アルク大公邸
まずはアルク大公への招待を受けるという方針となりました。
その時のメンバーは
アンナと3聖女(ベル、サンティ、ノル)とトリー見習い聖女、護衛騎士として弓のケルン
引き連れるのは、メラノ侯爵とデント執事、付き添いのクロノ司祭です。
メラノ侯爵は2台の馬車を仕立てる事となりました。アルク大公邸は王城の中にありますが
その規模は王城に次ぐ規模の広さをもっています。そしてそれに次ぐのがメーセン宰相邸です。
メラノ侯爵邸も有力な大邸宅なのですが、やはり両者とは比べものになりません。
さて翌日にはアルク大公邸を訪問するとの返事をおくりましたので、いまから聖女たちは
メラノ邸のメイド達が腕まくりをしてひかえています。
「聖女様、いまからよりを掛けて頭の上から、つまさきまで磨かせていただきます」
ということで お風呂からはじまるコースに押し込まれます。
残念ですが、トリーも同じ目に遭わされます。
「わたしは付き添いですから」などといっていましたが
アンナから
「あきらめなさい」と冷たい一言で磨かれる一人となりました。
「ぎゃー」とか「うっ」とか「もういいからーー」などと、 サンディは
「あぁ~気持ちいい」などと叫んでいます。
サンディはどうもM体質のようです。
ケルンも、髪くらい切れ、ひげも剃れなどと言われています。
服装についても護衛騎士らしい服装を用意してくれます。
孫にも衣装でしょうか、その姿は見違えるようです。
「だれだ鏡に映る人物は?」などと言っています。
聖女達の服装については、聖女達の採寸はおこなわれているのですが、もうドレスなどは間に合わないので儀典などで使われる第一級礼装である聖女服が教会にあります。これを用意することとなりました。トリーも同様です。クロノ司祭も特別な物が用意されます。
この礼装は、ドレスなどの豪華さとはことなりますが、清浄をあらわすリンとした神聖さを表現しており、聖女達の今の地位をあらわすにふさわしい衣装といえます。それは別の意味の豪華さなのです。
その衣装にあわせての髪型や化粧など、さすがにメラノ家が用意したメイド達です。
聖女達を磨き上げていきます。
さすがにデント執事、予想していたこととはいえ、用意にひとかけらのぬかりもありません。
メラノ家の支援がなければ、とてもとても出来ないことばかりなのです。
品格や格式というものは、一朝一夕で用意出来ない物です。
「写っている人はだれ?これはすごいわね」
「ほんとうにピカピカになったみたい」
「すごすぎる、別人みたい」
聖女達は鏡を見てうっとりしています。
アンナも、ここまでするのかと思いながらも、その出来栄えには感心してしまいます。
さて出発の時間です。
「聖女様方、お迎えの馬車が参りますので、しばらくお待ちください」
とデント執事が言います。
メラノ侯爵邸の門の前には、メラノ侯爵差し回しのメラノ家紋章の入った豪華な二頭立ての馬車がとまっています。
いままでの馬車とは格が違い、それだけに今回の招待におけるメラノ侯爵の力の入れぐあいがわかる馬車です。
メラノ侯爵が、
「ではお乗り下さい」と乗車を促します。
「はい、ありがとうございます」とアンナ、続いて3人の聖女が答え、メイド達に見送られメラノ家より用意された馬車に乗り込んでいきます。
先頭の馬車には、メラノ侯爵、デント執事、クロノ司祭が乗り込み、御者席には御者の横に護衛係としてケルンが座っています。
後ろの馬車には、アンナ、サンディ、ベル、ノルの三聖女そして見習い聖女の服装のトリーの5人が座っています。
「では出発します」
メラノ侯爵が声をかけ、ゆっくりとメラノ侯爵邸の門を出て行きます。
メラノ侯爵邸の前は、広く道幅もあるため、馬車の行列がならびます。
メラノ侯爵邸前を出発すると、すぐに右に曲がって王城へと向かいます。
王城のそばを通り抜けると、アルク大公の館が、遠くからでもわかるほどの規模で
見えてきました。
聖女達は馬車の窓から見える景色に、驚きの声をあげています。
「すごい大きさの邸宅ですわ」
「ここに招待されたのね」
先頭のメラノ侯爵の馬車は、誇らしげにさらに進んでいきます。
そして大公の館の正門前に馬車は到着しました。
執事のデントは、門番に「メラノ侯爵がご招待により伺いました」と名のりますと
すかさず一人の男性が走ってきます。
「ようこそお越しくださいました。メラノ侯爵様」
「このまま奥までお越しください。お越しになることは聞いております」
そう言うと門をあけ 馬車が邸内に入っていきます。
門から邸宅までも距離があり、その庭の中を馬車が進んでいます。
「門をはいっても邸宅に着かないなんて」
「なんて広さなんでしょうか」
「きれいな庭だこと」
その道に植えられている木々も手入れが行き届いており、それだけで訪問者に畏怖をおこさせるほどの大邸宅なのです。(すがにアルク大公だな、邸宅までもが威圧してくる)
メラノ侯爵は車中でそう思います。
ようやく大公邸の玄関に到着すると、当然のようにアルク大公邸の執事でしょうか、数人を従えて、入り口で待っていました。
「メラノ侯爵様、よくぞおいでくださいました」
「こちらへどうぞ、アルク大公様がお待ちです」執事が案内を始めます。
一行は、その執事について歩いていきますがその途中において
メラノ侯爵は(ここが大公のお屋敷か、確かにすごい建物だな。王城に匹敵する規模ではないか)と思っています。
3聖女達も、メラノ邸での豪華さもさることながら、さらに威圧する邸宅に息をのむ状況ではありますが、流石に前日のメラノ家でのレクチャーが効いています。
礼儀作法の厳しい先生が聖女達にタクトを持ちながらレクチャーします。
「これから聖女様達は大変な立場になります」
「それによっての振る舞いが重要なのです」
「まず重要なのは姿勢です。常に遠方に視線を送ること、そのためには顔をあげ、見下ろすかのような視線を作ること、胸を反らせる、反らせすぎてもいけません」などなど
「途中で無駄なおしゃべりはしない、むこうへついてもキョロキョロしない、ドタバタ歩かない、爪先から足を降ろすように歩く」
など付け焼き刃ですが、みっちりと絞られています。
このレクチャーについても トリー「わたしもですかーーー!」など言っていましたが
残念ながらアンナの「ダメよ」との冷たい一言で逃げるのは却下です。
「はい……わかりました」
トリーもあきらめて、厳しい先生のマナー教育を受けるのです。
きびしい先生の叱責が続きます。
「胸を出すのではありません。肩で胸をつくるのです」
「視線が低い!といって天井を見るのでもありません」
などなど
「はぁ~」
「もうだめですわ 足がつりそうです」
「頭がクラクラしてきました」
「私もですわ」
などと言いながらも、聖女達は何とかこなしていきます。
聖女達にドレスなどを用意しなかったのも、時間が無いという事もありますが、慣れていないドレスなどで出席すれば、裾のさばきなど一朝一夕では無理です。
絶対だれかが裾を踏んで、すってんころりんする光景が目に見えていたからでもあります。
そのため、儀典の礼装とはいえ、なれた動きやすい聖女服を用意したわけなのです。
調度品や、絵画などが並ぶ廊下を進みながら、執事は、一行を連れ応接の部屋に導きました。




