女様がお亡くなりになる前、アンナ様になにか荷物をお渡しになりました。その中にあった物ですね」

その質問に、「そうです」と頷きます。

これをみていたゲルト大司教は、その儀仗から目が離れません。初めて観るものだったのです。


「これは、これは…間違い無く、前の大司教からも伝え聞いた、大聖女様の杖……でしょう」

「伝え聞くところによると、大聖女様と常に共にあった杖で、ご結婚されて以後まったく見ることが無かったものと聞いています。あの王と大聖女様の伝承に現れるあの杖がここに………まさか今見ることができるとは」大司教の声には狼狽する様子が見えます。


「アンナ様はこれをもって棺の前に立ちたいと言っています」

「わたしでは、判断がつかないので、ここに来ました。しかしその杖がまさかマルゴット様のものとは

存じませんでした」そう話すのはクロノ司祭でその声は震えているのです。

かれもその伝承をよく知る立場だったからです。もはや神話ともいえる伝承が、それを知るものの

頭に駆け巡るのです。


ゲルト大司教も

「わたしの大聖女様への追悼の言葉がいくらあろうとも、その杖が表す意味に勝る物はありません。

ぜひ立ってもらいたい」 ゲルト大司教はアンナにそう答えるのです。

「ありがとうございます」アンナは大司教の言葉に一礼しました。


そして、つぎの言葉が発せられたのです。

「わたしがこれを持って立つとき、いまから言います6人の聖女と共に立つことをお許しください」

「6人と言いますと」

「あの夜に集まった6人です。わたしを含めて7人です」

「ではお願いいたします。お任せます」

もうゲルト大司教は、あの夜のことがわかっていますから、昨晩の事もありアンナがこの6人を指名したことは、重要な事であるとわかったからです。

それもよりによってあのメンバーとは、リサ聖女もクロノ司祭も声がでません。


ゲルト大司教はさらに、「あの杖で立たれることをご臨席の王に伝えておきます」

そういって、部屋から王の元へ急ぎ足で出て行きました。


 葬儀は、粛々と進んでおり、貴族達の献花が終わる頃、棺を守る聖女の交代が行なわれます。

長時間微動だにせず立ち続けなので、聖女の交代が行われるのです。

次の交代の聖女は、何故か4人ではなく7人の聖女なのです。この交代については、多くの人はその違いに気がついてはいませんでした。


しかしすぐに気がついたのは、参列を終えたメラノ侯爵とデント執事そして横に居るノルト伯爵です。

ノルト伯爵は娘アンナの姿をいち早く見つけ、3聖女とトリーも一緒に居るのですぐにわかったのです。東の聖女達はノルト伯爵にはすぐわかったのですが、あとの二人の聖女、少し年長であり、そしてその姿からにじみ出るものは、普通の聖女と一線をかくするものであることはすぐ気がつきました。

ノルト伯爵はとなりのメラノ侯爵とデント執事に問います。

「あのお二人の聖女様は、どのような方ですか」

そのメンバーにハッと気づいたメラノ侯爵は声がでません。(またも、あの……)


それを説明したのはデント執事です。「あのお二人はむかって左にたたれた方が、今回の競技会で一位となられた北部アルク大公のベアトリス聖女様、右手にたたれた方が、二位となられた南部メーセン公国のキラ聖女様です」


ベアトリス聖女は棺のむかって左手横の上方に立ち、その後方には、トリー聖女、その前方にはベル聖女を従えるかのように立っています。ベアトリス聖女の持つ儀仗は、いままでの物とは異なり先に青色の宝石がはめ込まれた特別なものを持っているのです。

そして棺のむかって右手横の上方にはキラ聖女、後方にはサンディ聖女、前方にはノル聖女これも、これもキラ聖女がサンディとノルを従えるかのように立っているのです。そしてキラ聖女の持つ儀仗も赤色の宝石をはめ込まれた特別のものを持っているのです。

これだけでも、この両名ベアトリス、キラが特別な立場にあることをうかがわせるものなのです。


しかし、この後、アンナが配置につきました。それは棺の上方、マルゴットの大切なお顔を守る位置に立ちそして、その左手には、あの伝説の大聖女の杖が棺の上にマルゴットを表すかのように掲げられたのです。

その姿は、アンナ、ベアトリス、キラで三角形となり、四遍を守る3聖女とトリーこれはあの夜の舞とおなじ配置なのです。


そしてノルト伯爵には、娘アンナが中央やや上にありますので、あたかも全ての聖女を引き連れている

姿に見えるのです。


その立った姿に貴族達の一部にも気がつくものも出始めています。すこしざわめきがではじめています。そして一般の参列がはじまろうとする中で、アンナはそのマルゴットの杖を、ゆっくりと上に掲げあげたのです。


それを合図とでもしたかのように、その聖堂の中に変化が現れ始めます。

特に待機している聖女達は、いちはやくその変化を感じ取りはじめるのです。

何か力が見えます。大聖堂が明るい。綺麗な、身体が軽くなったような

それと共に大聖堂の窓から日の光が棒状の矢の様に入り始めるのです。

外を覆っていた黒雲は左右にちぎれ始め、その雲の隙間より、光の帯が地上に差し込み始めました。

その雲はゆっくりと、とどまること無く、ちぎれ、薄くなり天からの光が意思を持った矢のように降り注ぎ始めました。

そしてその差し込んだ光の矢は、一直線に棺にむかって注がれ、あのマルゴットの杖の飾りを照らすのです。

その飾りは円形の鏡になっており、そのあたる光が聖堂の中のあちこちにキラキラとハッキリと見えるのです。

大聖堂の各所に鏡に写る日の光が当たっていくのです。

その鏡は動きながらとても神秘的に見えたと言うことです。

聖なる物の存在を、そこに参列した人達は感じたでしょう。

これは大聖女様が最後に皆に祝福を与えるために、こられたのではという者もいました。

それを見ていたクロノ司祭はこころの中に(聖なるか、聖なるものか、ああ聖なるかな)響き渡ったりその光を浴び続けたと言います。

7人の聖女達は、ただ穏やかな表情で儀仗を持ち、目を閉じて立っています。

それを見ている聖女の中には、棺を中心として聖女達のまわり、立ち上がる光の塔が見えたという

ものもいました。その時は全てが止まったと言う聖女もいました。その時間はどのくらいだったのでしょうか、長い時間では無かったようです。

しかし、この事は参列した多くの人に強い感銘を与えたと言われています。

夢から覚めたかのように、止まっていた参列が進みはじめます。

もうその時には、大聖堂の空は太陽の光で満ち、外の人達にも明るく暖かい光を与えています。

聖堂の中も、初めのような暗さは払拭され、太陽の光がさんさんと明るく差し込んでいるのです。


この葬儀は、大聖女への別れという悲しさ、さみしさの儀式から、未来への希望と次へつなぐ者たちへの祝福の場となったのです。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ