セイント達 サンディ、ベル、ノル
道のりは順調で、特に問題もなく進みます。
途中小さな村が二つありましたが、このあたりは盗賊などもおらず、平和なところです。
こちらはセイント(聖女)4人が乗る前の馬車のなかです。
同行する3人はセイントとはいえ、やはりお年頃でおしゃべりが好きで、馬車の中でずっと話し続けています。
アンナは、なぜ選定会に参加することになったかのいきさつを サンディ、ベル、ノルのセイント達に聞きました。
3人ともセイント東地区代表としては力量不足であるのは、よく知っており、代表として送り出された事を負担に感じているのです。
「出発はしたけど競技会って不安だわ」とサンディ
「やっぱりそれらしい成績は出したいとは思っているけど」とベル
「わたしは、王城を見たことがないので、見るのが楽しみで、競技会は別にして、
めずらしいものの買い物なんて出来ないかなと思ってる」最後はノルです。
どうもみんな、はじめから好成績は期待はしていないようです。
「王城ならおいしいモノもあるんじゃない?」
などともうはじめから物見遊山です。
「もしかしたら、競技会で見そめられて、結婚の申し込みなんてあるんじゃない?」
と婚活気分でもあるようです。
でもこれは事実で、現在の王妃は聖女の出身なのです。
実はセイントの役目の一つとして、領地の安寧と作物の豊穣を祈るという役目もあるので、ある意味大事にされています。
しかしそのことは逆に言えば、天災や飢饉など来ればその責任を問われかねないところがあります。
「でも、セイントに選ばれるのは名誉なことですから」
「みんなが羨ましがるような嫁ぎ先を見つけないとね」
「みんなで協力しますから」「がんばりましょうね」
と同行する三人のセイント達はお年頃の話題が延々と続いていきます。
(この子たち、かわいすぎる)アンナはそう思うのですが
「それにしても、競技会か」とサンディは重荷になっています。
「マリー姉さんに聞いた話では、かなり厳しいものになるみたいだけど」
とアンナは聞いている競技会の事を話しています。
「それは覚悟の上なのでしょう」
「まあ頑張りましょう」
とベルもノルも、カッコがつくぐらいにはなりたいと思っているのです。
「でも、若いんだし、もっと他にやりたいことがあるのでは?」
とアンナは聞いてみました。
「いえ、私は特にありません」
「教会にいて、いつもお祈りばかりしていますから、少しは外に出てみたいです」
「私も同感」
同行する彼女達の答えはパッとしません。
「それじゃあ、セイントとして、この旅は結構楽しいのですか」と聞いてみると
「はい みんな一緒で嬉しいです」
「それに、トリーさんもセイントになったし」「ほんとびっくり」
「アンナさんとトリーさんがいれば、怖いものはありません」
「アンナさんとトリーさんと旅ができるだけで幸せです」
「トリーさんは、年長だし、しっかりしているし、頭もいいし、なにより美人だし」
「それに、なにがあっても、きっとうまくやりますよ」
「うん 大丈夫 絶対」
トリーが年長の為か三人はトリーのことを信頼しきっているようです。
アンナはみんなの会話をニコニコして聞いています。
このようなとりとめの無い話が馬車の中で続いていきます。
そうこうしていたら、次の村が見えてきました。
到着するとアンナ達は歓待を受けました。
セイント達が乗った馬車の周りには村人が集まってきて
「聖女様」
「ご無事のお戻りをお待ちしております」
「道中お気をつけて」
「明日は村のもの一同お見送りさせていただきます」
「聖女様」
と歓迎の言葉が並びます。この地で宿泊となりました。
こういう中で三日目の旅はおわります。
この場所が東の地区の境界なのです。
翌日からの旅は、この旅の最大の難所を越える必要があります。深い森が王城との間に横たわっており、盗賊や魔物が出るかもしれない場所なのです。
この安全な最後の村で 準備を調える必要があります。