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アンナの旅  作者: mega
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父と娘

 王宮から東の聖女達を乗せた馬車が、メラノ邸に戻ってきました。

馬車が玄関に着くと、まず下りてきたのがクロノ司祭そして聖女服のトリーの順番で、続くアンナ達を

手を添えて馬車から降ろしていきます。聖女達は少し疲れた様子を見せています。むりもありません。


降り立った所にデント執事がやってきて、みんなを部屋の中に案内します。

そしてクロノ司祭に二言三言話し、続けてアンナに小声で

「東地区のノルト伯爵様が、ご到着になっておられ、お部屋でアンナ様のお帰りを待っておられます」


それを聞くと疲れたようなアンナの顔が、パッと輝き、服の裾をつかんでそして急に走りだしました。

その走り出した姿に従者であるトリー聖女も走り出します。

「アンナ様、そんなに走ると転んでしまいまーーーす」

デント執事は、3聖女達にもノルト伯爵が来ていることを告げると、急ぎ足でその後を追いました。


アンナが待合のドアをバタンと開けると、そこには父である伯爵が立っている姿を見つけたのです。

「お父様ーーー」

と言うなりパーーーと喜びの表情で、父であるノルト伯爵の胸に飛び込んだのです。

久しぶりの再会です。アンナを両手で抱き止めた父は、(アンナは何もかわっていない、元気でかわいいそのままじゃないか、あの話はなんかの間違いだろう)とそう思ったのです。

しかし、その想いはすぐに見事に裏切られる事になります。


続けて急ぎ足で部屋に入ってきたのは、正式な聖女服をまとったすこし背の高い聖女が、伯爵の前で

頭を下げ一礼したのです。そのたたずまいはどこかの名のありそうなご令嬢かと伯爵は一瞬思ったのですが、顔を上げるとそれはまごうことなく、(トリーじゃないか)そしてその口から出た言葉は、「あーートリー!」

アンナを抱き止めながら、トリーを見てもうその次の言葉がでません。

もう別人としか見えないのです。そしてそのことでデント執事が言ったことが事実とわかったのです。


続けて3聖女とクロノ司祭が部屋に入ってきました。それらの顔は、見知った東の地区の面々なのです。しかし3聖女の服装は、聖女服とは言え、出発したときの衣装ではなく、この王宮で用意された上級の装束を身につけていることに伯爵は気がつきます。


トリーほどの激変ではありませんが、聖女達はこのいろいろな困難を乗り越えてきたためでしょうか、しっかりとしたすこし大人びた感じが出てきているのです。


3聖女の伯爵様との簡単な挨拶が終わったところで、デント執事より

「まずは大切な会合から帰られたのでお疲れだと思います。自室で着替えて少し休まれてから、またおよびしたいと思います」

その言葉を聞いて抱きついているアンナは、名残惜しそうな顔をしながら、父ノルト伯爵から離れました。聖女達みんなは自室でまず着替えることとなり担当のメイド達に引き連れられて、自室に引き取りました。残されたのは、メラノ侯爵を初めとした男達でした。


続けてデント執事から

「ノルト伯爵様には、別室を用意させるように手配いたしますので、しばらくお待ちください」

と客人への手配を使用人に指示をだしました。


メラノ侯爵も、クロノ司祭の落ち着いている様子から、「この部屋では詳しい話もなんだろうから執務室で簡単に状況を話してもらおうか」

という事で、別室にメラノ侯爵、デント執事、クロノ司祭、そしてアンナの父のノルト伯爵が別室に移動しました。これから男4人の首脳会談です。


執務室にメラノ侯爵を筆頭に4人が着席すると、開口一番メラノ侯爵がクロノ司祭に「王宮での聖女達の会談は、どうだったのか?」と一番の心配の件を問うのです。


それに対してクロノ司祭は、「実はこの聖女様達と王様の会合には、私は参加は出来ませんでした」

「これはベアトリス聖女、キラ聖女のお付きも同様で、本人以外は全員シャットアウトされました」

「この会合には誰が集まったのか?」というメラノ侯爵からの問いには、

「ベアトリス聖女、キラ聖女、アンナ聖女そしてトリーさんと3聖女の、舞を行なった7人の聖女だけで

そして、王様ご夫妻とゲルト大司教、そしてマルゴット大聖女様の執事のリサ聖女のあの場に立ち会った人達だけでした」とクロノ司祭は答え、さらに

「そしてその会合が終わった後、聖女達は帰り道は何も話してはくれませんでした」

「おそらく王より箝口令が出ているように感じます」

そのように報告するのです。


「そうか、ではこの後詳しい話を聞いておきたいが、当分は話してはもらえないだろう。また、王家の案件だ、こちらからあれこれ言うのは、はばかられるという事か」

メラノ侯爵は、腕組みをして考えています。


「そうだろうと思います。ただ、帰りの聖女達から感じることは、なにか詰問されたという事では

なかったように見えました。聖女の皆さんは普通にみえましたから」

そのクロノの話を聞いて、メラノ侯爵は少し安心したようです。

「マズイ話では無かったみたいだな?この後聖女達から、話せる所は教えてもらいたいから、たしかにただ踊りを披露しただけだからな」

メラノ侯爵の心配は尽きないようです。


それを横で聞いていたノルト伯爵は、「アンナが色々とメラノ様にご心配をおかけしている様です」

そう言う声がでましたが、メラノ侯爵は「いやまさかこれほどの事になるとは思いませんでした。しかしデントとも話しておりますが、当家にとってもこれほどのつながりが出来たことは、望外の幸運と

言っても良い事態なのです。すごい聖女様達なのですよ」


「しかし、先ほどのアンナ様(もう様付けです)のあの姿は初めて見ることが出来ましたよ」

デント執事からも、「わたしも初めて見るお姿です。安心したというか、ホッとしました」

ノルト伯爵は

「アレがいつものアンナですから、お会いしたときに話していただいた件は、間違いではと思った

くらいです」

「いままで競技会の付き添いとして一緒におりましたが、アンナ様には驚かされる事ばかりでした」

とデント執事は答えたのです。

そのような話しが続いていますと、「ノルト様のお部屋の用意ができました」と言う声が伝えられました。

それではという事で、メラノ侯爵は、この続きは食事の後もう一度集まろうという事で、終わりとなり

デント執事は、ノルト伯爵を部屋に案内しました。


 さて、こちらは部屋に戻ったアンナとトリーです。トリーは聖女となりましたが、アンナの従者であるという立場ですから、二人用の少し大きな部屋を与えられています。

「おとうさんが来てるってびっくり、でも会えて嬉しい!!!」

「でもアンナ様が急に走り出されるので、ハラハラしました。でも伯爵様も驚きながらも、ホントに嬉しそうな顔をされていて」

トリーはアンナの着替えを手伝いながら、すこし喜んだ口調でそう返事をします。

「でも、トリー」

「ハイなんでしょうか」

「お父様が、トリーを初めて観たときの顔ったら、ホント鳩が豆鉄砲くらったよう様な顔だったのが

おかしかった」

「そうでしたですね。驚かれていました」とクスリと笑って答えます。

「東の家を出たときから、一番かわったのがトリーだから」

「それにトリーが着ていたのが、正式なそれも大聖堂の聖女服だから、誰かわかんなかったみたい」

「そんなにかわりましたか?ですがそうですよね」

と二人の少し笑いを交えたおしゃべりが部屋の中で続いていました。


でもこの事が後に大変な事態に繋がって来ることが、まだわからないのです。


食事の後、くつろいだところでメラノ侯爵から、5人の聖女を交えて話しが聞きたいという事で

大きな執務室に集まったのです。



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