マルゴット
今日はマルゴット皇太后の離宮を訪問する日です。
天気も良く、穏やかな日差しが、会談が穏やかに終わるかのように思われました。
アンナは3番目にマルゴット様に面会することになります。
1番目ベアトリス聖女、2番目キラ聖女の後になりますので、少し遅くメラノ邸を出発しました。
メラノ家の特別な馬車にのるのは、アンナ聖女、お付きのトリー見習い聖女、デント執事のこじんまりとした一行となりました。
マルゴット様の離宮は王城から少し離れた所にあります。
そのゆっくりと進んで行く馬車の中で
アンナは、デント執事に
「デント様はマルゴット様をご覧になった事はありますか?」
「直接にはお目にかかれる方ではありませんが、大聖堂でしたか若い頃です。遠くからそのお姿を見た記憶があります。その時も相当なお年だったとおもいますが、そのすらりと立たれた姿と若々しいお顔を覚えています。その後、その本当のお年を聞いて驚いたことを覚えております」
「しかしその後はほとんどお姿を見かけることは、無くなったと聞いています」
「その時ですら、夫である王はすでに亡くなられており、そのお子様に当たる王も、孫に当たられるその次の王も次々と亡くなられています」
この世界の寿命は、50歳を超える程度だったのです。
王城の庭園をぬけて、遠くにこぢんまりとした離宮がみえてきました。
小さな建物ですが、そのあつらえには静寂さと、豪華ではありませんが それが逆に自然の持つ美しさを感じさせるたたずまいです。
庭園というものは、その主人を表す物なのです。
トリーはその話を聞きながら馬車の仲から外の庭園をみて
(なにか落ち着くような風景だわ、大公様や宰相様の時と違って、マルゴット様というのはどういう方なんだろう)と思っています。
(でもずっとお一人で……)
その様に思っていると、離宮の玄関に到着しました。
そこには、執事の方でしょうか、1名の女性が待っていました。
その前で馬車が止まり、まずデント執事から降りていきます。
そして見習い聖女の服装のトリーを下ろし、最後が今回招待されたアンナ聖女が、デント執事の介添えで聖女の服装でゆっくりとおりてゆきます。
この服装も競技会の趣旨からいっても、そして大聖女様と言われる方との面会ですので
それにふさわしい衣装と言えます。
この執事の女性から
「アンナ聖女様、よくお越しくださいました。マルゴット様も今回の面会を喜んでおられます」
アンナは軽く会釈します。
「お出迎えありがとうございます」と付き添いのデント執事が礼を述べると
出迎えの女性は、3人を導きながら、離宮の中の待合の部屋に通しました。
そこには誰もおりませんでした。
「ベアトリス様、キラ様は順次マルゴット様にお会いになり、もう帰られておられます」
と女性執事より説明がありました。
「では、マルゴット様にアンナ様の到着をお伝えしますので、しばらくお待ちください」
「それから、マルゴット様にお会いできるのは、お一人でと聞いております」
「ベアトリス様、キラ様も一人で面会されておりますので その様にご用意ください」
そう話して、部屋を出て行きました。
しばらくして、先ほどの女性の執事がもどってきました。
「お会いになれるとの事ですので、アンナ様お部屋までご案内いたします。お一人でおこしください」
アンナは執事の後を導かれるように一人でその後についていきます。
二階に上がる階段を上がりながら、部屋に着きました。
その部屋のドアが開けられ、アンナは中に通されます。
「アンナ聖女がおこしになりました」
そう告げると、アンナ一人をその部屋に残して執事は一礼して部屋より退出し、アンナの背後で
ドアが静かに閉じられました。
そこには窓際に天蓋のついたベッドが置かれており、
上半身を少し起こして一人の女性が横たわっていました。
窓は開けられておりその顔は外の庭を見ていました。
アンナはベッドにゆっくりと近づき、ベッドのそばに立ちました。
寝ていた女性はアンナの方を向きなおります。
そしてアンナはすこしかがみながら、にこやかにそして親しみを込めた声で
「こんにちは、マール」と話すのです。
その言葉にその女性の顔が変わりました。
少し前にさかのぼります。
ベアトリス聖女が同じ様にこの女性、マルゴット大聖女に面会したときは
緊張した表情で一礼して
「マルゴット様、今回の競技会で一位になりましたベアトリスと申します。
よろしくお願いいたします」
と挨拶しましたキラ聖女の時も同じ様な挨拶をしていたのです。
ベアトリスとキラの二人に対しては、「今後も頑張ってくださいね」と激励して、短時間で面会は終わりました。
この二人がその部屋を退出すると、マルゴット老大聖女は遠くを見るように外の庭を眺めます。
その表情は寂しそうな、落胆するような表情だったのです。
そしてこのアンナの挨拶は何なのでしょうか???
その言葉を聞いて、マルゴット大聖女はアンナの顔をじっとみるのです。穴が開くかのように




